魁!世直し遊軍!5じょう隊!  2





さきがけ!世直し遊軍!5じょう隊!


世の中の!

蔓延はびこる悪を打ち砕く!

正義の遊軍!5じょう隊!

イマワエル!

オトワスタン!

ベン・ケイン!

ムサシール!

ウシワカーヌ!

悪の総統

血まみれゴシック卿を打ち倒す!

5じょう隊!出動!!




『ベン!あなたが行くなら私も行く!』

『何を言うんだ、ウシワカーヌ、

ゴシック卿の城に行ったらもう二度と戻れない。

死にに行くようなものだ。

そんな所に君を連れて行くなんて……。

君には生きて欲しい。』

『……、

バカ、ベンのバカ。

あなたがいなくなったら私は生きている意味がないのよ!

私を一人にしないで!

置いて行かないで!』

『駄目だ、イマワエル、オトワスタン、

ウシワカーヌを、君達の妹を捕まえていてくれ。』

『ベン、君が行く必要があるのか、

ムサシールだけ城に飛ばして爆発させれば。』

『イマワエル、ムサシールはロボットだ。

だが起爆させる人が必要なんだ。

俺が行く。

それにムサシールは俺の子どもの時からの相棒だ。』

『だからと言って妹を、ウシワカーヌを一人にして良いのか!』

『すまん、オトワスタン、俺は今でも迷っている。

だが誰かがゴシック卿を止めなければならないんだ。』




「この時よ、ベン・ケインがウシワカーヌをぎゅっと抱くのよ。

最期の抱擁なのよ。」


二人でテレビを見ながら里奈が千角に言った。

彼女は既にティッシュを手にして滂沱の涙だ。


画面ではベン・ケインがロケットに乗り込み、

宇宙空間に浮いた城に向かって行った。

その城の内部と血まみれゴシック卿が映る。


「あっ!!」


千角が叫んだ。


「山田ブラッディ正一。」


千角が呟いた。

血まみれゴシック卿の姿は

この前見た山田ブラッディ正一とそっくりだったからだ。


「この血まみれゴシック卿は人の血を吸うのよ。

吸血鬼なの。」


衣装も何もかもあの正一だった。

彼はこのゴシック卿を真似ていたのかもしれないと千角は思った。


「ねえ、里奈ちゃん、これ最初から見せてくれる?

一角も呼んで良い?」


里奈の顔がパッと明るくなる。


「もしかして気に入ったの?」

「いや、まあ、そんなとこかな。一角を呼んで来るよ。」


千角が部屋を出た。

里奈は嬉しそうにブルーレイのボックスを取り出した。

何年か前に復刻版として販売されたものだ。

玖磨くまもこれを持っており、二人はそれぞれ二つ持っていた。


「一つは保存用だ。」


玖磨はそう言った。里奈も同じだった。

オタクとはそう言うものだ。

当然ストラップも保存用があった。




一角と千角は5じょう隊のブルーレイを里奈から借りた。

結論としては、


「凡作だな。」


一角が一言で表現した。


「だな。里奈ちゃんの前では絶対に言えないけどな。

最終回を見てすげえ泣いてた。」

「だけどこれがあの玖磨さんと里奈ちゃんを結び付けたんだな。

ウシワカーヌとベン・ケインか。」

「それにあのブラッディ正一はゴシック卿だ。」


千角が苦笑いする。


「一体どこからあの中二病っぽい名前になったかと思ったら、

これだったんだな。あいつも絶対にこれ見てるな。」

「服もそっくりだったから、正一君もコスプレが好きなんじゃないかな?

自分で服を作ると八名爺が言っていたから。」

「服を作れるのは結構すごいと思うよ。

俺もこれ縫ったけどさ、簡単な作りだけど確かに面倒くさいもん。

それだけは正ちゃんは偉いと思うよ。」


千角は自分が作った服を着ていた。

ド派手な目がちかちかするような色使いのものだ。

ただの貫頭衣で被るだけの簡単なものだが、

腰の辺りにベルトをしてアクセントにしている。

相当個性的だが、彼には良く似合っていた。


「布を見てどうなるか心配だったけど、

千角は派手なものがやっぱり似合うな。」

「ふふん、そう?」


千角が嬉しそうに笑った。


「自分で服が作れるのは面白いな。」

「そのうち僕の服も作ってくれよ。

おばあちゃんも欲しがるんじゃないかな。」

「そうだな。そうなったらやっぱりミシンが欲しいな。

里奈ちゃんにどんなミシンが良いか相談しよう。

あとアイロンだな。糸と針もいるか。」

「おいおい、際限がないぞ。」

「一角だってコーヒーの道具が増えているだろ?」

「まあそうだけど。あれもなかなか奥が深いよ。」

「なんか現世には面白いものが沢山あるな。」

「ああ、鬼界きかいとは違うから興味深いよ。」


千角が余り布を畳んだり折ったりしながら言った。


「そろそろ正ちゃんにも引導を渡す時期かな。

俺、正ちゃんに一服盛られたし。結構美味しかったけど。」

「いやあ、あれは駄目だよ、

金棒を持って暴れられるとさすがに怖いよ。」


千角は布を頭に巻いた。


「バンダナみたいにして巻くとカッコ良くねぇ?」

「僕がどう言ってもするんだろ?」

「ああ、俺は俺のやりたいようにするよ。」


千角は強く布を巻いた。


「明日ぐらい豆ちゃんを誘ってえらんてぃすに行こうよ。

サイコロを持って来いってラインするよ。

休みだと良いけどな。」


一角がにやりと笑う。


「明日は豆太郎君はお休みだよ。」

「えっ、なんで知ってるの?」

「この前おばあちゃんが事務所に虫を飛ばした時の映像で、

ホワイトボードに書いてあった。」

「さすが一角、よく見てる。」








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