豆太郎の休日
「豆太郎、ちょっといいか。」
金剛が杖をついて事務所に入って来た。
今日は休日だ。
だが豆太郎は子どもの時からここに住んでいる。
休みなのにする事も無いのだろう、
豆太郎は書類を広げて整理をしていた。
「なんだ、休日に仕事か。」
「予定も無いし。」
「若いんだから遊びに行け。」
金剛が彼のそばの椅子に座った
少し前まで金剛は車椅子生活だったが、
今では杖をつけば歩けるようになった。
「ところで桃介とピーチから聞いたんだが、
事務所に
先日のハエのようなものだ。
「あ、ああ、危険じゃない感じだったから言わなかったけど。」
「お前がそう言うなら大丈夫だと思うが、
この前のサイコロの話はどうなった。」
「それが大して進展がなくてさ、
それでも雄サイコロはこの辺りにあるかもと言う目星を
一角と千角がつけたっぽい。」
豆太郎はスマホを出して写真を見せた。
「昔遊郭だった近くにある家なんだけど、
この辺りが怪しいんじゃないかって。
俺がサイコロからイメージを感じて
あいつらに絵を描いて送ったらこの家の写真を見せられた。」
金剛が写真を見る。
「かなり古い家だな、遊郭と言ったらここから北に行ったところだな。」
「今はもうないよね。」
「戦後に禁止になったからな。」
金剛はスマホを豆太郎に返した。
「ところで里奈さん、どんな感じだ。」
「里奈さんは仕事の出来る人だね。助かってるよ。」
「そうか、それは良かった。」
そして金剛がちろりと彼を見た。
「その、なんだ、里奈さんちょっと雰囲気が変わったな。」
「ああ、彼氏が出来たみたいだよ。」
「お前か?」
豆太郎が驚いた顔をする。
「違うよ、
「玖磨?!事務用品を持って来る体の大きな男か。」
「そうだよ。」
「里奈さんの色の星の雰囲気が変わったから何かあったなと思ったが、
お前じゃなく玖磨さんか。」
金剛は残念そうにため息をついた。
「なんだよ、じいちゃん。」
「いや、お前にも良い人が出来たかと少し期待したんだがな。」
「そんな訳ないだろ、それにじいちゃんも分かると思うけど、
あの二人何かあるよ。」
金剛は腕組みをして少しばかり考え込んだ。
「そう言われたらそんな感じがするな。」
「それに俺、雌サイコロを持っているだろ、
なのに全然反応しなくなっちゃってさ。」
「雌サイコロを持っていると人は色恋沙汰に狂うとか言っていたな。」
「最初の頃は大変だったぜ。
里奈さんを見るとドキドキしちゃってさ……。」
そこまで言って豆太郎は金剛が
じっと自分を見ているのに気が付き正気に戻った。
「じ、じいちゃん、俺、その……。」
すると金剛が笑い出し豆太郎の背中を叩いた。
「構わん構わん、お前もちゃんと女の子を
好きになる気持ちがあるのが分かって俺は嬉しいよ。
お前は今まで全くそんな話が無かったからな。
真面目なのも良いが少しは遊べ。」
そう言うと金剛は部屋を出て行った。
「遊べって言ったって……。」
思い出す友達が一角と千角だった。
あの二人と出かけたら必ずからかわれるのがおちだろう。
豆太郎は頭を振ると書類の整理に戻った。
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