一天地六 3
「それでなんでパフェを食べるんだよ。」
一角と千角がメニューを見て選んでいる。
「おや、豆太郎君はパフェは嫌いなのか。」
「いや、キライじゃないけど。」
「じゃあアメリカンパフェ、3つね。おねえさんヨロシク。
豆ちゃん、こっちが誘ったから今日は奢るよ。」
豆太郎は大きなため息をつき二人を見た。
「もう二度と顔を出すなと言っただろ?何で来たんだよ。」
二人は顔を合わせる。
「まあ用事があったから豆太郎君の顔を見たくてね。」
「それにここでフェアがやっているから、
どうせなら豆ちゃんと食べたくてさ。」
二人はニヤニヤしながら言った。
アメリカンパフェが運ばれてくる。
アメリカンチェリーが乗った結構なボリュームのスイーツだ。
「美味そうだなあ。」
二人は美味しそうに食べだした。
豆太郎もパフェをつつく。
「ところでお前らどうして来たんだ。宝探しか。」
「豆ちゃん、大正解。」
千角が手を叩き、一角が小さな箱を出した。
「豆太郎君、これだよこれ。」
一角が箱を開けると中には二つくぼみがあった。
「なんだ空じゃないか。」
「よく見てよ、一つにはサイコロがあるんだよ。」
豆太郎は目を凝らした。
するとその薄い姿が見え、豆太郎がそれをつまんだ。
「なんだ、ほとんど透明じゃないか。」
「ああ、悲しくて寂しくて涙になったサイコロだって。」
「へぇー。」
豆太郎はそれを光にかざした。
「小さくて可愛いサイコロだな。綺麗だ。」
するとサイコロに牛乳を水に一滴落としたように
ふわりと白が浮いた。
それを驚いたように二人が見た。
「ま、豆ちゃん、サイコロ……。」
千角がぽかんと口を開ける。
その横で一角が笑い出した。
「な、なんだよ、でもこのサイコロ色が変わるのか?
温度か?」
「いやいや、違うんだよ、
豆太郎君はサイコロの好みの男みたいだよ。」
「好みって一体何だ。」
「俺の時は透明になったくせに、くそっ。」
千角が悔しそうに言う。
豆太郎には事情が全く分からなかった。
「このサイコロは雌で
サイコロの雄はいるんだけど今は離れ離れなんだ。
それで寂しくてこの雌のサイコロは涙になってる。
だから透明なんだ。」
豆太郎は手のひらのサイコロを見た。
薄ぼんやりと白っぽくなっている。
「サイコロに
「あるんだよ。僕達も知らなかったけど。
だからその雄を探しに現世に来たんだ。こちらにいるらしいから。
一緒にしてやらないと可哀想だろう?」
豆太郎は二人をぎろりと見た。
「あのなあ、俺は信用せんぞ。
お前らがこのサイコロが可哀想だからとか
そんな理由で宝探しをする訳がないだろ。」
一角と千角は苦笑いする。
「やっぱり分かる?」
「当たり前だろ。お前らが奢ると言う時は
必ず何かあるからな。」
豆太郎はサイコロを戻しパフェをかき込んだ。
そして財布からお金を出した。
「俺は帰る。」
千角がサイコロを見た。
「豆ちゃん、サイコロの色が戻っちゃったよぉ。
寂しいって泣いてるよぉ……。」
豆太郎がサイコロを見るとその色はまたほとんど透明になっていた。
「えー、手の温度で変わるんだろ。」
「豆太郎君、ちゃんと事情を話すよ。」
一角が真剣な顔をして豆太郎を見た。
豆太郎がその気配に居住まいを正した。
「このサイコロは雄雌が揃ってそれを振り、
数字が揃うと願い事が叶うらしいんだ。」
「数字が揃うってそんなに難しくないだろう。」
「ああ、でも振れるのはその人の一生のうちに一度だけだ。
そしてサイコロ次第でその願いは叶わない事もある。」
一角がサイコロをつまんだ。
「僕は願いたい事がある。」
一角の顔は真剣だ。
「お前が叶えたい事って何だよ。」
「秘密だ。」
豆太郎は一角を見た。
「そんな事だけでは協力は出来ん。
第一俺は鬼とは慣れ合わん。願い事だと、ふざけんな。」
「いやいや、豆ちゃん、もう少し聞いてよ。」
千角がスプーンで豆太郎を差した。
「その雄サイコロな、一人にしておくと狂暴になるんだと。
それを持った人間はやたらと乱暴になって、
歯止めが効かなくなるんだってよ。」
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