第7話 放課後デート 【2】
今は、明人との放課後デート中。
漫画はあまり興味ないけど、そんな時間さえ明人と一緒なら楽しくて幸せな時間なのに……
私は明人に話しかけた女の人を見る。
どうして伊那さんがここにいるの!?
せっかくの二人きりの時間だったのに……
そんな私の気持ちをよそに、明人は伊那さんと話し始めた。
「どうして芽衣がここに?」
「新作の漫画が買いたくて…!明人くんこそどうしてここに?」
「俺は……」
ここだっ!と思い、私はおもいっきり勢いよく明人に体を当てて腕を組む。
そして、私の行動に戸惑っている明人の代わりに言う。
「私が放課後デートに誘ったの!」
そう言って猫の威嚇の「シャー!」みたいな感じで伊那さんを睨んで威嚇する。
あまり面識のない人にこれは失礼だと思うけど、でも恋のライバルなら話は別だよね。ちゃんと私の明人ってアピールしておかないと、明人に近づいてきちゃう。
クラスの女子みたいに……
「そ、そうなんですね……デート………」
私の威嚇のせいかそう言って伊那さんは俯いて分かりやすく落ち込んでしまった。
心が痛むけど、こ、恋のライバルだから……
でも、ちょっとやりすぎたかな……
あと、私のせいで空気が重い気もする。
私が謝ろうとすると、明人が先に行動した。
「芽衣はなにか良い漫画見つけた?」
明人の言葉を聞いて、伊那さんは慌てた様子で明人のほうを見た。
「えっと、奥の棚に明人くんが好きそうな漫画ならありましたよ!」
「ほんと!?どこにあるの?」
「こっちです…!」
二人で話し始めちゃった……
と、思ったら明人は私からするっと離れて歩き出して伊那さんの後をついて行ってしまった。
デート中なんだけどなぁ……
ふと私はさっき咄嗟に言ってしまった失言を思い出した。
そういえば、私明人の前で放課後デートって言っちゃってた!?
思い返すと確かにそう言っちゃってたような……
恥ずかしくて顔が熱くなる。
明人は、デートって認識してるのかな……?
最近明人に学校で積極的に絡むようにしたおかげか、クラスの女子はあまり話かけてこなくなった。でも、伊那さんだけは変わらず明人と話している。
もちろん、明人のことを友達だと思って話してるならいいけど……
絶対、伊那さんは明人君のこと好きだと思うなぁ……
どうしようかと悩んでいると、私は一つの考えに行きついた。
とりあえず、今すべきは伊那さんと明人を二人にさせないことだよね!
早く探さないと……
そう結論付けて私は急いで明人と伊那さんを探す。
私が考え事をしている間に二人は会計を済ませるためにレジに並んでいた。
二人に合流しようと近づいたとき、ふと二人の会話が聞こえた。
「そういえば、明人くんがオススメしてくれたアニメ面白かったです!」
「あのアニメ見てくれたの!?あれ面白いよね!ヲタク友達が芽衣しかいないからあのアニメの話誰ともできなかったんだよね」
「分かります!私も話したいアニメはたくさんあるのに話す人がいなくて……」
「あははっ、ヲタクあるあるだよね」
「そうですよね!」
えっ……明人が、笑って話してる……
あんな笑顔、私の前でしてくれてたかな……
あんな心からの笑顔、久しぶりに見るなぁ。
あの明人の笑った表情を見ると嫌でも分からされる。
最近の明人の笑顔は無理やり作った笑顔なんだと。
自分のことばかり考えていたせいで気付かなかったなぁ……
私といるの、嫌なのかな。
そんなことを考えてしまう。
今日のデート中だって、一度もあの笑顔を見せてくれなかった。
楽しいのは、私だけ……
そう考えると二人の間に入っていけなくて、立ち止まってしまう。
伊那さんと話してる明人の笑顔が見たくなくて、目を背ける。
私のわがままだけど。
伊那さんじゃなくて、私に………
私だけに、その笑顔を見せてほしかったなぁ。
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