第6話 放課後デート 【1】
自分磨きをしてからというもの、莉子の様子がおかしくなった。
最近は暇さえあれば俺の席に来て話しかけてくるので、クラスの女子に話しかけてもらえなくなった。
あと、最近距離が近すぎるような気もする。
こんな近くでいつも話してたかな?前はもっと距離があったような……
というか、こんな所を莉子の好きな人に見られてもよいのだろうか?
まぁ、俺はそいつをけん制できるからむしろ最高なんだけど……
なんて考えている間も、実は俺の隣には莉子がいる。
「ねぇ、明人?さっきから話聞いてる?」
聞いてなかったとは言えなくて、一生懸命脳みそをフル回転させるが莉子の話が思い出せない。
ここは正直に謝るしかないか……
「ごめん、なんの話だっけ?」
俺が謝ると莉子は頬を膨らませる。
「今日の放課後、一緒にショッピングモール行かない?って聞いてたの!」
「あー、そうだったね」
一応思い出した感を出しておく。
それにしても莉子と放課後に買い物か……
今までは家で遊ぶことはあっても外で買い物をしたことなんてほとんどなかった。
本当に最近の莉子はどうしちゃったのだろうか。
俺が莉子の最近の言動を不思議に思っていると、莉子の顔が急に近づいてきた。
「それで、ダメかな?」
上目遣いでお願いしてくる。
その頼まれ方をされたら断れるはずがない。
まぁ最初から断るつもりなかったけどさ……
「いいけど、何しに行くの?」
「服とか見ようかなって、あと明人が行きたい場所あればそこも行くよ?」
俺が行きたい場所か……
そういえば、新しい教材が欲しかったんだよなぁ。
あと新作の漫画もチェックしないと。
「それなら本屋行ってもいい?」
「本屋?何しに行くの?」
「新しい教材が欲しいのと、新作漫画が見たいんだよね」
休み時間は莉子が話しかけてくるので勉強はできないが、自分磨きを決意してから一応毎日勉強は欠かさずやっている。まぁ、未だにヲタク趣味も毎日かかさずやってるんだけど……
「分かった!じゃあそろそろ休み時間終わるから席戻ろうかな、じゃあね!」
そう言って莉子は自分の席に戻る。
一人になった俺はさっきまでの莉子との会話を思い出す。
放課後に買い物ってつまりは放課後デートってことだよな……?
莉子がそんなつもりで誘ったわけじゃないことは分かっているけど、それでも誘ってもらえたことが嬉しくて、放課後が楽しみで仕方なかった。
***
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、待ちに待った放課後になった。
楽しみすぎて、あれこれ妄想していたらいつの間にか放課後になっていた。
後で復習しないとなぁ。なんてことを考えていると、莉子が満面の笑みで俺の席に来た。
「明人、早く行こ!」
「うん、行こうか」
そう言って莉子は俺の腕を引っ張って教室から出る。
学校からショッピングモーロまでの距離は電車で15分とそこまで遠くはないので、雑談をしているとすぐに目的地のショッピングモールに着いた。
「服屋と本屋どっち先に行く?」
ショッピングモールの入り口に立って莉子が聞いてくる。
同じモール内に本屋と服屋があるとはいえ、服屋のほうが入り口からは遠いので先に服屋に行ったほうがいいだろう。
「先に服屋でいいんじゃない?時間が余れば本屋に寄りたいかな」
「ありがと!それじゃあ最初に服屋に行こ!」
そう言って莉子が俺を置いて先に中に入ってしまったので、俺も急いで追いつく。
少し歩いて店に着くと、莉子は真っ先にレディースコーナーに行った。
レディースの服を莉子が見て悩んでいると、ふと周りからの視線が気になった。
もしかして、俺らがカップルに見えたり……?
なんて、考えるけどさすがにあり得ないか。
イメチェンして変わったけど、それでも莉子の可愛さと比べると俺なんてまだまだ釣り合わないからなぁ……
なんて周りの視線を気にしていると、莉子が俺に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、これとこれどっちがいいかな……?」
……どっちがいい?
ここはどっちでもいいんじゃねと本音を言ってはダメなんだよな…?
優劣を付けるべくしっかりと二つの服を比較する。
一つ目は白の長袖カジュアルパーカーで、二つ目ははもこもこした感じの長袖。
あまりパーカーを着ている莉子を見たことがなかったので、ここはパーカーを選ぼうかな。
「パーカーのほうが似合うんじゃないかな」
「そうかな?じゃあこれにしようかな!」
莉子は露骨に嬉しそうな反応をして、鏡の前で服を合わせることもせずにカゴに服を入れた。俺の意見だけで即買いして良いのかなと少し不安になったが、そんな感じで他にワイドパンツなども合わせて二・三着ほど俺に選ばせながら莉子の買い物は無事終了した。
「じゃあ、時間もあるし本屋行こっか!」
「うん、そうしよっか」
予想よりも結構早く服を見終えたので、本屋に行く。
俺が教材を見る前に新作マンガをチェックしたいと言うと莉子が了承してくれたので、俺は真っ先に漫画コーナーへと向かう。
新作マンガを見ていると、莉子が俺に話しかけてきた。
「あ、この漫画私も知ってるよ!」
「あぁ、それは最近流行ってるよね」
莉子は読書趣味がないので、漫画は興味ないのだが俺に付き合ってくれるている。
それならこれを機に莉子が好きになりそうな作品一つだけおすすめしてみようかなと思い本を手に取ってあらすじを読んでいると、誰かが俺の名前を呼ぶ声がしたのでそちらを振り向く。
「あ、あの、明人くんですよね……?」
「あ、はい、えっと……」
そこには、俺の友達……伊那芽衣がいた。
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