ピンポンダッシュ

星雷はやと

ピンポンダッシュ


 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


 我が家のチャイムが鳴り響く。


「今日もか……」


 原稿用紙から万年筆を離すと、壁掛け時計を見上げた。チャイムが鳴るのは決まって何時も夕方の、この時間である。家の目の前が通学路に面しているから、下校途中の小学生達によるピンポンダッシュの標的になっているのだろう。この時代に和風の平屋は、目立つから仕方がない。


 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


「……はぁ、注意するか……」


 気は乗らないが、俺は立ち上がる。何時もは鳴り止むまで、無視をするのだが、締め切り前に集中力が切れるのは勘弁して欲しいのだ。畳の上に散らばる原稿用紙を避け乍ら、廊下へと出る。

 俺が小学生の頃は、ピンポンダッシュをした経験はない。だからこの行為の何が楽しいのか分からない。毎日ご苦労様なことだ。


 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


 忍び足で玄関に着くと、引き戸の玄関扉を勢い良く開けた。


「こらっ! ……あれ?」


 そこには、誰も居なかった。


 ピンポーン。


 背後でチャイムが鳴った。

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ピンポンダッシュ 星雷はやと @hosirai-hayato

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