【完結】仮面を被った最強の探索者さん、超人気美少女配信者を助けて身バレしてしまう~正体を隠していたはずが、バズりにバズっていつの間にか日本の未来を託されてました~
第25話 大規模作戦ー1 招かれた大混乱
第25話 大規模作戦ー1 招かれた大混乱
「キュアの目撃情報を入手したわ」
まりんさんの一言から始まった本題。
探し求めていた情報をようやく手に入れることができ、俺たちは真剣に話を聞く。
あやかの貴重な時間を使う為、あやかに確認をとったが、「お兄ちゃんがやることをしっかりと聞いておきたい」だそうだ。
本当によくできた妹でお兄ちゃんは嬉しいです。
「じゃあ早速だけど──」
そうして、まりんさんの話を聞いた。
これをきっかけに、俺たちは後の“大規模作戦”に移ることになる。
まりんさんの話を終え、あやかと最後に話す。
「あやか。今回もあと少しだな」
「そうだね」
俺は時計をチラっと確認して言う。
もうすぐあやかの健診が始まる。
今回あやかがコールドスリーブから起きていられるのはここまでだ。
「私は健診が終わって、気づいたらお兄ちゃんに会えるんだけど、お兄ちゃんはそうじゃないよね」
「二週間はたしかに待ち遠しいなあとは思うな」
そう言うとあやかが
軽ーく寂しさを交えたぐらいのつもりだったけど、あやかは相当気にしているのかもしれない。
「色々とごめんね」
「いいんだ。探索や配信に関しては好きでやってるところもあるし」
「でも」
「あやか。美玖にも言われただろ? 妹はお兄ちゃんを頼るぐらいで良いって」
「うん」
そう返事しつつも、あやかはまたしゅんとしてしまう。
彼女なりに笑顔を取り
「……」
「わっ。なに?」
俺は無言であやかの頭を撫でる。
そして、
「次会う時は、元気な姿になったあやかだな」
言うのを
言葉にすることで約束したかったんだ。
もう後戻りはできない。
「……! お兄ちゃん。うんっ!」
あやかがまた心の底から笑ってくれた気がした。
この笑顔を見れただけで、俺の苦労は無かったも同然だな。
「じゃあ健診がんばれよ」
「がんばるってほどのものじゃないよ。お兄ちゃんこそ、無理はしないでね」
「おう」
俺に合わせて、廊下で待っていたまりんさん達もあやかに手を振った。
「行きましょう」
病室から出て、俺は自然と探索者の顔に戻る。
ここが最後の正念場だ。
絶対成功させよう。
★
あやかが目覚めた日から三日後。
「……ふぅ」
俺は再び、ちい子と出会った『浅間山ダンジョン』入口前に立っている。
相変わらず大きく真っ暗な入口を前に呼吸を整えていると、隣のロリっ子が何やら小言を言ってくる。
「あんたでも緊張するのね」
「そりゃあするだろ。今回は大規模作戦なんだぞ」
ちい子だ。
今回は俺とちい子の二人で、ここの『下層』を探索する。
“大規模作戦の内の一つ”として。
あやかの病室でまりんさんから聞いたキュアの話。
それはもう、俺をおちょくっているとしか思えない情報だった。
今いる浅間山ダンジョン以降、俺が配信をしながら探索を行った計四つの高難易度ダンジョン。
富士、湘南、日光、八王子。
なんと、その全てでキュアの目撃情報があったというのだ。
しかもその情報は、決まって俺が配信した
俺を一日遅れで追ってきているとしか思えなかった。
初めてキュアを聞いた時の声は、まるで幼い妖精のようだった。
いたずら好きの子どものような、そんな印象がある。
関東圏にある高難易度ダンジョンは、直近の四つとこの浅間山の五つ。
だからこそ、今回はここで鉢合せるのではと考えて俺はここに来ていた。
けどもちろん、俺が外れる可能性はある。
そこで、今回は大規模作戦なのだ。
美玖が連絡を取ってくれた上級探索者をそれぞれ五つの高難易度ダンジョンに配置して、一斉に探索をする。
高性能のカメラでリアルタイムにやり取りをしながら。
「まったく。最初から協力できるならしなさいよって話だわ。あの無駄に高いプライドをお持ちの上級者連中め」
「そう言うなって。むしろお前も厄介者の筆頭だろ」
「なっ!? あたしのどこか厄介者だって言うのよ!」
「俺しかパーティーを組んでくれる人がいなかったところとかな」
「~~~っもう!」
上級探索者は、実力があるからこそ一癖も二癖もある。
そのせいで、今までは全く交流や協力の機会がなかった上級探索者だが、美玖がそれらをまとめてくれた。
手懐けた? とも言えるかもしれないけど。
あのオタク四人組のようにサイン付きプロマイドをあげたり、実際に会って話をしたり。
美玖のアイドル配信者としての魅力を存分に使ってくれたみたいだ。
体を売るようなことはしていないらしいので、そこはまじで安心した。
そんなことしないって信じてるけど。
まあ、それでもちい子とのパーティーはヤダって断られていたのは面白い。
結果的に、俺とちい子はこの浅間山ダンジョンに戻って来たのだ。
「時間だ。そろそろ行くか」
「ええ!」
俺とちい子は再び『浅間山ダンジョン』に足を踏み入れる。
そうして、
「ギャオオォォ!」
「グガァァ!」
「グオオオオオ!」
相まみえるのは前回とは比べものにならない魔物の数。
「これって……」
「中々だな」
魔物はダンジョンで生活しているため、来た時で数などが変わるのは当然。
でも、明らかにそんなレベルじゃない。
「これもキュアが何かしら影響しているのかしら」
「かもな」
チラっと飛行型カメラに目を向けて、心底良かったと思った。
なぜなら、今回は配信をしていない。
配信者としてはどうかと思うのが、これも探索に集中するためだ。
今回はあやかを救うための手掛かりキュア、それだけに注力したい。
それに飛行型カメラで上級探索者たちと連絡を繋いでおく必要もある。
今回は100%探索者としてのダンジョン仮面だ。
そうして、耳に付けた小型のインカム越しに報告が流れて来る。
『ダンジョン仮面!』
「どうした」
『魔物が多すぎる! 明らかに異常だ!』
「なんだと」
この声は『富士ダンジョン』に行ってもらっている、美玖オタクの屈強な男か。
前に一度顔合わせをしている。
さらに、
『こっちもだ!』
『湘南も明らかにおかしい!』
『こんなの見た事ねえぞ!』
同じ報告が一気に流れて来る。
「どうなってんだ」
「──来るわよ!」
「!」
連絡に耳を傾けていると、魔物が一心に迫ってくる。
「くっ!」
ちい子の声が無かったら危なかった。
俺も集中しなければ。
「ボーっとしてんじゃないわよ!」
「わかってる!」
少しでも油断すれば、すぐにやられかねない!
★
<三人称視点>
小さな妖精のような姿をした魔物が、楽しげに笑いながら宙を舞う。
≪うふふふふっ≫
緋色たちが探し求めているというキュアだ。
キュアが飛び回った後には、それを追うように
≪ワタシと遊びましょ?≫
そしてキュアは小さな人差し指をくるりんと回し、光の粉を
途端、
「グルオォォォ!」
「キシャアァァァ!」
「ヴォアアァァ!」
光の粉から魔物が現れ出る。
一体や二体ではなく、大量の凶悪な魔物だ。
それらの出現させた魔物は、一斉に緋色たちのいる層へと向かっていく。
≪楽しみだわ。ダンジョン仮面さん♪≫
その様子に、宙で横になるキュア。
あとワタシは待つのみ、という姿勢とも伺える。
しかし、
≪あ、そ〜っだ!≫
ニッコリと何かを思いついたような顔を浮かべ、ある物を取り出す。
≪せっかく配信者なんだもん。みんなに見せてあげなくっちゃね!≫
キュアがどこからともなく取り出したのは飛行型カメラ。
それも、緋色たちが使うものより数段上の性能を持っているようだ。
≪配信開始っ♪≫
緋色たちの方に向かっていったカメラを眺め、キュアは不敵な笑みを浮かべる。
まるで、やりたいことは全てやる、というような子供の奔放っさが垣間見える。
★
同時刻、日本。
「ん?」
「なんだ?」
「おいおい」
突如、日本の
「はあ?」
「ふざけんなよ!」
自宅の画面から家電量販店の画面まで、一部大きなテレビ局を除き、全国で同じ画面が流れるという事態が起きていた。
そうして、
「おい、あれダンジョン仮面じゃないか?」
「本当だ」
「隣にちい子ちゃんもいるぞ」
「こっちの画面にはあの上級探索者もいるぞ!」
各所で気づく者が現れ始める。
どうやってかは分からないが、たった今高難易度ダンジョンに潜っている上級探索者たちを映していると。
当然、マスコミもこの事態にすぐさま動く。
『速報です。たった今、全国の画面にて謎の探索配信が行われているとのことです』
『中にはダンジョン仮面やちい子、著名なダンジョン配信者もおり──』
『しかもそれらは、ダンジョン配信者が自らしているわけではないとのことです』
『続報が入り次第、お伝えしていきます』
まさに日本が混乱状態に陥ろうとしていた。
その中でやはり、興味を惹くのはダンジョン仮面。
「うおおおおお!」
「なんか分からんけどすげえ!」
「これライブなのか」
「ダンジョン仮面のチャンネルとかじゃないよな?」
混乱する者、すでに興味を持ち始めている者、何か番組のドッキリだと考える者。
様々な人がいる中で、緋色たち手を取り合った上級探索者が高難易度ダンジョンを進む──。
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