第5話 起承転結の功罪
起承転結については、恐らく作文技術として用いるのはやめておいた方が良いと散々言われていることだろう。これはある意味当然のことで、起承転結とは元々漢詩を作る際に用いられる作法であったからだ。小説や論考を書くために産み出された作法ではない以上、使うに際して無理がある場合が多いのも致し方ないことである。
では漢詩以外ではどこで良く用いられるかと言えば、例えば同じく詩である歌詞などに用いられていたことも多い。例えば「荒城の月」の歌詞などは、春夏秋冬についてそれぞれの季節に対して起承転結の詩を展開して行っている。
物語を書きたいならば「転」は不要なことが多いので、単純に「起・承・結」とするか「序破急」あるいは「三幕構成」を使うのが妥当だろう。
同様のことは論考にも当てはまる。論考についても「転」は避けて、「序論・本論・結論」と書くのが望ましいと思う。
とはいえ、起承転結という作法については見るべきところも多いので順を追ってみてみたいと思う。
まず、「起」は文字通り詩の起点である。これからどのような詩を書くかを示すことになる。物語で言うなら枕の部分であり、論考であれば序論に相当する。
続いて「承」は起点を引き継いで展開していく部分となる。どのように書くか示された詩を引き継いでいく部分だ。物語としては本編となる部分だろう。
その後の「転」は場面の転換点となる。引き継がれた詩の視点を切り替えていく部分になる。話としては横合いになるので、一つの話の流れに組み入れにくい部分でもある。物語ならば、幕間劇などに使ってみてもいいのかもしれない。論考として使うなら、別の視座があることを示すために使ってみても良いだろう。とはいえ、そのように論考に用いる場合は「承」と「転」とを別に分けるというよりは、「承+転」を一組として運用すると考えておくべきだと考える。
最後の「結」は締めだ。起承転を全て受けて締めくくる形となる。話としては終盤の締めくくりになるだろう。論考の構成で言うならば結論になる。
以上のように使い方によっては使える部分もあるが、やはり書きなれない内に起承転結に則って物語や論考を書くのは難しい。少なくとも「話の大枠をどのように定めればよいかわからない」という場合にはやめておいた方が良いだろう。
さて、以上大枠として「起承転結」という構成に則って起承転結という構成法について論じてみた。具体的には第一段落が「起」、第二段落から第四段落までが「承」、第五段落から第九段落までが「転」、第十段落以降が「結」となるように書いてみている。第八段落で述べた「別の視座があることを示す使い方」だと思って貰えれば大枠で間違っていない。
書いてみて思ったのだが、やはり論考や物語を書くに当たっては非常に使い難い作法であるように思う。
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