むちのち

「しかし、よく考えてみれば俺はアイツのことあまり知らないよな」


 俺を付け回す謎の女、ボブ。容姿を鑑みると謎の美女でも通りそうな気はするが、付け回して恨み言を口にする者を謎の美女というのには若干の抵抗を覚えて、やはり謎の女でいいやってことにしておく。


「とりあえず、今日も『ついてきて』はいるみたいだが」


 俺を付け回して何がしたいのか。昨日は市場で買い食いをしたわけだが、俺は毎日遊んで暮らせるような身分でもたくわえがある訳でもない。もっとも、今日は仕事かというとそうでもなくて、先日メンテナンスに出した武器の一つである弓を職人のもとに取りに行くところなのだ。

 町の中央から職人たちの仕事場が集まる場所へと続くからか、職人通りと名付けられた道には職人に用がある人間の他に材料を運ぶ人間や飯を食い終えて仕事場に戻る職人なんかの姿もある。


「まぁ、他の職人の仕事場もあるし、アイツはそっちに用があるとするなら……」


 同じ道を進んでること自体には不自然はない。だが、そもそも俺はボブが何の仕事をしているのかも知らない。同じ冒険者で、道具や武器を職人に見て貰ってるとか知っていれば納得はできる、感情面でどうかは別として。


「というか、予定が定まってない冒険者を尾行するとか普通の仕事持ってる奴には難しいよな」


 魔物の討伐で町を離れることもあるし、仕事を受ける頻度だって受けられる仕事がギルドの方にあるかで決まる。三日四日と連続で働く日もあれば、一週間仕事がないことだってある。こんな俺の暮らしに付き合えるのは、それこそ仕事をしてないか、同じ冒険者とか予定の方にある程度の自由が利く職業のやつに限られると思うのだが。


「やっぱ、アイツのこと何も知らないな、俺」


 こういうとボブのことに興味があるみたいだが、後をつけられてる身としては、自衛のためにある程度のことは知っておかないといけないと思ったのだ。


「んで、現状『何も知らないこと』を知ってる程度ってな……無知の知ってや」


 そこまで言ったところでだった、背中に衝撃が走ったのは。


「っ、あ……」


 衝撃というか痛みか。後で背中が熱を帯び。


「ボブの身体がむちむちだなんて……さいてい」

「言ってね-よ!」


 ボソッと聞こえた声に思わず叫んでしまう。が、まぁ、振り返ってみたアイツの身体はこう、服が内から弾けそうなくらいに胸とか尻がパッツパツで。


「案外間違いじゃねぇじゃねぇか」


 とはとても言えないが。心の中にもやもやが残った。


 ちなみに弓の職人に見て貰ったら俺の背中には赤い手形がついていたそうだ。


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 謎の女、ボブ。

 彼女がついてくる理由はまだわからない。


 あとおっぱいとお尻は結構大きい。

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