第13話:不穏
その日の夕方。辺りもすっかり暗くなった頃、坂本から「希空が家に帰って来ないって」とメッセージが届いた。とりあえず家を出て、彼女の家の前で合流して詳しく話を聞く。
「家出することはたまにあるんだけど、そういう時は大体うちに来るんだ。けど、今日は来なくて……」
「小桜の家は?」
「まだ行ってない。愛華には心配かけない方が良いと思って話してすらいない」
「俺、見てくるよ」
「けど……今は二人を会わせないほうがいいんじゃないかな」
「俺は逆だと思う。お前のせいじゃないって、小桜本人からあいつに言ってやるべきだと思う。じゃないとあいつ、いつまでもうじうじしてるだろ。あれ見てらんねえんだよ」
「……分かった。私はとりあえずその辺探してくる」
「待った。俺も一緒に行動するよ。一人じゃ危ないだろ。小桜の家行ったら戻ってくるから家で待ってて」
「えっ、う、うん……」
お姉ちゃんも一緒だから大丈夫だと思うけど……という呟きが聞こえて、余計な気遣いだったかもしれないと思ったが、それに返事をする余裕はなかった。
小桜の家に着くと、海菜さんではない女性が出てきた。もう一人の母親だろうか。女性に小森のことを知らないかと尋ねると、奥から小桜が慌てて出てきた。家に帰っていないらしいという話をすると、慌てて家を出ようとするが女性が止める。
「待ちなさい」
「でも! 心配だよ!」
「分かってる。探しに行くなとは言わないわ。私も行くから、少し待ちなさい。落ち着いて」
「……うん……」
「俺ももうちょっと探してきます。小桜、見つかったら連絡してくれ」
彼女のことは母親に任せ、坂本と合流する。懐中電灯を持った坂本と、誰かと電話をしている彼女の姉が待っていてくれた。
「マナ、大丈夫そうだった?」
「親が一緒だから大丈夫だと思う」
「はい、わかりました。お忙しい中すみません。えぇ、私達で探しますので大丈夫です。見つかったら連絡しますね。失礼します」
坂本の姉が電話を切る。電話の相手は海菜さんだったようだ。店に行っていないか確認してくれたらしい。
「……徒歩圏内にいると良いけど……」
「電車とかで移動してたらお手上げだな……」
「何も持たずに出て行ったみたいだからそれはないと思う。スマホも置いて行ったって」
「んだよそれ。スマホくらいは持っていけよ」
「あの馬鹿……マナには悲しい顔させたくないとか散々言ってたくせに……」
「ほんとだよなぁ……」
文句を言いながら、辺りをしらみ潰しに当たる。しかし、彼女が出てくる気配はないし、小桜からも連絡は来ない。今どの辺りを探しているのか聞こうと電話をかけると、彼女ではなく母親が出た。
「えっ。あっ。こざ……まな——娘さんは……?」
「……大丈夫よ。心配しないで。今はちょっと話せないだけ。希空ちゃんは見つかったわ。今家に向かってる。あなたも家に帰りなさいね。他にも探すの手伝ってくれた子がいるのなら、その子たちにも連絡しておいてもらえるかしら。私は親御さんに連絡するから」
「……わかりました」
「ありがとう。よろしくね」
電話が切れる。
「見つかったって」
「はぁ……良かった」
「良かった。無事で。ありがとね。えっと……」
「あ、桜庭です。桜庭楓」
「桜庭くん、ありがとう。家まで送っていくよ」
「……ありがとうございます」
坂本の姉に家まで送ってもらい、帰宅する。どうしても気になり、小桜にメッセージを送ったが、その日のうちに返事が来ることはなかった。
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