第9話大事なときには誰もいねぇ



拓矢は民泊で一部屋やって調子にノッていた

毎回paypalから外国人旅行客の金がドルで振り込まれてくる。


もう一軒やろうかなと考えていた


ただ25歳の若造でも稼げるそんな金の成る木、他の同年代の友人が放っておく訳がない


矢板という男がいた、栃木から定期的に宿泊してきた男だが奢るからと飲みに誘われる


矢板「あの、あの民泊ってどうやれば出来ますか?あのアパート他の部屋も空いてたから借りようと思ってるんですよね」


拓矢「いややるとしても他の所がいいよ俺もう既にやってるし、銭湯のおやじが大家だけど他にもあるから」



そして1ヶ月後


物件の周囲に外国人がひっきりなしに来るようになった。


矢板とその周りが勝手に借りたのだ。


拓矢は育ちもあるが必ず外国人と駅で待ち合わせして、部屋の案内をして鍵を渡す、そして来る人数は2.3人としていたのだが


矢板は二段ベッドを沢山入れて8人収容する形、そして鍵はキーボックスの中


拓矢が掃除しに行ったとき

ドアの音

ドンドンドン!!ガチャガチャガチャ!!

相手「おい!!いんだろ!!開けろや!おら!」


ドアを破壊しかねない勢いだ


拓矢「はいなんですか?」


ドアを開けるとズカズカ土足で乗り込んで来た


相手「お前アウトだぞ!!なんか民泊とか外国人とめてんだろ?!」



野球かよとツッコミたくなったが冷静に

拓矢「すいません不法侵入ですよ」


相手「俺はあそこの大家と昔から知り合いの星館っていうもんだけどさお前が法おかしてんじゃねぇの?あんま調子こいてると埋めるぞ?」


入れ墨が見える

どうやら本職の人らしい


拓矢「いやしてないんで帰ってもらっていいですか?警察呼びますよ」


星館「覚悟しろよてめー」


次の日

警察から電話が


警察官「警視庁組織犯罪対策科の田中です、すいません通報があったんですけど、なんか外国人集めてなにかしてますか?」


拓矢「いや特段何もしてないです」


その次の日

保健所から電話が

保健所「すいません、あのー民泊してますよね、旅館業法違反の通報がありまして」


そして一週間後

郵便物が配達証明付き郵便で送られてきた

送り主は

「東京地方裁判所」


明渡し訴訟である


連帯保証人の拓矢の母から電話が来る

拓矢母「あなたなんか裁判所から封筒届いたけど東京で何してるの?!」



生きた心地がしない拓矢、、、

矢板に電話しても飛んでいる



拓矢「大事な時には誰もいねぇ、、、なんだよ俺が稼いでる時は皆ニコニコして話聞きに来たのに、、」


その時星館から電話が


星館「おいお前今すぐブクロに来い」

拓矢「今忙しいんで無理です」


星館「お前の友人の矢板くんかな?今詰めてんのよ出ていかないっつってるから」


後ろから矢板の声が聞こえる

矢板「なんで出てかなきゃいけねーんだよ!証拠あんのかよ」



電話を切り一時間後矢板から電話があった

矢板「なんか周辺の人も来始めて拓矢出せやってなってます警察も来てます」


拓矢出せ!拓矢どこだ!拓矢いつくんだよ!


まるでSLAM DUNKの湘北の応援の勢いな拓矢コール


拓矢はこの事件の後とうとう部屋を明け渡した。


後日霞が関の東京地方裁判所に行く拓矢

答弁書には「ごめんね無かった事にして」

とだけ書いた。


遊戯王のデュエルする所みたいな所に通される。


だが、、相手がいない


裁判官「原告から訴状の取り下げがあり無かったことにすると、以上閉廷します」


拓矢「追加で裁判費用やらお金請求されなくてよかった、、、」



トボトボ歩く

また振り出しに戻る、地獄は天界に潜んでる、、か


ラーメン屋があったのでそこで昼飯を食べに入る


拓矢「ラーメン1つ」


いつも池袋周辺にいるから違和感があったが

ここは霞が関

皆スーツを着ている私服は拓矢だけ


店員「はいおまちどう」


ラーメンをすする

豚骨が懐かしくなる


拓矢の心境(あぁあそこの向かいの俺と変わらない年齢のスーツ来てる人は恐らく役人の人だろう、世間体、年次で上がる給料、ボーナス、女と会うときとかでも堂々と職業ドヤ顔で言ってるんだろうな、、、俺は裁判所に呼び出されてフリーターで何やってんだろ俺、、、)




丸ノ内線で池袋に帰る

池袋北口の光景を目にして何故か安心感に包まれた午後2時半頃であった。

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