第28話 トライアスロンリレー 陸
地竜組の2人は地竜を展開し、跨って待つ。
「同時にスタートしたかったが、そうもいかなそうだ」
人と竜の泳ぐ速度の差はあまりにも大きい。
残り40mでノラヒメはミツバ&ゴジョウに抜かされた。
「同時にスタートしてたらおれの圧勝でつまらないだろ? 良いハンデさ」
「かわいくねぇな……ほんっとによ」
ゴジョウが到着する。
「クウェイル!」
「おう!」
ゴールに到着したミツバは陸に降り、
「お先に!」
クウェイルは地竜類牙竜種のハッカイに乗り、地を駆ける。
シグレは表情に出さないものの焦っていた。
(まずいな……! こりゃかなりリードされるぞ)
シグレはスノードレスから降り、湖に近づく。
「ノラ! バトンを寄越せ!」
シグレは手を伸ばす。ノラヒメが陸に上がる手間を惜しんだのだ。
「シグレさん!」
シグレは腕輪を受け取り、スノードレスに乗り込む。
「行くぞスノー!」
「かうっ! かうっ!」
シグレ&スノードレスが出走する。
シグレが去ったあとで、ミツバは湖に近づき、まだ陸に上がっていないノラヒメに手を伸ばした。
「ミツバさん……」
ノラヒメがミツバの手を掴む。ミツバはノラヒメを掴み上げる。
「ごめん……僕の竜が暴走して、君の竜を攻撃した」
「大丈夫です。なんとか躱せましたから」
にこーっと笑うノラヒメに対し、ミツバは今までの自分の
「本当にごめん……この勝負、もしこっちが勝っても君を退学にはさせないから……」
「その必要はありません」
「え?」
「私のチームは負けませんから!」
---
スタート80m、シグレはようやくクウェイルの背中を微かに捉えた。
(距離にして400mってとこか! 3500mでこの差はデカすぎるな。だが悪いことばかりじゃない。クウェイルのペースが想定以上に
クウェイルは上り坂に入る。
依然、クウェイルのペースは速い。否、
「馬鹿が、飛ばし過ぎだぜ」
明らかなオーバーペース。原因はシグレの挑発だろう。
シグレも上り坂に入る。同時にクウェイルは下り坂に入った。
(アイツの竜は牙竜種、スタミナはC。おれの竜は角竜種、スタミナはAだ。速度は同じ、だがトップスピードを維持できる長さは角竜種の方が上だ!)
上り坂を上り切り、下りも疾走し、1500mの芝道に入る。
(このコース、坂に注目しがちだが恐ろしいのはこの芝だ! 上り坂と下り坂で疲労した足にここの芝は絡みつく。踏み込みが浅いと足を取られるぞ)
距離320m、そこでクウェイルとクウェイルの竜ハッカイは速度を落とした。
「くっ!?」
クウェイルは気づく、ペース配分のミスに。
(速く走ることより巧く走ることに意識を置かないと、このコースじゃ体力がもたないぜ!)
シグレはハッカイの速度が落ちたところでスパートをかけた。
(次のコース、フレンの竜は牙竜種でロクスケの竜は角竜種! 空の戦いじゃフレンの方が竜種的に不利だ)
シグレは差を詰めていく。
(万が一フレンが絶好調でフレンが3000m走り切れれば竜種の差を覆すだろう。だが! それにも限度はある! 最低でも差は50mまで詰めておかないと終わりだ!!)
300m……250m……200……。
(くそ! 詰め切れねぇ! クウェイルのやつ、すぐに立て直しやがった! 入学試験ギリギリまで飛竜に乗ってたクセにこれだけ地竜を乗りこなせるとは……こいつ、センスあるぜ)
クウェイルが芝道を走り終え、大木林に入る。この時点で差は150m。
大木林の中は視界が悪く、相手の姿は確認できない上に大木を避けることに意識を使うため相手を見る余裕もない。
ゆえに、シグレがクウェイルとの距離を測れる機会はもうない。
この林を越えた先で、すでにスタートしているであろうロクスケがどれだけ遠くに居るか。
シグレは不安を抱きながら林を越える。
「――ちくしょう」
すでにロクスケとロクスケの竜ゴクウは100m先を飛んでいた。
(終わった。この差はもう――)
「シグレ!」
フレンの一喝がシグレの不安を拭う。
エッグルに跨り、手を伸ばすフレンの顔は……無邪気そのものだった。自信に溢れているわけじゃない。遠足前日の子供のようなワクワクした笑顔だ。
「早く寄越せ。良い風が吹いてるんだ」
その顔に一瞬に満たない時間だがシグレは見惚れてしまった。
シグレは腕輪をフレンに投げる。
「フレン!」
フレンは腕輪を受け取り、空へ飛んで行った。
トライアスロンリレー、第三走者フレンvsロクスケ。
最後の戦いが始まる。
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