第20話 飛ぶな
「前途多難だな」
ルームメイトであるジークは笑いを含んだ声で言う。
オレはチームの事情をジークに話した。
結局、ノラヒメがレヴァに振り回されまくっている間に門限(18時半)が来てしまった。特に改善案、打開策は見つからず、手詰まりだ。
藁にも縋る気持ちでジークに相談した、というわけだ。
「オレの問題はまぁ練習あるのみなんだけど、問題はノラヒメの方でな」
ロフトで、風呂上がりのオレはタオルで頭を拭きながら聞く。
「あの暴れようじゃ完走できるかどうかもわからねぇ」
「ふむ……その竜は、なにか暴れるようになったきっかけとかはないのかな?」
「きっかけ?」
「最初から気性が荒いのならともかく、なにかしらきっかけがあるなら暴れ症を治す方法も見えるのではないか?」
「ふーん、そうだな。明日聞いてみるか」
「あとは薬物療法しかあるまい。鎮静剤を打つとか」
「あまりそっち方面には頼りたくないな。ドーピングにとられかねないし。そっちはどうなんだ? ジークのチームはなにも問題とかないのかよ」
「まったくないな。私のチームメイトは優秀だよ。
「……羨ましいことだな」
---
火曜日。トライアスロンリレーまで残り29日。
朝、食堂に行くと1人で卓につくノラヒメが見えた。
オレは適当にパンと牛乳を取ってノラヒメの前に座った。
「あ、おはようございますフレン君」
「おはよう。シグレは一緒じゃないのか?」
「シグレさんは起きたらいませんでした。多分、日課のランニングだと思います」
そういや、あの隠れ岬もランニングの途中に見つけたとか言ってたな。暇がありゃ走ってんのか。
オレはパンをかじりながら、
「なぁノラヒメ、ちょっと聞きたいんだけどよ」
「はい、なんでしょう?」
「レヴァは元から暴れ竜だったのか」
聞くと、ノラヒメはビクッと肩を震わせた。
「なにか暴れるようになったきっかけとか――」
「いえ! レヴァは最初から、暴れてましたよ……」
食い気味で否定された。
明らかに嘘だな……。
「おい、ノラヒメ。なにかあったんなら――」
「あ! わたし、今日日直でした! 早く行かないと!」
ノラヒメはパンを咥え、食堂を出ていった。
「……アイツ、なにか隠してんな」
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火曜の1時間目、科目は騎乗訓練。
飛竜騎手、地竜騎手、海竜騎手で別々になり、それぞれの訓練場所に向かう。飛竜騎手は学校から2000m離れたところにある火山の崖だ。飛竜を使えばそう遠い距離じゃない。
崖にはC組、E組、F組の3クラスの飛竜騎手が集まっている。全員で18人。
崖の近くには倉庫となってる小屋があり、その小屋から騎乗訓練・飛竜騎手担当のラメールは出てきた。
「それでは騎乗訓練を始める! まずはアップの2000m走だ」
よっしゃ! この授業は楽しみにしてたぜ。
思う存分、エッグルに乗れる!
「おいテメェ、ゲロ吐くんじゃねぇぞ」
ロクスケが悪態をついてきた。
「うっせぇ! 2000mなら問題ねぇよ」
この辺りはまだ飛んでないからな、楽しみだ……!
ここの空は一体どんな景色を見せてくれるか。ワクワクするぜ。
「待て。フレン」
ラメールが呼び止めてきた。
「はい! なんでありましょうか! 教官!」
早く空を飛びたいからな、ここは従順に……。
「お前は飛ぶな」
「…………はい?」
「この授業中お前が飛竜に乗ることは許さん。それだけじゃない……お前は今からトライアスロンリレーまで、飛竜に乗ることを禁ずる」
「はぁ!!?」
ラメールの前に飛び出る。
「ど、どういうことだよ!? なんかの罰則か? オレがなんかやったか!?」
「別に。テメェはまだ竜に乗る資格がねぇってことだ」
「なんだと!」
「もしも言いつけを破り、竜に乗ったら――」
ラメールは素っ気ない顔で、
「退学処分する」
「なっ!?」
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