第18話 バレットリンク

 月曜一時間目“魔法実技”。


「授業を始めるわ。最初は皆の“バレットリンク”を見せてもらうわね。一列に並んで、順々に的を狙って撃ってちょうだい」


 バレットリンクとは竜魔法の一種だ。

 自身に封印されたドラゴンのブレスと同じ属性の塊を形成し、射出する魔法である。オレがソラに初めて教えてもらった竜魔法である。


 “魔法実技”の担当はミズキだ。


 場所は天井のない建物の中。

 学校の前にある運動場だ。元々は円形闘技場だったらしく、観客席とかもある。

 オレ達C組は的の前に並んだ。的は30cmほどだ。この的に1人ずつバレットリンクを当てていく。



「なんであんな約束してしまったのでしょう!」



 オレの2つ後ろに並んでいるノラヒメが叫んだ。


「今さら後悔してもおせーよ」


 と言ったのはオレの後ろのシグレだ。


「ううぅ……せっかく運よく〈ミッドガルド〉に入れたのにぃ……」


「楽しみだなぁ、トライアスロンリレー。レースなんて初めてだ!」


「おれもこういうのは嫌いじゃない」


「2人共好戦的すぎません?」


「次! フレン=ミーティア君!」


 おっと、話してたらいつの間にか列の先頭に居た。


「的を狙ってバレットリンクを撃ちなさい」


「あの的って、どんな威力の魔法でも壊れないんですか?」


「大丈夫よ。マグマに浸しても溶けない特別な素材で作ってあるから」


「そっか。なら……」


 全力で行こう。

 オレは両手を前に出し、魔力を溜める。


「バレットリンク!!」


 イメージは炎、そして球体。

 両手の前に70cmほどの炎の球が出来上がる。


「……中々やるじゃない」


 ミズキが言う。


「2年間、ただ飛んでただけじゃねぇぜ。喰らえ!!」


 オレは炎の塊を飛ばす。火炎は的に当たり、爆風を巻き起こした。

 しかし、これだけの火力をもってしても的は無傷だった。


「ちぇ、本当に丈夫だな」


 後ろに居る連中がザワザワとしだす。

 間違いなくこれまでの生徒の中で最高威力のバレットリンク! 驚け驚け……!


「飛ぶだけが能じゃねぇんだな」


 シグレはそう言って笑う。


「まぁな」


「次、シグレさん」


「ういっす」


 さて、シグレの番か。


 シグレはロクスケやクウェイルの話を聞くにかなりの地竜騎手……竜魔法も凄まじいのかもしれない。この授業でライバルになる可能性大だ。


「うおぉ! ――バレットリンク!!」


 シグレは唸る。だが。




――ヒュウ。




 そよ風がシグレの手のひらから発射された。


「へ?」


 思わず気の抜けた声を出してしまった。


「そっか、君の竜は角竜だったわね」


「はい。てか、角竜持ちがこの魔法習う必要あります?」


「将来、別の竜を持った時に使えないと困るでしょ?」


「そりゃそうっすね。すみません」


 シグレは列を離れ、オレの隣に来る。


「お前しょっぼいなぁ。練習してなかったのか?」


「馬鹿野郎! バレットリンクの威力は竜のブレス性能に比例すんだよ」


「だからなんだよ?」


「スノードレスは角竜。角竜は優れた身体能力と引き換えにブレス性能はカスなんだよ、習わなかったのか?」


 そういや、ミズキからもらったプリントにそんなこと書いてたっけな。




――ゴオォン!!!




「うお!?」


 轟音と共に、雷のビームが的を焼き払った。 

 ビームを放った女子――ノラヒメは口をわなわなさせている。ミズキも呆気に取られてる様子だ。


「あわわわわわ……!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 的、壊しちゃいましたぁ!!」


 ノラヒメは平謝りする。


「……なるほど、バレットリンクは竜のブレス性能に比例する、か」


「言っちゃなんだが、ミツバの気持ちも少しわかるな。アレがこっちに飛んで来たらと思うとゾッとするぜ」


 同感だ。


「トライアスロンリレーのカギを握るのはおれでもお前でもなくて、ノラだ。アイツが竜を制御できなきゃまず勝負にならねぇ」


「……逆に、あれだけのパワーのある竜を制御できれば……まず負けねぇな」


「その通り。まずはアイツの竜と対面して、暴走の理由を探らないとな。今日は短縮授業で午前中で終わるし、午後に寮の近くにある岬に行こう。あそこなら誰も居ないだろうからな」


「竜が暴走しても大丈夫ってわけか」


「そういうこと」

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