第15話 チーム結成

 案内されたのは長机が6つある教室。長机1つに対し、椅子は3つある。

 机の前には黒板。黒板の前にはラメールが立っている。

 オレたち18人の生徒は椅子に座っていく。特に指定はなかったため、オレはシグレの右隣に座った。シグレの左隣には見知らぬ男が座った。


「さて、最初に俺の方針をハッキリ言っておこう。

――俺に情熱はない」


 本当にハッキリと、堂々と駄目なこと言いやがった。


「お前らのために命をかけたり、プライベートを捧げたりは絶対にしない。そもそも俺はこの学校の防衛強化のために配属されたのであって、教師を志望して来たわけじゃない。まぁ、教職はついでということだ」


 ラメールは教室の隅にある高そうなソファーを持って、黒板の前に置き、ソファーに深く座った。


「自分の立場があやうくなるぐらいなら容易にお前らを切り捨てる。だが最低限、教師の仕事はやってやる。お前らが落ちこぼれたりしたら俺へのペナルティもあるからな」


 コイツ……まったくやる気を感じられねぇ。


「挨拶は終わりだ。

 これからお前らにチームを作ってもらう。3人1組のチームだ」


 3人チーム。

 クラスは18人だから、6チームできるな。


「絶対に海竜騎手・地竜騎手・飛竜騎手のトリオにしてくれ。このクラスはちょうど6人ずついるからあぶれることはないはずだ。では、チーム決め開始!」


 3人1組。オレは飛竜騎手だから、残りの2人は地竜騎手と海竜騎手。

 オレの隣にいるシグレは地竜騎手、オレはシグレを誘おうとするが、


「おいシグレ。もちろん、お前は俺と組むだろ?」


 シグレの左隣。

 目つきの悪い、タオルを頭に巻いた男がシグレを誘っていた。


「ようロクスケ。まさかお前と同じクラスになるとはな」


「ああ、幸運だった。スクールじゃ俺が飛竜騎手のナンバーワン、お前が地竜騎手のナンバーワンだった。俺とお前が組めば敵は居ねえ。だろ? シグレ」


「わりぃな、残念だがおれが組む相手はお前じゃない」


 シグレがオレの肩を掴んでくる。


「おれが組む飛竜騎手はコイツだ」


「はぁ? ガチで言ってんのか? そいつ、試験で吐きまくってたやつだろ」


 タオルを頭に巻いた男、ロクスケはあざるように笑った。

 ロクスケの笑い声を聞き、クラスの視線がここに集まった。


「うっせぇ! 仕方ねぇだろ、乗り物酔いなんだからよ」


「乗り物酔い!? 竜騎士目指す奴が乗り物酔いって……オイオイオイ、シグレ! こんな落ちこぼれと組むとか本気かよ!」


 シグレは真剣な目つきでロクスケを見る。



「ああ。言っとくがロクスケ……こいつはお前より速いよ」



 ロクスケは血筋を頭に浮かべつつ、笑顔を維持する。


「言うねぇ! 後悔するんじゃねぇぞ、シグレ」


 ロクスケは机をバン! と叩き、別の地竜騎手を探しに行った。

 このひと騒動を前に、ラメールは欠伸あくびをしていた。


「アイツ、知り合いか?」


「ガキ専門の竜騎士養成スクールで一緒だったんだ。スクールの飛竜騎手の中じゃ断トツだったぜ」


「いいのかよ、そんな有望株の誘い断っちまって」


「それ以上の有望株がここに居るからな」


 シグレはオレを見る。

 なんだよ、普通に嬉しいな。


「さぁ、アイツのことは放っておいて、海竜騎手を探そうぜ」


「そうだな。さて、誰にするか……」


 当然、できれば優秀なやつがいい。

 つっても誰が速いとか全然わからない。知ってる顔はシグレとあと1人だけだ。


 オレとシグレは2人で他のクラスメイトに声を掛けようとするが、


「なぁ、オレ達と組もう――」


「ごめんなさい」


 なぜか、オレが近づくとクラスメイトが逃げていく。


「あれ? ひょっとしてオレ、避けられてる?」


「そりゃお前は試験で悪目立ちしてたからなぁ。いくら最後カッコつけたとはいえ、乗り物酔いするやつと組もうってバカはいない」


「お前それ、自分で自分のことバカって言ってるのと同じだぞ……」


「よーし、全員チームは組めたな?」


 ラメールが言う。


「いえ、まだオレ達は海竜騎手見つけられてません」


 オレが言うとラメールは、


「余ってる海竜騎手、居るだろ? 手挙げろ」


 ラメールが言うと、1人の女子が手を挙げた。

 あの緑髪の女子――試験で暴れ竜に乗っていた女子だ。


「私、余ってます……」


「アイツは……暴れ竜の!?」


 アイツは試験で大暴れしてたからな。

 誰も組みたがらなくて当然だ。


「そんじゃ、お前はこの2人のチームに入れ」


――マジで?


 クラスのひそひそ声が聞こえる。


「ゲロ吐きと暴れ竜が同じチームだってよ……」

「問題児チーム、ってとこね」

「あの黒髪の女の子、災難だな」


 その黒髪の女の子は嬉しそうに笑っている。


「いやぁ、こいつは面白くなってきた」


 緑髪の女子がオレ達の元へ来る。


「ど、どうも。ノラヒメ=マナティーと申します……」


「フレンだ。フレン=ミーティア」


「シグレ=シャーマナイトだ。よろしく」


「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします!」


 ノラヒメは深く頭を下げる。

 こうして、問題だらけのチームが誕生したのだった。


「これからはそのチームで様々な課題に取り組んでもらう。今日はこれで解散だ。それぞれ指定の寮へ行け」

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