第7話 いざ旅立ちの時

 自然豊かな田舎町〈フルベ町〉。

 その田舎町の上空を、卵の殻を頭に被った竜が飛んでいた。背中には、金髪の少年が乗っている。

 少年は巧みに竜を操り、家のポストに近づいて新聞を投げて投函とうかんしていく。


「ほい。これで全部終わりっと」


 少年の名はフレン。14歳。

 彼の竜、エッグルはすでに成体しており、背中に人間を2人は乗せられるほど大きくなった。

 2年前に帝国に襲撃された〈フルベ町〉だが、そんなこと、もう住民のほとんどが頭の片隅に追いやっていることだろう。すべては、1人の竜騎士のおかげである。



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「終わりました~」


 新聞の配達を終え、店に戻ると、店長が手をコネて近づいてきた。


「お疲れ様フレン君! いやー、君は素晴らしい! 君1人で町すべてに配達してくれるから、人件費が安く済む! 君はウチのエースだ!」


 まったく、2年前はクビにしたくせに。


「世辞は良いから給料ください」


「はいはい!」


 オレは店長から給料袋を受け取る。


「ちょっと色つけておいたから、これからもよろしくね♪」


「いや、オレは今日で辞めます」


「ほへ?」


「受験があるんで」


「えええええっ!!?」


 店長は全力で引き留めてきたが、全部無視して外に出る。

 空を見上げ、ある人を思い出す。


「……ソラ。今日はお前の母校の受験日だぜ」


 竜騎士専門学校〈ミッドガルド〉。6年制の学校だ。

 14歳から受験資格がある。オレは今年14歳、ようやく受験できる。

 この2年でエッグルといっぱい特訓してきた。自信はある。


「爺ちゃん!」

 

 オレは家に帰り、爺ちゃんに顔を見せる。


「試験、行ってくる!」


「おう! 絶対受かれ!」


「おうよ!」


 オレは外に出て、竜紋のついた右手を空に掲げた。


「エッグル、出てこい!」


「どら!!」


 その長い2振りの翼を広げ、エッグルが勢いよく飛び出た。


 エッグルに乗り、飛翔する。

 目指すは受験会場のある王都だ。


「行くぞエッグル……2年振りの王都だ!」


「どらどらぁ!!」


 オレ達は高く飛び上がる。

 あの日、最後に見たソラとコクトーのように。

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