第3話 7つの竜種

「シグルズ騎兵団所属ミズキ=リトパーズ。六つ星の竜騎士で、おもに海竜を操る。僕の同期だ」


 す、すげぇ美人だ……!


「そういえば貴方あなた、妹が居るって言ってたわね。この子がその妹ちゃん?」


「いいや、違うよ。彼は僕の命の恩人だ。っていうかどこから見ても男の子だろ」


「あら、可愛いから女の子だと思った。そっか、君がソラを助けてくれたのね」


 ミズキは右手の手袋を外し、オレの頭に手を乗せる。

 ちょっとひんやりとした感触が頭を撫でた。


「ありがとね。君のおかげで、貴重な戦力を失わずに済んだわ」


「い、いや。オレは別に……」


「照れてるの? やっぱり可愛い♪」


「彼の名前はフレン=ミーティアだ。今日は彼のパートナードラゴンを選びに来たんだよ」


 ミズキはオレの頭から手を離し、手袋を付けなおす。


「そうなんだ! それなら、お姉さんが一緒に選んであげる」


「いいや、それは悪いからいいさ。君は自分の仕事をするといい」


 ソラが笑顔でやんわりと拒否する。


「今日の私の仕事は市場の見回りだから、そのついでよ。貴方は竜を見る目がないんだから、私が手伝ってあげる」


 2人共笑っている。笑っているが、静かに火花が散っている。仲が悪いんだな。


「MOB! 開場します!!」


 男の大声と共に、MOBの門が開いた。

 人が波のようになって中へ入っていく。


「さっ! 行きましょう、フレン君」


「おう!」


 なにはともあれ、男2人で周るより、ミズキが一緒の方がずっとマシだな。


「やれやれ……」


 ソラは小さくため息をこぼした。


 

 ---



「うお~! 竜がいっぱいだ!」


 中は商店街みたいだ。

 多くの店が並び、竜を売っている。


「ところでフレン君は竜についてどれくらい知ってるの?」


「普通の子供よりは知ってると思う。爺ちゃんが竜医だからさ」


「それなら、竜の種族がどれだけあるかは知ってるかな?」


「えっと……蛇竜種、牙竜種、鳥竜種……ぐらいしか見たことないなぁ」


「あとは角竜種、亀竜種、二又種、三又種があるわ。竜種によって特性や性能が全然違うの。最低限、これは押さえておかないとこれからの話にはついていけないわ」


 ミズキは書類の束から一枚の紙を取り、オレに渡す。


「はい。竜種についてまとめたプリントよ」


 紙には7種類の竜について詳しく書いてあった。




――――――――――――――




蛇竜じゃりゅう

【特徴】

蛇のような頭を持つ竜。微弱な体温を察知できるピット器官と優れた持久力を持つ。

【ステータス】

速度C 持久力S ブレス性能C 体格C 体強度D


鳥竜ちょうりゅう種 

【特徴】

鳥類の頭を持つ竜。バランスの良いステータスを誇る。他の竜種に比べ眼が良く、視界が広い。

【ステータス】

速度B 持久力B ブレス性能C 体格B 体強度C


牙竜がりゅう

【特徴】

トカゲに似た頭を持つ竜。人間で言うこめかみの位置に生えた2本の角が背中方向に向かって伸びている。一番の特徴は発達した牙で、岩を容易く嚙みちぎれるほどだ。ブレス性能と飛行能力も高水準。

【ステータス】

速度A 持久力C ブレス性能B 体格C 体強度B


角竜かくりゅう

【特徴】

顔は牙竜種と同様。しかし牙竜種と違い牙は他の竜種より少し発達してる程度だ。角も1本で、角竜種は額から伸びた角が真っすぐ正面に向かって伸びている。角の長さは牙竜種の約3倍の長さを持つため、角竜と呼ばれる。角の強度・切れ味は凄まじく、狩りの際は角で獲物を貫く。肉体のほとんどが筋肉で出来ており、骨の数も他の竜種より多く、放射袋ほうしゃぶくろが骨と筋肉に締め付けられ十分に伸縮できず、ブレス性能は低い。

【ステータス】

速度A 持久力A ブレス性能E 体格B 体強度A


亀竜きりゅう

【特徴】

亀のような頭を持った竜。強靭な鱗と円盤状の甲羅を持つ。鱗や甲羅が高密度かつ重いため速度はないが、圧倒的な防御力を誇る。

【ステータス】

速度E 持久力C ブレス性能B 体格S 体強度S


二又ふたまた

【特徴】

首と放射袋を2つ持つ竜。人間で言う一卵性双生児と同じ確率で産まれる(なお、竜には双子は存在しない)。増えた首を支えるため、体が大きくなる傾向にある。増えた首と、大きくなった体格のせいで速度と持久力が減少する。ブレス性能はベース竜種の単純に2倍になるため、火力は高い。ベースとなる竜種によってステータスは変動する。

【ステータス(ベース鳥竜種の場合)】

速度C 持久力C ブレス性能A 体格A 体強度C


三又みまた

【特徴】

首と放射袋を3つ持つ竜。産まれる確率は0.1%以下のかなりレアな竜種。1匹単位数億で取引される。ブレス性能はベース竜種の3倍になる。

【ステータス(ベース鳥竜種の場合)】

速度D 持久力D ブレス性能S 体格S 体強度C

 



――――――――――――――



 さっと読んでみたが……。


「覚えきれねぇ……」


 帰ってから読み込もう。


「フレン君は飛竜と地竜と海竜、どれにするつもりなの?」


「飛竜! 絶対飛竜! 空を飛びたいんだ!」


 正直飛竜ならなんだっていい。


「それなら、鳥竜種がおススメかな。ステータスのバランスが良いわ」


「僕は断然、牙竜種がおススメだ。七つの竜種の中で、角竜と並んで一番速いからね」


「速さを優先するのはどうかしら? 牙竜種は速すぎて、振り下とされる事故も多々あって危険よ。竜はバランスが大事!」


「スピードの速い竜を乗りこなした時の快感を知らないようだね……」


 再び火花を散らすソラとミズキ。


 ソラはミズキから視線を切り、一歳竜が檻に入れられ並べられている店に足を運ぶ。


「ここが僕のおススメの店だよ。飛竜専門の店さ」


 ミズキは商人の1人に声を掛ける。


「すみません。ここに居る竜の血統表はありますか?」


「ミズキ。君はまた……」


「血統表ってなんだ?」


「血統が載っている表さ。親とか祖先の情報が載ってるんだよ」


「そんなの見てどうするんだよ?」


「彼女は血統主義なんだ。親が優秀なら子も優秀、親が駄目なら子も駄目って考え方なんだよ。100%間違っているとは言えないけど、あまり好きな考え方じゃないな」


「聞こえてるわよ」


 血統表を持ったミズキが戻ってきた。


「実際、5つ星以上の竜騎士が乗っていた竜の子供は高確率で優秀なのよ。歴史が血統を肯定している。竜は血統で選ぶものよ」


「いいや、竜はインスピレーション、感性で決めるものだ」


 なるほど。根本から考え方が全然違うんだな。


――ドクン。


「ん?」


 ドクン、ドクン……。


「嘘だろ……」


 檻に居る赤色の竜。牙竜種の飛竜の腹から心臓の音が


「ソラ!」


「ん? 興味のある子でも居たのかい?」


「違う。あの赤色の竜を見てくれ!」 


 ソラとミズキは赤色の竜を見る。


「あの竜の腹から心臓の音が聞こえる。きっと腹に子供が居るんだ!」


「なんだって!?」

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