第8話

「まず、君は本当にトラコ様なんですか?」

『あたし、トラコ』

「なんでそんなお姿になってしまわれたんですか?」

『知らにゃいっ』

「どうやったら猫の姿に戻っていただけます?」

『分からにゃいっ』


 根古田博士はトラコに思いつく限りの質問を浴びせたが、トラコの返答は『知らない』『分からない』といったものばかりで、状況は一向に進展しなかった。


 なぜいきなり人間の姿に変わってしまったのか?

 私が愛しているのは猫の姿のトラコ様なのに……


『あのにゃ?』

「はぁ?なんでしょう?」

『根古田博士、話し方がウザイにゃ』

「ウザイとはなんですか?私はこんなにあなたの事を想っているのに……」

『まず、様ってヤメロ!気持ち悪いにゃ』

「様?トラコ様はトラコ様ですぞ?猫様には最大限の敬意を表し……」

『オマエ、ソレで猫に好かれたことあるのかにゃ?』

「……そ、そん、そんなことは……」

『あるのかにゃ?』

「た、確かに私は猫様と触れ合う機会はないが」

『ソレな、根古田博士の全身から漂う気持ち悪さのせいなんだにゃ』

「な、それはどういうことで?」

『オマエ、猫を見る目がフツーじゃにゃい』

「フツーじゃないとは失礼な……」

『オマエ、猫のお尻の匂い嗅ぎたいとか思ってるクチにゃ?』

「な、な、なんでそれを……」

『目だにゃ、その目が変態の目だにゃ!!』


 なんということだ、私が猫に愛されてこなかったのは私の想いが強すぎたからなのか?





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