第6話
根古田博士は狼狽えていた。
ネットで購入した怪しげな媚薬の取り扱い説明書を見ると、『ペットには与えないで下さい』との注意書きがあったからだ。猫に愛されたくて買ったのに、猫には使えないことを知り、愕然とした。五万円が無駄になってしまったと落胆した。
根古田博士はトラコの寝顔を見るのが好きだった。もちろん起きてごはんを食べたり遊んでいる姿を見るのも好きだったが、寝顔は格別だった。起きている時はトラかライオンか獰猛に見える瞬間があるトラコも、寝ている時は本当に天使のように思えた。
根古田博士は別に研究者ではないので、特別な知識などは持っていなかった。そもそも高卒の彼が、何故博士と呼ばれているのか、それは単に彼の名前が『ねこたひろし』だからだ。なので彼は研究者でもないし研究もしない。そのような高尚な人物ではないのだ。
根古田博士はトラコに使おうと思っていた媚薬を冷蔵庫入れて保管していた。彼には友達がいない。もちろん彼女なんていなかった。媚薬を使う相手がいないのだ。そうして、根古田博士はその媚薬の存在すら忘れてしまった。
その媚薬の取り扱い説明書には、『冷やさないでください』との注意書きもあったが、根古田博士はその文章を見落としてしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます