第4話
根古田博士とトラコの生活は波乱にまみれていた。
トラコはよく鳴いた。
根古田博士はその鳴き声をアプリを使い翻訳した。
トラコの話す内容は大きく分けて四種類あった。
『お腹空いたごはんちょうだい』といった訴えと、『おしっこしたいうんこしたい眠りたい』という生理現象と、
『こっち見んな、うざい、消えろ』という根古田博士への不満、
『ママに会いたい』という欲求だった。
このアプリは不良品だ。
根古田博士は気付き始めていたが、考えないようにした。少しでもトラコと繋がっていたくて、都合のいい部分だけを受け取るようにした。
間違ってもトラコ様は、私にうざいなんて言うはずがない、トラコ様は天使のような女の子、汚い言葉遣いなんてする訳がなかろう。
トラコが根古田博士の研究室に来てから、二ヶ月が経った。すっかりと元気になり、体も大きくなり、すくすくと成長していた。
トラコは、イタズラを覚えた。もちろん本人にとってみれば単なる遊びの一つだったが、根古田博士の研究室は日に日に足の踏み場もないくらいに散らかっていった。中でもトラコはトイレットペーパーが大好きだった。トイレットペーパーを追いかけ回して、部屋中ペーパーで埋まるほどにペーパーを引きずり回した。
根古田博士は無職だった。
親の遺産を食い尽くす日々だったが、親がお金持ちだったおかげで働くことなく生活することが出来ていた。
根古田博士は、野良猫を探し回る日々を送っていたが、トラコを拾ってからというもの、基本的に研究室に籠るようになった。生活必需品はネットで購入して届けてもらう。買い物に行く時間がもったいない。ずっとトラコと一緒にいたかったのだ。
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