第6話婚活再開
仕事の流れをひと通り覚えた頃になって、やっと婚活を再開した。
そして活動のメインに、いわゆる出会いアプリを利用するようになった。だっちゃんの勧めだ。
アプリをスマホにインストールしてログインすると、男たちの写真が画面いっぱいにズラっと並んでいて、出来の悪いホストクラブのようだ。
日本全国で何十万人もの登録者がいるので、とてもじゃないけれど全ての男性を見ることは出来ない。出身地や勤務地、年収や学歴、年齢や身長、ログイン時間等でソートをかけて再検索すると、ある程度全体を把握できる人数になってきた。
検索項目には、初婚かバツがついているか、長男かそうでないか等の多種多様なものがあって、世の中の需要も色々あるのだろうと思った。
ひとまず写りの悪くない自分の写真をアップロードして、自己紹介文を書き込んだ。
「たまにさ、「常識の無い方お断り! 」みたいなこと書いてる女の子いるんだけど、まともな男は逃げるから、そういうの書くの止めた方が良いよ。」
だっちゃんが隣から覗き込んで来た。
「ちょっと、勝手に見ないで! で、何で? 私も常識の無い方お断りなんですけど。」
「例えば「男はおごるのが常識! 」って思ってる女の子は沢山いるけど、そういうのって男からしたら飽くまで厚意じゃん? こんな感じで、男と女の常識って結構違うから、その人自身の常識を押し付けて来そうだなって思ったら、まともな男ほど逃げてくんだよ。」
「なるほど。」
だっちゃんは非モテだけれど、言ってることにはそれなりに説得力があった。アドバイスに従ってプロフィールを作成すると、間もなく数十人もの男たちからアプリ上で「イイネ」を貰った。
「イイネ」を貰った場合、これに応じるとアプリ上でメッセージを交換することができるようになる。仲良くなったらLINEを交換したり実際に会ったりする等して親睦を深め、上手くいけば交際にいたるという流れだ。
婚活パーティや合コンではわざわざ現地に赴かなければいけないし、場合によっては参加費用を支払わなければならない。その上、あらかじめ知っていれば絶対に付き合いたくない条件を持つ相手とも、場の空気を取り持つために無用な会話をする必要がある。
アプリであれば家に居ながら無料で多数の男性と連絡先を交換することができるし、異性の条件を一目瞭然にスクリーニングすることができる。そういう意味で、婚活を進めていくのにアプリは効率が良いと思った。
「結婚相談所も同じような仕組みで相手を探すことになるから、出会いアプリを使うなら個人的には結婚相談所は要らないと思うよ。」
「え、ちょっと待って。だっちゃん、結婚相談所に行ってたの? ヤバ。まだ27歳だよね。必死じゃん。いくらムダにしたのよ。」
「27歳だが? 必死に決まってるじゃん、出会いは人生だぞ? 結局20万円くらい遣ったかな、半年くらいで辞めたけど。」
全く恥ずかしげもなくそんなことを言うだっちゃんに、私は笑いを堪えることができなかった。
「バーカ! 非モテ! 」
「さすがにウザすぎる。もう手伝ってやらないから! 」
「あー、ごめんよ、言いすぎたよ~。」
だっちゃんもつられて笑いながら、「本当に、バカだよね。」と呟いた。
だけど彼の言う通りだ。これから出会う相手次第で、私たちの人生は良くも悪くも変わってしまう。必死になってむしろ当然なのだった。とりあえず、警察官だけは絶対にお断りだ。
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