第7話 隣の席の小野さんはヘンタイでした

 翌日、目が覚めると小野さんの姿がなかった。

 ……あれ。


 どこへ行ってしまったのだろうか。


 もしかして昨晩のアレは夢だった……? まさかな。


 部屋を出てリビングへ向かうと人の気配があった。台所の方で物音が聞こえるな。



「小野さん、いるのか?」

「おはよ、大久保くん」

「なにしているんだい?」

「朝食を作っていたの。はい、コーヒーとタマゴサンド」


 なるほど朝食を作ってくれていたのか。

 これではまるで奥さんじゃないかっ。

 ちょっと照れ臭いな。


「ありがとう」

「奥さんって思った?」


「っ! お、思ってないし!?」

「あ~、顔が赤いよ?」


 くそっ、人の心を勝手に読みやがって!

 けどいいや。朝から小野さんの顔が見れて新鮮だ。本当に一泊を明かしてしまったんだな、俺。


 それにしても、夜は何もなかったな。


 もっとヘンタイ行為があるのかと、ほんの少し期待していたのだが。


 リビングに戻って朝食を頂く。


 ……タマゴサンド、うまっ……。


「小野さんって料理うまいね」

「でしょ? お嫁さんにするならバッチリだと思う」

「……そ、それは……そうだな」

「うんうん。結婚しようね」


「付き合ってもないのに気が早すぎるって」


 朝食を食べ終え、ぼちぼち学校へ行くことになった。そういえば、小野さんはずっと制服姿だったな。

 本格的に俺の家に住むのなら……着替えとか欲しいよな――って、俺は何を考えているんだ! それでは俺がまるで小野さんとの同棲生活を望んでいるみたいじゃないか!


「どうしたの、大久保くん」

「い、いや……」

「当ててあげよっか」

「無理だろ」


「えっとね、その顔は――うん、わたしと同棲したいって顔」


「だから、なんで分かるんだよ!?」

「企業秘密」


 なんだそら。

 けど、小野さんと一緒にいるのは退屈しない。ドキドキするし、ハラハラもするけど……安心感があった。



「そろそろ学校へ行きますか」

「今日から一緒に登校だね」

「そうだな。周囲から勘違いされちゃうかもな」

「いいよ。わたし、大久保くんと付き合っていることになっても嬉しいよ」

「いいのかよ。じゃあ……付き合う?」


「うん」


 そんなひとつ返事で小野さんは同意した。いいのかよ!! アッサリしすぎだろう! 

 俺は告白っていうよりは、かなり冗談で言ったつもりだったんだがなぁ。



 自宅を出て学校を目指した。



 小野さんと共に新しい生活が始まったんだ。

 この日から俺と小野さんは同棲のような生活を始めた。彼女は生活用品を持参して住むようになったんだ。


 これって付き合っているってことなのかな。


 経験の浅すぎる俺には、よく分からない。

 でも、楽しい。とても楽しい。


 こんな生活がずっと続けばいい。



 ――隣の席の小野さんはヘンタイでした。



【完】



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隣の席の小野さんはヘンタイでした 桜井正宗 @hana6hana

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