第6話 おやすみなさい

 小野さんとの生活は続いた。

 部屋に戻って扉を閉めても無駄だった。小野さんは何がなんでも侵入してきたのだ。結局、一緒に過ごすことになった。


 ……なぜ、こんなことに!


「小野さん、もう時間も遅いよ。帰らないと」

「泊まっちゃだめ?」

「……泊まる気なのかい。でも、家族が心配するでしょ」

「大丈夫だから」


 なにが大丈夫なのだろう。

 本人が良いのなら良いのだろうけど……けどなぁ。


「えっちな動画はナシだよ」

「……分かった。その代わり、泊まるからね」

「こうなったら仕方ないな。部屋を貸してあげるから、そっちで寝てくれ」

「ううん、大久保くんの部屋でいいよ」

「ちょ!?」


 一緒に寝るってこと!?

 こんな美少女と一緒に寝るとか無理無理!! 緊張しすぎて寝不足になること間違いない。想像しただけで眠れなくなった。


 だが、小野さんはそれでもと食い下がった。頑固だなぁ!


 就寝時間までゲームをして時間を潰した。……とりあえず、えっちな動画を見ずに済んだな。


「……そろそろ寝るか」

「うん、添い寝してあげるねっ」


 床に作った布団に入ると、小野さんも接近してきた。せっかくベッドを譲ってあげたのに……意味ねぇ~!


「小野さんはベッドで寝てくれ」

「大久保くんをぎゅっとして寝たいの」

「それは簡便してくれよ。俺の身が滅ぶから」

「え~」



 え~、って言われてもなぁ。

 これ以上は譲歩できないのだ。

 ここは心を鬼にして俺は眠ることに。


 だが、小野さんはゴソゴソと侵入してきた。



「うわ! 近いって……」

「大久保くん、寂しいよぅ~」


「……そんな子供みたいに」



 部屋の明かりを消して、俺は背を向けた。貴重な睡眠時間を削るわけにはいかない。こうするしかないんだ。


『……ゴソゴソ、ゴソゴソ』


 しかし、這う音がして背中に柔らかいモノが振れた。ま、まさか……!


「大久保くん、今日はありがとね」

「小野さん……。いや、いいよ。まさか一緒に寝ることになるとは思わなかったけどさ」

「強引に押しかけちゃってごめんね。でも、わたし……大久保くんのことがもっと知りたくて」


 少し――いや、かなり大胆に知られているけど、美少女からこうされるのは……正直、悪くなかった。ちょっと快感さえあった。ヘンタイで良かったかもしれない。


「俺のことかぁ。俺なんて魅力ないと思うけどなぁ。割と陰キャな部類だし」

「そんなことない。君には特別ものがあるんだよ」

「特別なもの?」

「う~ん、今は内緒」


 なんだそりゃ。

 聞いてみたかった気もするけど眠くなってきた。小野さんの体温がコタツのように心地よかったからだ。ついでに……いろいろ柔らかいし。


 案外、背を向けていれば大丈夫だな。


 睡魔に襲われた俺は瞼を閉じていく。


 ――おやすみなさい。

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