第14話 小鳥無双☆レディースチームの対決③
「て、てめええ!」
「何してくれてんだこらぁ!?」
「コロスゾこらぁあ!」
呆然と見守っていたレッドローズのメンバー30名は、リーダーを一撃でやられ、怒りを帯びて小鳥に詰めて寄ってきた。
「あ、あいつ…神崎だ…」
そんな中で小鳥の姿を見た少女の一人がボソリと言ったが、その言葉に何人かが反応した。
「え?神崎ってあの…」
「うそ?マジで??」
何名かのレッドローズのメンバーが明らかに動揺した。
「は?だれ?」
「な、何その神崎っての?」
「芹沢って言ってなかったか?」
初めて神崎という名前を聞いたレッドローズメンバーは、何か訳ありな感じの言い方に動揺が走った。
「間違いない!あ、あいつ…下神楽中の神崎小鳥だ!女子中学生なのに大人の男でも敵わないっていう…」
「ほ、本当だ!アタシも見たことある!あいつ神崎だ!」
悲鳴に近い叫び声が境内に響いた。
「ふーん。アタシの事知ってんだ…。困るんだよねぇ…。高校のクラスメイトが居るんだからさ…」
小鳥の雰囲気がガラリと変わって、無表情になり目の色が灰色がかって見えた。
小鳥はそう言うとスタスタと歩いて、小鳥のこと知っているというレッドローズのメンバーの前に行った。
「ねぇ、それってアタシ?ねぇ?本当にアタシだった?本当に?」
小鳥は無表情のまま、神崎という名を呼んだメンバーに聞いた。
「ひ、ひぃ!」
無表情の小鳥が目の前に来ると、その冷たい目と美しい顔がまるで雪女や妖怪のように妖しく美しかった。
「うわあああああ!」
恐怖に駆られた一人のメンバーが小鳥に殴りかかった。
小鳥は軽く身を引き足を出すと、殴りかかった少女はその足に引っかかり転んだ。
小鳥はふわりとそのこの前に来ると、お腹に手を当てるとそのままドンと押し込んだ。
「かはぁあああ!!!あああああああああ!」
少女は目を大きく見開くと、呼吸ができずにもがき苦しんだ。
小鳥は無表情のまま苦しむ少女を見下ろしていた。
「お、お前!!神崎ぃ!!!」
少女の一人がそう言うと、隠し持っていたナイフを震える手で持った。
「ちょ!ダメ!!ナイフ出しちゃダメ!」
小鳥を見たことのあると言ったレッドローズのメンバーの一人が叫んだ。
小鳥は一直線にナイフを持った少女の前に、物凄いスピードのまま迫ってきた。
「ひぃッ!」
少女は思わずナイフを前に顔を背けた。
小鳥はナイフをパンと手で払うと躊躇なく少女の肘を自分の腕に押し当てるとぐいっと力を入れこんだ。
ボキッと嫌な音が境内にはっきりと響いた。
「いやあああああああ!」
次の瞬間には少女の腕はありえない方向に折れ曲がっていた。
「うああああああ!」
「きゃああああ!」
「た、助けてええ!」
それを見た少女たちは恐怖のどん底に突き落とされたかのように、叫ぶと散り散りに逃げようとした。
小鳥はナイフを拾うと、それを無表情のまま、腕を折った少女の前に行きそのまま振り下ろした。
「い、いやああああ!」
少女は痛みを忘れ恐怖のあまりに目を閉じると、そのまま意識を失ってしまった。
「うふふ。そんな事するはず無いじゃん…可愛い顔が台無しになっちゃう…」
小鳥は無表情のまま声だけ笑い、ナイフを少女の顔面の寸前で止めていた。
「アイツに武器を向けると、確実に致命傷を負わされる!皆武器を出しちゃダメ!」
誰かがレッドローズのメンバーに叫んだ。
「こ、これは…」
目を覚ましたレッドローズ総帥、氷室葉瑠は、この状況を理解するのに数分を要した。
「氷室さん、ここは一旦引きましょう」
タイマンの先鋒であった美玲がいつの間にかやってきて、氷室葉瑠に言った。
「おい!東金!この勝負なしだ!皆帰るよ!」
小鳥に殴られてフラフラ状態の氷室葉瑠は境内に響き渡る大声で叫んだ。
レッドローズの30名のメンバーは、その声を聞くとバイクに乗り込むとそのまま夜の闇へと一斉に消えていった。
「てめぇ。覚えてろ!」
氷室葉瑠はさり際、小鳥に向かってそう言った。
だが、その瞬間小鳥はまるで瞬間移動してきたかのように、一瞬で氷室葉瑠の腕を掴むと、目の前に顔を突き出してきた。
「ねぇ、アタシはあなたの何を覚えておけばよいの?いつ何をしてくれるの?なんで今じゃないの?なら今やりましょうよ。ねぇ!ねぇ!ねぇ!」
小鳥はガッチリと氷室の腕を掴むと、ピクリとも動かなくなった。
「う、うわあああ!」
氷室葉瑠は目の前にある小鳥の顔に恐怖を覚えて腕を振り回そうとしたが、全く動かなかった。
「あなたの事。覚えたよアタシ…。これから調べるね。だって友だちになるんでしょう。あなたのお家、あなたの家族、あなたの友達、あなたの好きなもの、あなたの好きな食べ物、あなたの好きな服、あなたの好きな歌、あなたの親戚、あなたの嫌いなもの、あなたの嫌いな食べ物、あなたの嫌いな歌、あなたの全て…。アタシ徹底的に調べるからねぇ。そしたら本当のお友達になれると思うの…」
無表情のまま、小鳥は氷室葉瑠に向かって言うと、静かに手を離した。
「い、、いやあああああああ!」
氷室葉瑠は、人生で初めて本当の恐怖をここで知ることになった。
転がるように逃げ出すと駐車場にあったバイクに跨ると、そのまま泣きながら逃げていった。
呆然としているホワイトバレットの5名は、何も言わず何もできずにその場に立っていた。小鳥は氷室達が去ったのを見届けると、笑顔のまま戻ってきた。
「ゴメンナサイ。ちょっとお洋服が汚れちゃったから、ライブまた今度見に行きますね!」
小鳥はあずさに向かってそう言って頭を下げた。洋服は何一つ汚れていなかった。
「あ、あの芹沢さん!」
星羅は小鳥に声を掛けた。
「星羅ちゃん。ごめんねぇ〜。アタシ、なんかシークレットライブかとおもってさ…」
「ウソ!芹沢さんの入れてっていったアプリ、場所が分かるやつでしょ。だから来てくれたんでしょ!?私だって聞いたことあるよ…下神楽中の神崎って人の話…」
星羅は小鳥に向かって叫ぶように行った。
「…。さぁ?何のこと?」
小鳥はそう言って、ニッコリと笑った。
「ありがとう!芹沢さん!」
星羅はそう言って小鳥に頭を下げた。
「あー、いや、アタシそんなにいい人じゃないし…。ねぇ、星羅ちゃん。今日ここで見たこと。学校の人達には黙っておいてくれない?ほら、アタシこんなの嫌だし…」
小鳥はそう言って無理やり笑顔を作った。
「そんなの…。当たり前だよ!助けてもらったんだし…」
「本当?」
「本当だよ!」
「じゃあ、友達なら嘘つかない?」
「つかないよ!絶対!」
「友達なら芹沢さんじゃなくて、小鳥って呼んでよ!そしたら信じる!」
「え?…そんな事で…」
「大事なことだよ!」
小鳥はそう言って、星羅の前に来て食い気味に言った。
「わ、わかった…。ことりちゃん…」
星羅がそう言うと、一気に嬉しそうな顔をして笑った。
「じゃあ、アタシはもう行くねぇ!」
小鳥は満足したのかそう言うと、その場から走り出そうとした。
「あ、あの!」
側に居たあずさが小鳥に声をかけた。
「どうも!ありがとう!なんと言っていいか…」
あずさはそう言うと、頭を深々と下げた。
「いやだなぁ。そんな事より、今度ライブ行かせてくださいね!1回行ってみたかったんです!」
そう言うと小鳥は大袈裟に手を振って境内の外に出ていってしまった。
星羅は思わずそのままぺたりと座り込んでしまった。
「っ……。」
そのまま泣き出してしまった。
「星羅。怖い思いさせてゴメン」
そう言って、あずさは星羅を抱きしめた。星羅は子供のように泣きながらあずさにしがみついた。
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「あはははは!最高じゃん!あれ最高じゃん!」
青き堕天使の総長、天塚きららは思わず笑わずに居られなかった。
今日見たこと。
突然現れた強烈に強い女の子。
底の見えない強さに痺れた。
「次は僕だよ。漸く会えたよ!僕の運命の人!僕の番だよ!神崎小鳥ちゃん!いや、芹沢小鳥ちゃん!あははは」
一人離れバイクを走らせながら夜空に向かって大笑いするのだった。
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