第11話 女子の嗜み☆メイクアップなのだ!
「ねぇねぇ。芽衣ちゃんちょっと来てー」
「え、う、うん…」
「芽衣ちゃんさ、絶対メイクしたらカワイイって!ね!アタシ達がメイクしてあげる!」
「え、私は…別に…」
「良いから良いから!遠慮しないで〜!」
どうしよう。絶対わざとだ…それは分かってるのに、断り方がわからない。
放課後の教室にたまたま残っていたクラスメイトの中で一番大人しそうな芽衣がターゲットにされたのだ。
クラスの割と目立つ女子生徒3人が芽衣に声をかけると、強引にメイクを始めた。
「きゃはは!カワイ〜!」
「ねぇねぇ!これこれ!似合ってるよ!」
「はーい。チーク強めに〜」
「はい!できた!」
女子三人は芽衣に鏡を見せると爆笑した。
「!!?」
芽衣は鏡に映った自分の姿に思わず目を背けたくなった。
子供が人形相手にやりそうなメチャクチャなメイク。
単に顔に色を付けて、目や口を際立たせただけのピエロのような自分の顔を鏡で見せられて芽衣は思わず下を向いた。
「え〜!?ちょっとイメージと違った!?」
「ちょーかわいいよ!ねぇ!」
「ほんとほんと!」
女子生徒さん人は愉快そうに芽衣を笑った。
「ねぇねぇ。こんなに芽衣ちゃん可愛んだからさ!男の子に告白してみたら絶対上手くいくよ!」
「ほんとほんと!私だったら絶対にOKしちゃう!」
「ねぇ芽衣ちゃん!このクラスなら誰が一番良いなって思う?」
芽衣はクラスメイト3人の悪意ある言葉を感じつつも言い返せなかった。
「ねぇねぇ!じゃあ、この子は!?」
「えっとねー芽衣ちゃんに似合いそうなのは…うーん」
「あ、じゃあ。サッカー部の小倉くんは?カッコいいし!良いじゃん!」
3人は芽衣を無視して勝手に話をしている。
「あ、あの私は…別に…」
芽衣はこの話が早く終わって、この場から離れたかった。
「ねぇ、盛り上がってきたんだし!」
「ここで止めるのとか、寒くない?」
「ねぇ!芽衣ちゃん!ここ勝負どこだよ!ノリで行けるって!」
3人の女子生徒は芽衣に何かをやらせるまで帰る気はなさそうだった。芽衣は言い返せずに、下を向いた。泣きたい気分だった。
そんな時、いきなりドアが開いた。
「あー!何々?何やってんの?メイク?ねぇ?メイク?」
かなりのテンション高めの聞き覚えのある声。芹沢小鳥の声だった。
「あ…」
「!?」
「あ、芹沢さん…」
小鳥の突然の登場に3人の女子生徒は、明らかに戸惑っていた。
小鳥は走るように近づいてくると、下を向いている芽衣を見つけた。
「あー!芽衣ちゃん!メイクしてもらってたの?」
小鳥は脳天気に名に声をかけた。
芽衣は泣きそうな顔をして顔を上げた。そこにはピエロのようなメイクの芽衣があった。
「え!?なにこれ?」
小鳥は芽衣の顔を見ると、キョトンとした顔をした。
「ふーん。これが最近の流行りかぁ…」
小鳥はぼそっと言うと、いきなり3人の方を向いた。
「ねぇ!アタシにもメイクしてよ!」
小鳥は3人に向かって、笑いながら言った。
学校の話題を一人でかっさらう超絶美少女の小鳥が、メイクをしてくれと言うこと自体あり得なかった。3人の女子生徒たち自分たちのイタズラを小鳥に見られたことで、気まずい雰囲気になっていた。
「あ、いや…。ちょっと冗談というか…」
「あの、芹沢さんのメイクなんて…そんな…」
「あー、ちょっと似合う道具ないかなーなんて…」
女子生徒たちは後ろめたさもあって、小鳥の目を見ずに小さな声で言った。
「ふーん…。芽衣ちゃんにはメイクしても、アタシにはメイクしてくれないんだ…。なんか切ないなぁ…」
小鳥はそういうと、無表情で3人の顔をじっと見た。
超絶美少女にこう言われて、3人の女子生徒達は居た堪れない気分になった。
「あー、ごめん芹沢さん。ちょっと今日は時間無いの!ま、また今度ね!」
「そ、そうだった。ちょっと用事、あったな〜あはは」
「ご、ごめん。芹沢さん。芽衣ちゃん!またねぇ〜」
そういうと、女子生徒3人は慌ててバッグを手に取ると逃げるように教室から出ていってしまった。
「あー、行っちゃった…」
小鳥は女子生徒が出ていった先を見ていた。
「あ、あの…ありがとうございました…」
芽衣は小鳥にお礼を言った。
「え?何?なんで?」
小鳥はびっくりした顔を芽衣に向けた。
「だって…助けてくれたから…」
「は!?アタシが?芽衣ちゃんを?いつ?何で?」
「え…あれ?」
小鳥は本当に分かっていないようだった。
「ねぇねぇ!そんなことより!」
小鳥はウキウキした顔で、ガサゴソと自分の鞄を漁りだした。そしてどんと小物入れのような袋を出すと、そこにはメイク道具一式入っていた。
「ねぇ!これ!これでメイクしよ〜」
小鳥はウキウキ顔で見せてくれたのは、新しいメイク道具のセットであった。
「……。」
何も言えずに呆然とした顔を芽衣はした。
「ねぇ。実はアタシあんまりメイクの事知らなくてさ。今日放課後、隣のクラスの子に教えてもらうつもりだったんだけど、なんか居なくてさ。ねぇねぇ!ちょっと二人で試してみない!?」
小鳥はハイテンションで芽衣に言った。
「え?私が?芹沢さんのを??」
「ん?他に誰が居るの?」
「だって私!全然…おしゃれじゃないし…」
「んー。そんな事ないよ。ていうかさ、実はアタシ、全然わかんないんだよねー。てか、下地って何?いきなりグロスって何?」
小鳥が言う言葉に、ウソは見当たらず、芽衣は混乱した。
確かに小鳥はあまり化粧をしているイメージはないが、整った顔立ちからか当然キレイなメイクをしているものだと思っていたからだ。
「ねぇねぇ!お願い!芽衣ちゃん!」
「あの…私もお姉ちゃんに少し聞いただけで、全然詳しくないんだけど…」
「いいのいいの!アタシは基本が知りたいの!」
「じゃ、じゃぁ、少しだけ…」
芽衣は自分のピエロメイクのことも忘れて、小鳥の勢いに負けて頷いた。
「ヤッター!ありがとう!」
小鳥は大げさに喜ぶと芽衣に抱きついてきた。芽衣はびっくりしながらも、何だか救われたような。ホッとした気分になった。
「あの、じゃぁ、下地から…」
そういうと芽衣は小鳥の持ってきた化粧品を選んで言った。
芽衣は小鳥の顔に、姉に習った通りの簡単なメイクを施した。ほんの少しだけ色の入ったチークを入れて、少し明るめのグロスを塗った。
たったそれだけなのに、小鳥の顔はため息が出るほど美しかった。
「キレイ…」
芽衣は思わず呟いた。
「え?何々?どうした?」
メイク中ずっと黙っていた小鳥はその言葉に反応し、目を輝かせた。
「おおぉぉぉ!?これがアタシ?」
小鳥は少しだけのメイクでもその美しさが際立って見えた。
「うん…。すごい…キレイです…」
「凄い!凄いよ!芽衣ちゃん!」
小鳥は手鏡を見ながら興奮気味に言った。
「ちょっと化粧しただけで、ぜんぜん違うじゃん!」
小鳥は興奮気味に芽衣に言った。小鳥は立ち上がると興奮そのままに芽衣を抱きしめた。
芽衣は驚きと同時に自分のメイクが小鳥につかないように顔を背けた。
「あー、ごめん!メイク崩れちゃうもんね!」
小鳥は芽衣が顔を背けたことを、勘違いして言ってきた。
芽衣はその言葉聞いたら思わず笑ってしまった。あまりにも純粋で、それでいて穏やかで、そして全てを包み込んでくれるような小鳥の声を聞いているといつの間にか涙が流れた。
「え?ちょ?芽衣ちゃん?どうしたの!?」
小鳥が慌てて芽衣に聞いた。
と、そこに教室に誰かが入ってきた。
「ちょっと!こと!アンタまた勝手にメイクセット持ち出したでしょ!」
背の高い隣のクラスの男子生徒だった。小鳥とよく一緒居るのを知っている。
男子生徒は、小鳥と芽衣の顔を見ると驚いた表情を浮かべた。
「こと。アンタ何やってんの…マジで…」
男子生徒は呆れ顔で、小鳥に言った。
「ちょ!違うわよ!うー、メイク道具は私だけど、メイクは違うわよ!」
小鳥は男子生徒に弁明するように言った。
男子生徒は芽衣に向かっていった。
「アナタも嫌なら、「嫌」ってちゃんと言わないと、わからない馬鹿な子もいっぱいいるからね」
そう言うと小鳥をきっと睨みつけた。
「ちがうよー!キザ!もう!てか、アタシも今流行で、こういうメイクがあるかと思ったもん!」
小鳥は何か言いたげに不満げな声を上げた。
「ほら。そんな顔で居るとみっともないよ…」
木崎傑はそういうと、芽衣を座らせるとクレンジングを手に取るとなれた手付きでメイクを落とし始めた。小鳥の誤解を溶けるのに数分要した。
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「流行りとかは変わるけど、化粧の基本は変わらないよ」
木崎は芽衣に手鏡を渡しながらそう言った。
「わぁ!凄い…」
芽衣はぱっと顔をあげると自分で驚きの声を上げた。
「ね!キザ凄いでしょ!ふふん!」
小鳥は自分の手柄かのように自慢した。
「アンタは化粧に興味持つことは良いけど、基本から知りなさいよ!とんでもなく不器用なんだから!」
傑はそう言って小鳥を叱った。
「だって…」
口を尖らせて、何か言おうとする小鳥を見て芽衣は思わず笑ってしまった。
「仲良いんですね…」
「そうだよ〜。幼稚園からの仲なんだよ〜」
小鳥は木崎傑の腕を組むと、そう言ってピースサインをした。
まるでイケメン俳優と美人女優のカップルかのように、二人共眩しく見えた。
「この子、誤解もされるけど良い子だから仲良くしてあげてね」
傑は小鳥の腕を振り払いながら言った。
「そんな…私なんて…」
芽衣が気後れしてると傑が言った。
「ねぇ。化粧したら見た目は変えられるじゃない。でも中身は化粧じゃ誤魔化せないよ。中身が駄目ならこの子はきっと見抜いてるから…」
傑はそう言って小鳥の方を見た。
「そう!アタシはね。人の事結構わかちゃんだな〜!芽衣ちゃんみたいな子!大好きだよ!」
小鳥はそう言ってにっこり笑った。
「あ、あの。お二人は…その…付き合ってるんですか?」
芽衣は意を決したように聞いた。
二人共一瞬驚きの表情を上げた後に、二人揃って爆笑した。
芽衣はその意味がよくわからずに、ただ二人の笑っている姿を眺めていたのだった。
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