第10話 花団B3☆王子達の戯れ!?

「きゃああ!一ノ瀬さん!」

「素敵!二宮さん!」

「最高!三橋さん!」

生徒たちはその3人組が歩いている姿を見て熱狂した。


この明和高校という私立の名門である学校の3年には、花の団氏(だんし)ビューティフル3(B3)という呼び名のスペシャルな男子生徒達がいる。


一ノ瀬財閥御曹司の一ノ瀬倫太郎。

一見不愛想なイケメン。過激な姉がいる。母親が厳しい。


二宮財閥御曹司の二宮金一郎。

落ち着いた性格だがイケメン。茶道を嗜む。母親が厳しい。


三橋財閥御曹司の三橋聖斗。

ちょっと子供っぽいがイケメン。弟キャラ。母親が厳しい。


彼等の気まぐれで学園生活が天国にも地獄にもなるという超影響力を持った生徒たちだ。彼等の意思1つで学園生活を肩身の狭い思いをしたり、時には学園を去る生徒まで居るほどにその影響力は大きかった。


「ねぇ。小鳥ちゃん。B3の中だったら誰が良い?」

クラスメイトの女子生徒は小鳥に尋ねた。


「は?B3ってなあに?」

小鳥は周りを気にするタイプではないため、若干学校事情に疎いところがあった。


「えっとね。この学校の強力な支援者を親に持つ、彼等に逆らってこの学園では行きていけないとまで言われる超絶イケメン先輩たちだよ!ビューティフルな3人組だからB3!ファンクラブまであるんだよ!」

クラスメイトの女子生徒はときめく乙女さながらに目をキラキラとさせた。


「へぇー!そんな人達がいるんだー!知らなかったよー」

小鳥はまだ見ぬイケメントリオに旨をときめかせた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「なぁ、一ノ瀬。お前今年の一年見た?」

二宮は雑誌を読んでいる二宮に言った。


「は?なんだよ?興味ねーよ」

一ノ瀬は雑誌から目を離すこと無く二宮に返事をした。


「またまた~!ちょっとカワイイ子チェックしちゃった?」

三橋は二人の話に割り込んで一ノ瀬の肩に腕を乗せて言った。

彼等3人は一般生徒が立ち入れないバルコニーのようなところに居た。

何故か彼等はそこに立ち入るのが許されていたのだった。


「きゃあああ!見て!B3よ!」

「素敵!どうしよう!」

「やだ。アタシ髪の毛乱れてない?」

3人を遠目で見かけた女子生徒たちは、黄色い歓声を上げた。


「っち!うぜー」

一ノ瀬は舌打ちをしてそっぽを向いた。


「まぁまぁ、そう言うなって」

二宮は一ノ瀬を窘めながら持っていた珈琲を一口飲んだ。


「やっほー!みんな〜!」

三橋は女子生徒たちに手を振った。女子生徒たちの歓声が一際大きくなった。


「そういえばさ、聞いた?今年の一年生の女の子で、すっごく可愛い子が居るんだってー!なんとか小鳥ちゃんっていう子」

三橋は女子生徒たちの歓声の中で、二人に話しかけた。


「はぁ?変な名前だな?どうせ真面目ちゃんだろ?」

二宮は少し興味を持ったようだ。


「……。」

一ノ瀬は三橋の発言を無視している。


「でもさ、不思議なんだって。その子すっごい美人だから同じ中学の子たちに紹介してくれ!って言うと、皆青ざめた顔で”絶対無理!”って言うんだって」

「へぇ?相当性格悪いのか?それとも相当中学時代に何かあったのか?どっちかじゃないか?それかとんでもないこわ~い彼氏が居るとかな。ははは」

二宮はそう言って適当な感じで笑った。


「ねぇねぇ!だからさ!久々に勝負しない?僕等3人で。その子のこと落としたら勝ち!どう?どうせ暇でしょ?」

三橋は笑いながら二人に提案した。


「お!良いね!久々に勝負するか!?たしかに最近退屈だし。どうせ大学は推薦で決まっちゃってるしね!」

二宮は結構ノリノリで話しに乗ってきた。


「ね!いっちーも乗るでしょ?この話?」

三橋は一ノ瀬に向かって言った。


「くだらねぇ。俺はパスだ」

一ノ瀬はそういうと雑誌を閉じるとスッと立ち上がり部屋を出ていった。


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「坊っちゃん。お早いお帰りですね」

運転手の男は後部座席のドアを開けると一ノ瀬倫太郎に話しかけた。


「ああ。つまんねーからな…」

一ノ瀬はそういうと、車に乗り込もうとした。


学校の坂道はやや急な坂になっている。

そこに通りかかった若い母親は、思わずベビーカーから手を離してしまった。

赤ん坊を乗せたベビーカーはゆっくりとしたスピードで坂を下り始めた。

スピードは徐々に増して真っ直ぐに校門の方に走り出してしまった。


「きゃあああ!」

母親の悲痛な叫び声が聞こえた。


「ん?」

一ノ瀬は叫び声に気が付き目を向けると、猛スピードで車に向かってくるベビーカーが目に入った。


「っち!」

一ノ瀬はさっと車の前に、飛び出すとベビーカーを止めるべく構えたが、ベビーカーのあまりのスピードに一瞬躊躇した。

ベビーカーは猛スピードで一の瀬に向かってきたが、直前で石にぶつかり方向を瞬時に変えた。一ノ瀬は反応できずに手を慌てて伸ばしたが、ベビーカーに手が届かない。


「クソ!」

このままではベビーカーが車と激突してしまう!と一ノ瀬は思わず目をつぶった。


その時、ふっと目の前を何かが横切った感じがした。

ふわりと少し甘い香りが横切った。


「おっと!」

背の高い女子生徒が、さっと手を伸ばしてベビーカーを捕まえるとくるりと回ってスピードを殺して、さっとベビーカーを止めた。


間一髪一瞬の出来事だった。

女子生徒はベビーカーの中の赤ん坊の様子を見ると、ホッとした顔をした。


「お、おい…」

一ノ瀬は思わず女子生徒に声を掛けたが、思いの外声が小さく女子生徒は気が付かなかった。


女子生徒はベビーカーの赤ん坊のほっぺたをツンツンと突きながら母親の到着を待っていた。慌てて走ってきた半泣きの母親が、小鳥からベビーカーを渡されるとその場に思わず座り込んでしまった。


「小鳥ちゃーん!大丈夫だった!?」

女子生徒を追いかけて二人の男子生徒が走ってきた。


「うん。大丈夫!赤ちゃんも無事だよ!」

小鳥と呼ばれた女子生徒は、涼しい顔で答えた。


「ていうか、オジさん!こんなところに車停めたら駄目じゃん!もしベビーカーが突っ込んできたらどうするつもりだったの!?」

小鳥は運転手にいきなり文句を言った。


「あ、いや…すみません」

運転手の男は、車がなければそのまま更に勢いを増して坂道を下っていったのでは?と疑問に思いつつも小鳥に謝った。


「あ!ヤバい!早く行かなきゃ!」

小鳥は思い出したようにハッと顔をあげると、男子生徒二人と駅の方へと足早に去っていったのだった。


呆然とその様子を見ていた一ノ瀬倫太郎は、ふと先程聞いた名前を思い出した。

「…小鳥…?」


一ノ瀬はスマホを手に取ると、仲間二人にメッセージを送った。


「さっきの話。俺も参戦する」


花団B3の小鳥を巡る愛憎劇が始まるのである!?

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