第18話 反動

オレ達のつきあいは順調だった。


仕事の出張で彼女の街へ行く回数も増えた。

それとともにデートの方法が変化した。

2泊3日の出張の場合、個人的に1日多く泊まる。

その日だけ別にとったホテルに彼女が立ち寄る

夕方まで彼女は部屋に居る事ができる。


この年でラブホはちょっと…

彼女をエスコートするならシティホテルがいい。


仕事も順調だったので

結構な高級ホテルを用意した。


このホテルは55F建ての高層ビル。

1Fは巨大商業施設と駅。

夜景が最高に美しいホテルだ。


結局このホテルが常のデート場となる。

夜景のすばらしさと彼女の家から楽に来れるから。


当然ラブホではないので堂々と入れるのだが

さて、ここでどう過ごそう?と考えた。

レストランで食事して、お茶して…

で終わりかな???


今だから言えるのだが、オレはやはり最後までを考えた。

不可抗力とはいえ、抱きしめたし、キスもした。

で、そのあとどうなの?何もサッと抱けばいいじゃん。

ホテルに来てるんだし、向こうも了承済さ。

よくある合意の上ってことだよ。


文字にすればそういうことだ。


偉そうなことを考えていたが

実際は彼女を誘う事がなかなかできなかった。

オレたちは不倫。社会的に許されない関係。

罪悪感が常にまとわりついた。

TVニュースで芸能人の不倫が出るとドキっとする。

最後まで行ったらヤバい。そんなことも考えた。



でもなかなか踏み込めなかった本当の理由は

ただ単に2人ともが勇気がなかったという事。


オレは無理に押して逃げられたらどうしようと悩んだし

彼女は彼女で、キスまではできるがそこからが

どうしても超えることができなかった。


経験が少ないから、満足させられない。

貧乳だから、恥ずかしい、等々。

嫌いな男に言い寄られたときの

常套句が並んだ。


嫁とのレスから不仲になったオレにすれば

また拒否られるのか?と悲しかった。


また彼女は関係を持つのが怖かったのだという。

ベッドインしてはい終わり、はいさようなら。

オレが去っていく。そんな気がしたというのだ。


オレは男として彼女を抱きたいと思った。

でもそれ目当てで付き合ったのではない。

純粋に彼女の容姿、雰囲気、醸し出すオーラ。

すべてが好きだった。

Hどうこうは二の次だった。


何度目のデートだったか?忘れたが

やっと彼女は首を縦にふってくれた。

暗くしてくれ。胸が無いけどあきらめてくれ。

テクはない。彼女はコンプレックスの塊だった。


オレにとっては愛した人はすべて愛しい。

胸の大きさなんか、どうでもいい。

彼女をそうさせたのは主人か?

ふとそんな事が頭をよぎった。


ただ1つだけ確かな事があった。


オレに抱かれてから彼女は変わった。

2人だけになった時はまるで別人だった。


オレへの甘えが酷かった。

「離れないで、手をつないで、抱っこして」

大人の女性のセリフには思えなかった。

まるで母にまとわりつく幼児の様。

でもこれが本来の彼女だったのかも?

そんな事も考えた。


うれしかったがその反面。

彼女がこれだけ甘えて離れないのは

普段の生活のストレスから来る反動かな?

そんな心配もした。


また主人が浮かんだ。




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