第15話 初のドライブデート
オレは彼女のメールに衝撃を受けた。
そんな話があるのかよ?
初めて男とつきあって結婚。
初めての男が旦那、しかも医者?
昭和のドラマじゃないか?
オレは半信半疑だった。
でも作り話をわざわざオレにするかな?
彼女が自らを語ったのはオレを信頼しての事。
よし。釣りでもいい。作り話だとしても信じよう。
オレもそれに応える形でメールを返した。
自分がなぜ、ネットの世界で彷徨ったのか?
何の不自由もない生活。なのに愛がなかった。
嫁との不仲。レスからくる寂しさ。ATM扱い。
隠さず正直に伝えた。
彼女はオレの状況が痛いほどわかるという。
2人は同じような思いだから惹かれあったのだという。
そうか、オレ達が惹かれたのは同じ境遇からか?
うれしかった。なんとなく運命を感じた。
世間でいう不倫だがオレは彼女を愛することで
心の均衡を保ち生きていることを実感している。
そしてオレが本名を伝えたことで
またお互いの呼び名が変わった。
「ひろちゃん」
これは旧姓から、彼女はそう呼ばれたいのだそうだ。
「としさん」
偶然、オレの名前が彼女の叔父さんと
同じだからとしさんでイイとの事。
としさん&ひろちゃんは恋人同士。
もういい年なのに2人はお茶をして
手を繋いでのかわいいデートを重ねた。
でも、世は諸行無常。
まさか?という坂に出くわすこともある。
何回目かのデートの日。
天気予報では彼女の街は大雨。
ランチして歩いては無理。
どうしようか?と懸命に2人で相談の結果
オレがレンタカーを借りて彼女を乗せる
車でプチドライブデートをする事となった。
雨でも濡れないし帰りは駅で降ろせばいい。
別に何処へ行く?という目的もなく走る。
彼女はお弁当を作りたいと言ってくれたが
何となく危険を感じた。
結局ちいさな喫茶店でランチとなった。
食事を終え1時間ほど走っただろうか?
渋滞に捕まってしまった。
「やけに混んでるな…
この辺りは混む所?」
「どうかしら?雨だからかしら?
でも時間も大丈夫だし、いいじゃない?」
「うん」
そのうち完全に停まってしまった。
2人だけの空間はうれしいのだが
やはり渋滞は申し訳ないなと思ってしまう。
カーナビや交通情報には渋滞の知らせはない。
ふつうの国道なので事故か検問かもしれない。
そのうち反対車線にパトカーが現れた。
スピーカーでなにか言いながら徐行している。
この先、事故で渋滞中ということだ。
復旧には時間がかかるらしい。
車内で2人きり。時間はまだまだある。
コンビニで買ったお菓子や飲み物もある。
こういうデートもいいものだ。
停車してかれこれ30分は経っただろうか。
小降りになった雨のしずくを眺めている。
彼女の帰る時間が少し心配になってきた。
「大事故でなきゃいいんだけどなぁ」
なにげに彼女のほうを見た。
「ねえ?もう大丈夫よね?」
「ん?」
「停まれたら、ちょっと…」
「あ!トイレ?」
「行けたら」
困ったことになった。
渋滞の原因が事故だとはわかっている。
ただその規模もわからない。
いったいいつ解消するのかもわからない。
どこかないかな?
楽しかった渋滞がピンチに。
オレは懸命にトイレをさがした。
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