わたしは変わらないのに

 分からないよ。


「キスしていい..?」


 その言葉が頭にこびりつく。

 キスをする姿が少し脳裏に思い浮かぶ。


 いくらわたしがいいと答えてそういう流れになっても

 でもそれが自然な姿とは思えない


 わたしは、どうしたらいいんだろう


「あたし、悠里が好き。どうしようもないくらい好きなの!」


 そんなこと言われてもわたしだってどうしようもない

 いきなりすぎて、何を、どう答えたらいいか分からない


 だって何を求められてるかわからないんだもん


 キスをしたいの?どうしたいの?


 あぁあの感じにそっくりだ。


「そんなこと…言われても、わたしはどこにもいかないよ?」

「違うの!あたしは!悠里が好きなんだよ!会った時から、見つめた時から好きになっちゃったの!」


 そんなこと言われても…

 あれ…なんだろ


 よく考えたらなんでこんな気持ちになるんだろ


「だから、先輩と一緒にいないでほしい。悠里と一番近い距離にいたいの!」


 夕夏ちゃんが熱くなればなるほど、どうしたらいいかわからない

 わたしは自分の気持ちを適切に戻そうとする。


「わ、わたし…」

「うん、わかってるよ。困るよね」


 夕夏ちゃん。大好きだけど、大好きなんだけど


「ごめん、びっくりしちゃって…」

「うん、そうだよね。でも言ったことは変わらないよ。悠里。もしあの先輩と仲良くしてるとこ見たら、切るから」


 置いた包丁を一瞬ぐっと握りしめる夕夏ちゃんの言葉は重くて、鋭くて、嘘だとは思えなかった


「ごめんね、こんなあたしで。でも…嫌いにならないで…ごめん…」


 なるわけないよ

 大好きな夕夏ちゃんを嫌いになれないから


 ただ、黙るしかできない

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