あたしを受け入れてよ

「ごめん、嘘」


 本当はしたいくせに、自分で自分に言ってみる

 そうやってまた、自分の気持ちに嘘をついた気がする。


 でも本当のあたしの気持ちは悠里にしかない

 本当に好きなんだ。友達としてじゃない、恋人になりたい。


 悠里、悠里悠里!悠里悠里悠里悠里悠里悠里!


 やっぱり好きなんだよ。


「あたし、悠里が好き。どうしようもないくらい好きなの!」


 気持ちが溢れしょうがない。仕方ないよね

 あたしはあの時から気持ちに蓋をした。


 といっても、親友で満足してた。

 親友としてスキンシップの一環でハグしたり手を繋いでみたりした


 本当にそれで満足だったのに…


 この気持ちは悠里と仲良くするあの先輩への嫉妬の気持ちが大きいかも


 そんな関係が許されるなら、あたしがその場所にいたいもの


「そんなこと言われても…わたしはどこにもいかないよ?」


 そういう意味じゃない。


 もっと近くに来てほしいだけ。


 いや、行っちゃいそうなのが怖いのかな?

 どっちにしろあたしの気持ちは変わらない


「違うの!あたしは!悠里が好きなんだよ!会った時から、見つめた時から好きになっちゃったの!」


 大好き


 悠里が好き。


 親友としても女の子としても


 悠里と一緒にいたい。悠里の温度を感じたい

 悠里のその優しさをあたしにだけ注いでほしいんだ

 この先、何度でも、悠里と同じ景色を見て、同じ感情を共有して…


 溢れて止まらないよ。


「だから、先輩と一緒にいないでほしい。悠里と一番近い距離にいたいの!」


 どうしても、他の人の顔が見えるのは嫌だよ


 あの先輩が、憎いとは思えない。


 その分悠里を好きになる。

 負けないぞって気持ちの方が大きくて、あの先輩より好きなんだと自信を持って言える


「わ、わたし…」


 悠里が目線を合わせてくれない。

 わかってる。こんなこと言われて困るに決まってる。


 ほんとうにごめんね。

 昔、悠里の周りにいた男の子みたいだよね


 けど、けど!

 好きという言葉を考えてるんだと思う。


 この間は、そうなんだ。

 困らせてるのはわかってるけど。


 困るってことは受け止めてくれるってあたしは信じてる


「うん、わかってるよ。困るよね」

「ごめん、びっくりしちゃって…」


 無理もないよ


 あたしの突然の癇癪みたいなものなんだもん

 悠里があの先輩に染められるのが我慢ならなくて…


 それで包丁で脅すなんて、本当に無茶なことすると自分でも思うよ


「うん、そうだよね。でも言ったことは変わらないよ。悠里。もしあの先輩と仲良くしてるとこ見たら、切るから」


 そんな言葉は自分が扱うにはとても重くて、本当に死のうとするだろうって気にさせられる


 でも悠里は優しいから、安心して想いをぶつけられる。

 だって昔いじめられてたのに、相手のことを悪く言わなかったんだもん。


 人を嫌いになれない、優しい子なんだよ。

 だから好きなんだ。


 この親友って関係が壊れるのは怖い。

 けどその先にあたしも入れてほしい


「ごめんね、こんなあたしで。でも…嫌いにならないで…ごめん…」


 悠里の言葉を使うなんて少しずるいかな

 あたしはおちゃめで優しい悠里が大好きなんだよ。


 だから、あたしを受け入れてよ。



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