恋の仮面
「恋せんぱ…あれ?」
昼休み、恋先輩とお話しようと思ったけどカウンセリング室にいない。
夕夏ちゃんも昼休みになったらどっかいっちゃうしどうなってるんだろ。
「高杉ならどっかいったよ。あなたとよく一緒にいる女の子に呼び出されて」
養護教諭の先生がわたしにそう伝える。
昨日お話を聞いてもらった時とは全然違う感じで
なんかめんどくさそうに仕事をしながらそうやって投げるように言う。
それにしても夕夏ちゃんと…なにかあったのかな?
「どこにいったかわかりますか?」
「さぁ?知らない」
やる気がないのかそれとも生徒に興味がないのか。
投げっぱなしでそう伝える。
まぁ先輩にカウンセリング室を渡すくらいなんだからそうだよね。
人がめんどくさそうな感じは少しだけ伝わってきてた。
だから保健室が変な人の溜まり場にもならないんだなって。
ただわたしはこの人は仕事をする時はしっかりやるってことを昨日体験してるからなおのことそんな姿が人間的で印象的だった。
「教室にでもいったのかな?」
「さぁ?」
「先輩の教室ってどこですか?」
「知ってどうするの」
目線をこちらに向けていないけど、少し尖ったような口調でこちらに投げかける先生。
「教室にいるかなって」
「いないよ。絶対」
「え?なんでわかるんですか?」
純粋な疑問を投げかける。
単純な興味だった。恋のことを教えてくれる気がしたから突っ込んで聞いてみる。
「いるわけがないから」
「あ、保健室学習だから教室とかないのかな」
「そんなわけないでしょ。特進クラスに在籍してるんだから教室もあれば座席だって…あっ」
「あ…ってなんかあるんですか?」
急に先生の手が進み始める。
どうしたんだろう、何かあるのかな
「いや?高杉に言うなって言われたこと忘れてた。もう忘れて」
露骨に手を動かして忙しそうに見せつける先生だったけどわたしは気になってしょうがない
口止め…?何かあるのかな
気になっちゃう。誰にでも教えたくないことはあるだろうけど
昨日わたしは中学のことを恋先輩に話したばっかりだから
不思議とわたしは知りたくなってた。
恋先輩のことも、自分の中身を晒したら相手の中身も気になるのは当然だよね
「教えてください、なんでそんなこと口止めされたんですか?」
「…」
「先生!」
「…」
「わかりました。自分で探します」
なにかある。きっとなにかある。
何か隠してるんだ…!ずるい…!
そういえばわたし、恋先輩のことなにも知らなかった。
その場その場の反応とか話の中で、わたしに向けたことしか知らなくて
変わってる人ということしかはっきりとわからない。
わたしのことをあれだけ知りたがっていたのに、自分のことを全然見せようとしなかったんだ
とりあえず、知りたい。
学校での、あの人の仮面の中を覗きこみたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます