仲直りの手繋ぎ
「悠里!本当に!本当にごめんなさい!」
あの日の翌日、朝練をサボり陸上部という枠組みを超えた脚力で大急ぎで悠里の家まで向かって謝る。
「悠里に酷いこと言っちゃった。あたし、そんなつもりじゃなかったの。本当にごめんなさい」
悠里も恋に話を聞いてもらって落ち着いた。
一晩寝て、考えて、とりあえず落ち着いた。
「うん、いいよ。わたしこそごめんね。わたしが恋先輩にばかり構っちゃったからだよね」
違う、そうじゃないと言いたい気持ちが夕夏にはあった。しかしそれを噛み殺して悠里に笑う夕夏。
「やっぱり、夕夏ちゃんは最高の親友だよ。すぐ仲直りできるなんて」
親友か、心の中でその言葉を反芻しながら手を繋ぐ
「ゆ、夕夏ちゃん?」
「仲直りの手繋ぎ。いいでしょ?」
仲良しというアピールをするんだ。
元々悠里と夕夏の絆は固いんだぞと周りにアピールする様に手を繋いで学校に向かう。
夕夏はちょっと幸せだった。悠里の少し冷たい手の感触を握り直す振りをして何度も確かめる。
そうやって距離感を確かめる。
悠里が怖がらない絶妙な距離感を確かめるんだ。
「ねぇ、また今日、保健室行くの?」
夕夏はたまらず悠里に聞いてしまう
「え?あ、どうしようかな」
悠里は昨日の出来事を引きずって答えられない。
「あたしのことなら気にしないで、昨日は本当にごめんね。あたしのこと、気にしなくていいからさ!」
満面の笑顔でそういうも悠里は少し気になってしまう。
夕夏のこういう何かを隠す笑顔を何度か見たことのある悠里には、彼女が少し無理をしているように見えた。
「う、うん」
ただ悠里はギュッと握ることで「無理しないでね」と伝えることにした。
あなたとは離れたくないと言うように。
夕夏は悠里から離れたくなかったから、それを強く握り返して恋のことを頭に思い浮かべた。
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