親友の関係

「どうしたの?」


 ぼーっとしてる悠里にあたしは話しかける。


 こんな風にぼーっとしても悠里は綺麗。前髪で隠しているけど本当に綺麗だと思う。

 こんな子をいじめてた人間はきっと人間じゃない。種族的には人間だろうけどあたしは人間と認めない


「いや、思い出したの。夕夏ちゃんに会った時のこと」


 あぁ、あの時のこと。あたしも覚えてる


「どんなことがあったっけ」


 覚えていたなんて口には出さずに噛み締めていた。

 悠里と仲良くなった日のことを忘れるはずがない。

 一目惚れしてしまった女の子と手を繋いだ日のことを、あたしは忘れるはずがない


「覚えてないの?あんなことしておいて」


 悠里がいじらしく笑う。あたしだけに見せるその表情。

 それがとても愛おしい。


「うっそー!覚えてるに決まってるじゃん」

「えー」


 嘘はつけない。そんな顔で見られたら。


 窓際で本を見つめて読んだフリをする可愛い大和撫子。


 窓から吹き込んだ風で髪が揺れて素顔がちらっと見えた時、びっくりした。

 あたしだけがきっとその素顔を見ていたんだって思う。


 顔の造形だけじゃない、暗いキャラ演出するために本を読んでるフリしたりする可愛さだったり持ちうる境遇だったり


 全てがあたしにないものを持った女の子。


 一目惚れをせざるを得なかった。


 女の子なのに、その全てを憂いた顔とお茶目さのギャップにあたしはやられてしまった。


 月でいえば三日月のような、全てを見せていなくても見えてるところが美しい。


 悠里はそんな存在なんだ。


「…?どうしたの」

「ん?ううんなんでもない」


 ただ、この気持ちは秘めておかなくちゃいけない


 あの時、先輩の一言にあたしはぎょっとした。


「あなたが好きみたい」


 先を越されたとか先輩があたしより美人だとかそんな危機感じゃなくて

 単純に自分の気持ちを代弁された気がした。


 拒絶されたらどうしようとか、今のこの心地いい関係が崩れるんじゃないかとか、もし悠里も同じ気持ちだったらどうなるんだろうとか、悠里があたしのことを変な目で見るんじゃないかとか。


 これは世間的にもおかしいこと


 そんな危機感が先輩の一言でいっぺんに押し寄せてきた。

 まぁでも好きと言ったのはあたしじゃないし拒否されたのも先輩だったからそんな勘ぐりも意味のないものなんだけど


 ただあたしだったらと自然に置き換えちゃう。

 好きな人のタイプを聞いたらそれが自分に当てはまるか確かめちゃうように


「うん…なんでもないよ。また遊ぼうね」


 この気持ちは秘めておこう。この関係をあたしは守りたいから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る