鳥尽くし御膳のち首切りと悪童


食堂に5人が着くと待ってましたと言わんばかりに皆が振り向いた。

リーゼルもアーガスも復調したようで顔色も良くなっていた。

「諸君、今朝の気遣いありがとう、おかげでだいぶ調子が戻ったし、さすがに腹が減ったね。ソウスケ君、今日の昼食は何かな?」

「今日のメニューもいつもとは違いますよ。昨日、皆さんから頂いた調味料と珍しい食材が手に入りましたので」

ソウスケはメラニたち侍女に配膳を頼んだ。

「皆さんに手伝っていただいた私達の故郷の料理です。器の蓋を取って見てください」

浄法寺塗の蓋付大椀と汁椀が並べられその脇に総織部の蒸し椀が添えられた。

「うむ。おお見事な色合いだね。草竜の卵ではないな…なんの卵だ?」

半熟ほどの卵料理がないせいだろう親子丼のあのふんわりした卵を見て不思議に思ったリーゼルが問う。

「コームの卵とコームの肉をを使った親子丼という料理です」

「まあ! 素敵な黄色いお花! これは何で拵えたのかしら?」

「それはリアムさんに作っていただいたコームの卵の菊花玉子の清汁という吸い物…スープに近い料理です。その花は薄く焼いた玉子に切れ目を入れて巻いたものなんですよ」

こういった料理をあまり見たことがない現人の面々はこれも卵からできているのかと口々にしていた。

イリスは茶碗蒸しが気になったようだ。

「こちらの綺麗な緑色の器の料理は何かしら? とてもいい香りがしますわね」

「そちらは龍さんに作っていただいた茶碗蒸しという料理です。勿論、コームの卵を使った料理ですよ」

「食べやすいようにスプーンで召し上がってみてくださいねぇ」

「コームの歯ごたえとふんわりした卵の組み合わせがいいね。下のご飯というものにもとてもよく合う優しい味だ」

「菊花玉子の清汁という物はとてもやさしくて深い風味ですね。二日酔い明けには助かりますよ。それにこの木の器、単色ですが鮮烈な色合いが私は気に入りましたね」

「その器は漆というそのまま漆の木という樹液を使って何度も塗り重ねた一品です。器ではなく置物になりますが、高い物は1千万ルプ以上の値をつける品もありますね」

「我…私は茶碗蒸しが気に入ったぞ…わ。ぷるんとしていて中の豆みたいのが旨い…わね。あと肉入ってたぞ…わ」

「私も気に入りましたわ。とても優しいお味と食感ですし、この赤と白の何かしら、この食材の歯ごたえが面白いですわね」

「この器も色合いがいいね。こちらの世界ではただ木をくり抜いた器や白磁が多いからね。この木のスプーンですら黒と朱の対比が美しいのだから大したものだよ」

「こっちには漆の木とかないのかな。あればいい特産品になるのにね」

「地道に探していけばいいさぁ。時間はたっぷりあるんだしねぇ」

ここで暫く見ていない者がいることにミユキが気づいた。

「そういえばアイナさんをお見かけしませんが彼女はどうしたのですか?」

「彼女には新しく設立する予定の騎士団への入団選考を頼んでいてね。彼女には申し訳ないが2階の騎士団の執務室に詰めて貰っているよ。今頃は昼食の時間だと思うがね」

龍や雅はアイナが選考中だという希望者の出自が気になった。

「辺境伯、さっきメラニ嬢からハルロとの肖像画を描いてほしいと頼まれたんすけど許可してやってくれないすか? ハルロ、リアムいいだろ?」

「それと食後にアイナ嬢のところに龍と訪ねたいんですけどよろしいですか?」

リーゼルは即答で許可を出すと、リアムも問題ないといい、寧ろ一家からのこの依頼は金は取らないとまでいった。

一方のモデルとなるハルロは気後れなのかどうなのかわからないが暫く黙考したあとそれではと願い出ると、その様子を心配そうに見ていたメラニが嬉しそうな表情を浮かべた。。

昼食を終えて、雑談が始まったところにラーシュが食べごろじゃないかなぁとサブスペースからフラン・パティシエールを取り出した。

「冷えて固まったのも美味しいんですけど、この焼き立てのとろとろの状態を皆さんに召し上がっていただきたかったんですよ。紅茶でもコーヒーでも合うはずです」

雅がパティシエ経験者らしく粗熱が取れただけでゆるい状態のものをウォッジウッドの皿にうまく切りわけていく。

「フラン・パティシエールていうお菓子だよぉ」

「バニラの香りがいいわ、雅」

「ソフィ、この香りバニラっていうのね。こっちだと甘香豆っていって干して芳香薬や香水に使われているの。こんなふうにお菓子にできるのね」

住む世界が変われば常識や認識も変わる。

人と人とが平和的に解決しようとする食事を通しての付き合いはどの世界でも変わらないことは救いなのかもしれない。

もっとも例外の人種がいることは否定できないが。

「ふぁあ、とろとろしていて美味しいわねぇ。毎日食べたいくらいよ」

「お母様! 毎日食べたら横に広がってしまいますよ?! でも私も毎日食べたいかも…」

今後はこういったケーキやタルトがごく普通に食べられるようになるかもしれないと伝えると現人もとびと女性たちの目が輝き、リーゼルとアーガスはコーヒーとの組合せに目を細めている。

リアムは絵の続きを描くと言って辺境伯一家とアーガス、それにメラニとハルロを引き連れて食堂を出て行き、ラーシュは魔術の練習をするAIや指導係の女性陣たちに引き摺られるように食堂を後にした。

雅と龍を迎えに来た案内役のゲインと名乗った騎士とともに屋敷を出て、騎士団寮のある砦の2階へ赴く。

階数が違うとはいえ、同じ砦内でアイナの姿を見ないということは相当忙しくしているのだろうと二人は予想した。

彼に案内され執務室を開くとそこには疲れ切った顔をしたアイナが机に突っ伏していた。

「タダシ殿にリュウ殿! お二人はどうしてここに?! もしかして二人して私に会いに…きゃ…何用でいらしたのですか?」

「あ、ああ。アイナ嬢を見かけないという話を辺境伯にしたら随分忙しくしていると聞いたんでね。陣中見舞と言ったところかな」

用意していたフラン・パティシエールの入った小箱を彼女に差し出した。

「ありがとうございます。今、お茶をお持ちしますので」

「あ、いや、お構いなく」

聞けば入団希望者の数が予想よりも遥かに多く、確認するだけでも大変だったがようやく一通り見終えたところだと言った。

ただ、今回の希望者のほとんどが剣など握ったことのないものばかりで、有望株はいたとしても素行が悪いと噂のある者や悪評の高い者しかおらず、選考は見送りとしようか考慮中とのことだった。

机の後ろには履歴書のようなものだろう書類が山積みにされており、ぱっと見たところ紙質はやはりよくはないようだ。

「ふわぁ…とろとろしていて…甘くておいちい!」

自分が噛んだことに気づき顔を赤くしているアイナに、雅はこれまでの選考で流人ながれびととみられる名前はなかったか尋ねたが、残念ながら空振りに終わる。

流人ながれびとは総じて身体能力が高いがゆえに、その能力を活かし騎士を目指す者が現れることはあり得ると考えていたためだ。アイナからの返答は芳しいものではなかった。

「素行のわりい奴らとか悪評高たけえ奴らってな、どんな奴らがいたんだ。差し支えなきゃ書類、見せてもらってもいいかい?」

「ええ、今更です。構いませんよ」

アイナが徹夜して先ほどやっと目を通し終えた書類を、龍と雅はダブルチェックするかのように見続け、30分程で見終えた。

もう見終えたのかとアイナは驚いているが二人とも速読を体得しており、さらに視認データをすべてナノチップにインプット、保存しているから目を通すだけで済ませることができるというわけだ。

二人が見た中で有望と思えたのは2名だけだ。

模擬戦で小姓、従士、騎士と勝ち抜く試験を行い騎士戦で勝ち星をつけたゴーダルという22歳の元傭兵とオールドフォード出身の成人したての15歳でサミという商家の三男だけが騎士戦では負けたものの勝ち上がっていた。

「アイナ嬢ありがとよ。で…今回の選考だけどよ、こいつら二人以外は見送るべきかと思うぜ」

「俺もそう思う。ほとんどが模擬戦で小姓にすら勝てていない。勝てたとしても次の従騎士戦で負けている。希望があるとすれば…元傭兵のゴーダルとサミの二人だけだが彼らには何か問題あるのかい?」

ゴーダルは首切ゴーダルと言われ、帝国との戦争で王国側についたが多くの無関係の一般人さえ手にかけたようで王国上層部でも問題視されたらしい。

サミのほうはというと恐喝、女性への暴行など繰り返していた悪童で、父親が金で一方的に被害者の女性を黙らせていたという噂があるという。

「それなら今回はなかった事にしたほうがいい。恐らく面倒事が起こるはずだ。この二人を採用したとしたら必ず辺境伯に迷惑をかけることになると思うよ」

これから、この二人に会わなければならないと言われたのだが、彼女にも護衛のレイスが常時ついているので特に心配はないだろうと思い退出しようとした。

「あの…宜しければお二人にも同席いただきたいんですが…」

「副団長のレベルさんだっけ。彼もいるんだし君一人で断るわけではないんだろう? 書類は見せてもらったが俺たちは部外者だ。いないほうがよくないか?」

「いえ、レベルも出席するんですが…彼女がサミの目線を怖がっていて…」

「それは失礼。てっきり男性だと思ってたよ」

ああ、エロい目線で見ているんだなと、雅と龍はそれぞれ心中で思いお互いを見あって苦笑しする。

曲がりなりにも騎士を勤めている彼女たちだから、被害に遭うことはないだろうが知人でもあるし辺境伯や何よりイリスの信も篤い。

そんなことで実力者を失うわけにもいかないだろう。

「いいんじゃねえか? 俺もそいつら見てみてえしよ。ろくでもねえやつならぶちのめしてやりゃあいいんだからよ」

「それならアイナ嬢、俺たちなりの流儀で彼らに挨拶してもいいかい?」

アイナが了承すると雅は龍を見やると、龍も雅の意図がわかったのかニヤリと悪い笑みをこぼした。

副団長のレベルと合流し、応接室へと入室すると入団試験を受けに来た者とは思えない不遜な態度で座る二人がいた。

サミにいたってはレベルを視姦するかのような目つきでニヤけている。

「おい、クソ坊主! 舐めてんのかそのニヤケ面ぁよ! 死ねよ?!」

「ゴーダルだとか言っていたな。騎士にあるまじき不遜な態度をとるなら今すぐお前が好きな首斬りを実践してやるぞ」

入室するや否や、龍は奥に座っていたサミのさらに奥横に、雅は手前のゴーダルに誰も気づくことができない速さで移動し独鈷杵から出したレーザーブレードを二人の首筋に押し当てている。二人の首からは皮膚が焼けたであろう煙がたっている。

「ひっ! すいませんすいまぜん! 許じでぐだざい!」

「許すだぁ? ふざけた事言ってんじゃねえぞ、このレイプ野郎! いいからさっさと死ねや!」

「あ、あ、改めますから! そ、そ、その剣を収めててください!」

「駄目だゴーダル。無関係の一般人の首を斬ったそうじゃないか? お前は許しを乞うた人に対して剣を収めたのか?」

二人のあまりの速さと容赦のなさに唖然とするも、我に返ったアイナとレベルが止に入ってなんとかその場を治め、全員座りなおす。

突然襲い掛かられた二人は顔面蒼白で身体の震えが止まらないといった始末だ。

「あなたがた二人の実力が高いことは試験によりわかりました。ですが先程の態度といい、私達を見る目といい、誇り高い騎士のそれとはかけ離れすぎています。残念ですが…今回の話はなかった事にします」

アイナが冷たく言い放ち退出を促すと、ゴーダルとサミは改心するといって入団の許可を懇願した。

「おい、首切り! てめえなんでそんなに騎士団に入りてえんだよ、強盗騎士でもやってろ! クソ坊主はさっさと家に帰るか、そこらで野垂れ死ねや!」

龍の圧に気圧されながらも二人はポツポツと語り始めた。

ゴーダルはの出身で騎士となることを目指し領軍騎士団に入団。

小姓として仕え始めたが、従騎士になったばかりの頃に直属上司の失敗の責任を転嫁され、それを理由に不当解雇の憂き目にあい傭兵業に身をやつしたと語った。

また首切の異名は帝国との戦闘で5人の首を斬ったことでつけられたが、その5人はいずれも調査の上判明した一般人を装った間者であり、ゴーダルに地位を奪われることを危惧した傭兵団長が王国に間者だったと報告せずにいたため、悪評が広まったとも語った。

不遜な態度をとっていたのは、まだアイナたちが来ぬだろうと高を括っていたからだといい、これは不徳の成すところだと反省していた。

サミのほうはといえば、これまで好き放題やってきたが足を洗おうとグループに話したところグループのメンバーは逆ギレし、彼を魔の森に放り込んだ。

単独行動で、魔の森の入口まで無事に辿り着けたものの、追いかけてきた魔物に殺されかけそうになった際、アンヴァルド第一騎士団に救われた。

グループにも戻れず、家にも既に帰る場所もなく冒険者紛いのことをして日銭を稼いでいたが、騎士団の募集要項を見て真っ当に生きるならこれだと思い、応募してきたという。

レベルを見ていたのは彼女がサミの好みで、予想通り思春期を迎えた少年にありがちなエロい目線で見ていたという結果だった。

「訓練場より外のほうがいいか…アイナ嬢、ちょっと外にでないか?」

アイナは龍に木剣や木槍を用意するように言われたことを模擬戦でもやるのかといった嬉々とした表情で団員に用意するよう指示を出した。

6人は砦の外に場所を変えたが、先行した雅がサミに背を向けたまま変なこととも思えるような事を言った。

「サミだったな。お前、真剣で俺に襲いかかってみろ」

サミは突然、真剣を龍から持たされた挙句、雅に襲いかかれと言われたことに戸惑っている。

「いいから行けや!」

「っ!? う、うおおおおぉ!」

龍に尻を蹴られヤケクソになったサミは、雅に襲いかかるため剣を上段に構え走り寄り、まさに振り下ろそうとしたその瞬間に閃光が放たれた。

放たれた閃光の行き先はサミが振り下ろそうとした真剣だ。

命中したブラスタによりその剣が焼け溶けたのだが、何が起きたのか全くわからない4人は呆然となった。

「俺や龍、そして俺の仲間がお前らの近くにいなくてもだ。辺境伯を裏切ったりアイナ嬢やレベル嬢に狼藉を働くような真似をしてみろ。場所も時も関係なく、その瞬間にはその剣のようにお前らの頭が溶けることになると覚えておけ」

そう言って雅は硬貨を空中にバラ撒くと、そのすべてに閃光が当たり焼け溶けて落ちた。

「仲間を募ってやろうったって無駄ってことだ。特にクソ坊主わかったかよ?!」

サミもゴーダルも信じられないといった表情で青ざめているが無言で何度も首肯を繰り返している。

「アイナ嬢、レベル嬢これでよかったかな? この二人は最悪、第一騎士団に任せるというのも一手だと思うけどね」

それを横目に今度は、龍がサミにブロードソードを模した木剣を渡して打ち込んで来いと怒鳴っている。

「え? でも…」

「何してやがる。さっさと構えろ、殺すぞこの野郎!」

サミは龍に渡された木剣を今度は中段に構えた。

「サミ、力みすぎだ。深呼吸して相手を見据えろ。いいぞ…いけ!」

「はい!」

深呼吸により身体全体の力が抜けたサミは先程とは違い、綺麗な姿勢で龍の間合いに入り込み右中断から横薙で木剣を振り抜いた。

だが龍は、あっさりと後ろに引くと同時に木剣を躱すと、すかさずサミの懐に二歩入り込み腕を木剣で叩いた。

「いいじゃねえかクソ坊主。お前がこれから使おうとしているブロードソードはよ、斬ることも叩くこともできる重さが特徴だ。けどよ剣に振り回されんなよ。テメエが振り回せ! 連撃できなきゃ隙だらけになんぞ!」

龍はサミの連撃を木剣で受けているがわざと隙を作り誘い込んでいる。

そのため本人は気づいていないだろうがサミの動きが途端に鋭くなった。

「サミの動きが良くなってきたわ。剣の才は確かにあるようね…少しだけ見直してあげようかしら」

レベルは今までのこともあるだろう、言葉の端々に棘があるがサミの動きに感心しているようだ。

「ゴーダル、お前も乱入してみるか?」

「いえ、私はあなたにお願いしたいところです」

「俺は普段、錫杖を愛用しているが剣もイケる。どっちがいいんだ?」

「それでは錫杖の代わりに木槍でお願いします」

ゴーダルが右前半身で木槍を大上段に歩幅を大股に構えたのに対して、雅は左足をゴーダルに正対、左前半身で中段に歩幅を控えめに銃剣術のように構える。

「雅殿のあの構え見たことがないわ。あれじゃ踏み込めないんじゃないかしら」

ゴーダルが大上段から強烈な突きを付き入れるが、雅は半歩踏み入れると同時に中段から捻りを加えながらゴーダルの槍を跳ね上げ、勢いを殺せず間合いに入ってきたゴーダルの腹へと刺突ではなく木槍を叩き入れた。

短いストロークだが、すばやく左手を引き付け右手で柄を真横へ移動させ叩きつけた一撃だった。

腹を打たれたゴーダルは衝撃のあまり木槍を手放してしまった。

「参りました…」

「いい突きだった。槍は突くものと考えらがちだがを意識しろ。それから突く時もを意識しろ。そうすれば単に突き刺すよりも威力が上がる」

「セミ、おめえ思ったよりいい動きするじゃねえか。悪さばかりしてねえで精進しな。そういやお前、冒険者紛いのことしてたって言ってたな。あれだ、非番の日は冒険者ギルドの社会奉仕活動を一ヶ月続けて性根を直してこいや。サボったりズルしたりすんじゃねえぞ。そんときゃテメエを殺すからな」

龍は地べたでへばっているサミに向かって平然と殺すとまで脅していたがその顔は嬉しそうにしていた。

「アイツ…勝手に決めてしまったけど…いいのかい?」

今までの罪滅ぼしと社会奉仕活動を続けることで騎士団と彼のイメージが良くなるならなんの問題もないとアイナはこれを了承した。

「お二人とも闘気や殺気のようなものを全く感じなかったのですが抑えているんですか? もしそうなら一度、殺気を当ててもらってもいいですか?」

レベルが気になったことを二人に向かって言い出したが、雅がやめたほうがいい、特に龍の殺気はとんでもないことになりかねないと断るも雅にそこまで言われる龍が気になったのかレベルがしきりに頼んでいる。

「出すのは構わねえけど責任持てねえぞ。それでもいいのか?」

「はい。強者の出す闘気や殺気がどのようなものか体験したいんです!」

ちょっとだけなといって龍は本当にほんの少しだけ闘気を出し殺気をレベルに向け放った瞬間、レベルは失神、サミは地べたに這いつくばったまま泡を吹き失神、アイナとゴーダルは失禁して震え上がった。

「龍の殺気が溢れたと思ったら何やってんのさぁ。そこのお尻娘ちゃんと僕ちゃんは気を失ってるし、アイナ嬢とそこのナントカは恥ずかしいことになっちゃってんじゃん!」

「屋敷のほうも気を失った人が多くて騒ぎになってますよ!」

ミユキが侍女数人を呼んでくれレベルを、セミを龍と雅でそれぞれ屋敷に運んだ。

ゴーダルは部屋を借りて着替え終えていたが恥ずかしそうに小さくなっいる。

アイナはアイナで着換え終わったが耳まで真っ赤な状態だ。

暫くすると気がついたセミとレベルが起きてきた。

「此度は、私の軽はずみなお願いで皆さんにご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」

「俺、こんな人に喧嘩売ってたのかと思うと身の毛がよだつ思いすよ…街の奴らなんか目じゃねえ…ホントすんませんでした!」

ミユキにさんざん絞られてげんなりしている龍もバツが悪そうに手を振って返していたが突然、人が変わったような鋭い目つきになった。

アイナは龍だけではなく他の2人も厳しい顔付きに変わっていることに気づいた。

『あなた達が言っていたソエジマの手の者達が騎士殿を襲撃する手筈を整え終えました。明日には彼は発つのでしょう。力になっておやりなさい』

『八咫烏様からだ。聞いたよな?』

『うん。聞こえたよ。絵はあともう少しで色を入れ終わるから明日には出られるよ』

雅とラーシュ、この場にいないリアムからも問題ないと念話で返答があった。

アイナが3人に突然どうしたのかと質問するも、普段の表情に戻った3人は何でもないとはぐらかすと、アーガスと明日の予定を詰めるためにリーゼルがいるはずの執務室へとAIを引き連れて向かった。


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