The blitzkrieg -電撃戦-
大陸共通歴3512年7月4日/陰曜日
「おはよう。鉄火巻、折に詰めたから渡しておくぞ」
「おはよう。悪いな。ありがたくいただくよ」
二人は朝早くから起きだしてそれぞれ祝詞の奏上、朝の勤めを終えていた。
「おはよう。【ほうらい】と【みらい】にポータルを設置したから、いつでも戻って来られるよぉ。皆にはポータル取得付与、渡していたよねぇ」
どうやら寝てはいなかったらしく、一度睡眠をとったらなかなか起きないラーシュが通信に割り込んできた。
ポータルは、スキルによって形成した拠点間の瞬間移動手段だ。
ちなみにスキルに該当する技能はこちらの世界では技能と呼ばれるようだ。
このポータルは通常、高難度の魔術陣を張り巡らせて作られるがスキルによる形成のため、使用者の意思で使用可能な対象を限定することができ、人数制限も可能だ。
「寝不足になることはないはずだけど寝られるときは寝ておくものだぞ、ラーシュ」
「ああ、寝たかったんだけどねぇ。アサヒがシラユキを着せ替えしてさぁ。その度に見せにくるのを褒めてたら朝になっててねぇ。ついさっき終わったところ。今は二人でファッション誌読んでいるよぉ。あれ? リアムは?」
一週間程度なら睡眠をとらずに活動できる身体となっているが平時なら話は別だ。
「おはようございます。大佐なら昨夜から縛ったままです。そちらに向かわせなくてよろしいですか?」
「おはよう。せっかくだから、そのままにしといてやってくれ・・・」
雅は、アテナからさらっとそんな事を言われるとは思わなかったが平静に努めた。
予定していた採掘量に達し、今日は盗賊狩りをしながらゴースティンの街に向かう予定だ。
トーストにスクランブルエッグ、ベーコンとサラダで軽めの朝食を摂り出発の準備に入る。
「卵料理って美味しいのね。スクランブルエッグっていうのよね? あんなにふわふわなの、アタシ初めて食べたかも」
「こちらの世界では、卵であたったりするから固めの卵料理ばかりなのか?」
「アタシたちは、なんともないのだけどね。人種は火を入れないと、なんか信用できないみたい。けど、少しでも温めると硬くなっちゃうのよね。ところで皆、出かける準備をしてるけどどこかに行くの?」
サルモネラ菌などの類いで慎重になっているのだろうかと、雅は考えて聞いてみたが、シラユキからの返答は予想外のものであった。鳥の種類が違うのだろうか。
「なるほどな。卵そのものの種類が違うのかもしれんな。ああ、俺たちは、これから途中で盗賊団を潰して東のゴースティンの街へ行く予定だ」
「ふうん。この街みたいにキラキラした高い建物もないし、どこにでもあるような街なんて今更じゃない?」
この街には確かに高層ビル群がある。
しかも、雅から見てもため息のでるような美しいデザインのビルばかりだ。
だからこそ、シラユキの言わんとすることはわかる。
そしてやはり姉妹なんだとも。
「ファ…ユキと同じようなことを言うとは、やはり姉妹なんだな。そうは言っても俺たちにも、やることがあるんだよ」
「金を稼いで王都にも拠点を作るんだよねぇ。そこから一度、別れて東西南北の大陸の端を目指すのさぁ」
「じゃあ、アサヒも、彼氏も行っちゃうの? もしそうなら、つまんないじゃん」
ぷくりと頬を膨らませて不満顔を作っているシラユキ。
「お前の姉貴は行かずに、ここに残ると言っていたが?」
「お姉ちゃん? 行く気満々だったよ?」
あれほど残ると言っていたユキがついて行く気になったのは名前が変わったせいもあるのだろうか。
シラユキの表情から察するに、ユキは本気でついていくようだ。
「心変わりが早いな。守護者の仕事はいいのか?」
「いいんじゃない? お姉ちゃん、黙ってるけど離れたくないぞ〜とか言って、ずっと龍ちゃんとミユキの後をくっついてるし」
「お前、読心の類ができるのか?」
「竜種ならできるよ。お姉ちゃんは力は強いけど、頭が弱いの、アタシは逆に頭が良くて、力はあまり強くないの」
返答があさっての方向だし姉を平然とディスる妹に苦笑してしまった。
「そうか。ユキは龍たちについていくのか。それでお前は残るのか?」
「彼氏もアサヒもいないなんてつまんないもん。ついてくに決まってるじゃん。安心して。あんまり力は強くないけど、マンティコアぐらいのくそ雑魚なんか一撃よ」
ふふんと、ドヤ顔して大きな胸を張るシラユキを見て、すぐにドラゴンなんかに戻られたら、この世界の人間はどういう反応をするのかわからないと思った。不安に思い雅はシラユキを諭した。
「人前に出るなら、安易に人化を解くなよ。竜殺しなんぞに憧れる奴なんかがいるんだろ?」
「ああ、そっか。そういう奴らに狙われるとしつこいからイヤなのよね。お姉ちゃんにも言っとくね」
「頼むぞ。そろそろ出発すると龍たちにも伝えてくれ」
「わかった。おーい、お姉ちゃーん」
シラユキはユキを呼びながら、龍たちのほうへと歩いて行った。
暫くして全員揃ったはずなのだが、リアムだけその場にいなかった。
「リアムはどうした?」
「あ! 縛ったままでした!」
慌ててアテナはリアムを迎えに艦に戻り、ほどなくして二人で歩いてきた。
「全員揃ったな。それでは出発する。と言いたいところだが移動手段をどうするかだ。空はまたワイバーンみたいな飛翔性魔物と接敵するだろうし、地上は地上で面倒になりそうだからな」
「それなら心配ないぞ…わ。我…私とシラユキの気配があれば、恐れをなしてかかってくるアホどもなどお…いないぞ、はずよ。念の為に雑魚どもに睨みを効かせるようにベヘモに指示したからな」
「相変わらずお前の話し方は分かりづれえな。無理すんな」
「ねえ、お姉ちゃん。アタシたちの背中に乗って飛んでいけばいいんじゃないの? そっちのが速いと思うよ」
「そんなことができるのか?」
飛竜に乗ったことがあるとはいえ、ここまでの大きさの竜種に乗ったことがない雅はそんな質問をしてしまった。
「お姉ちゃんの大きさならここにいる全員乗せるのなんて簡単よね?」
シラユキはそう言って人化を解きドラゴンへと戻った。
「彼氏とアサヒはアタシの背中に乗ってね」
「シラユキ、なんで二人だけぞ。我が他の全員を背負うのか。その・・・龍には違う意味で今夜ものってほしいんだけども・・・」
「ねえ、アサヒ。私達も今夜は彼氏にのってもらおうよ」
「え〜、シラユキ〜、それって〜大佐と三人でってこと〜?」
アサヒは耳を真っ赤にしてシラユキに聞き返している。
「その姿でアホなこと言ってんな! あとユキ、モジモジすんな! ほれ、行くぞ」
ユキとシラユキはメンバーを背に乗せ、自身に認識阻害を掛け翔び始めた。
「ふわぁ、閣下! あん、大っきい! ドラゴンの背中よ! ああ、いやぁん、ドラゴンの背中に乗って私達飛んでるのよ! あぁん、なんて素敵なの! はぁん!」
「雅、ソフィアの感情ルーチンさぁ、イカれてない? 大丈夫なのぉ?」
「こちらに来てからたまにあの調子だ。ま、大丈夫だろうさ。あのぐらい外れている方が楽しいしな」
「鱗ってやっぱり硬いんですね。でも暖かくて・・・撫でたくなります」
「私達の乗っていた飛竜よりはるかに快適ね」
感覚としては10分も経っていないだろうか。シラユキから質問を受けた。
「認識阻害をかけたから、ギリギリまで近づいても大丈夫だけどどこに降りたらいいの?」
「ドローンからの映像だと見張り役が常駐しているからな。変に警戒されたくない。少し離れた場所に降りて近付こう」
メンバー全員が身を隠せるような窪みを見つけ降り立った。
「閣下、見張り役の武装ですがロシア製のアドロフPAも携帯しているようです。でもなぜ、拳銃など所持しているのでしょうか。それとここから100m程南の崖下に緊急脱出用と思われる小さな出入口が一つあります」
「銃の携帯理由はわからんが左右の見張り台に二人ずついてどいつも持っているな。
そうであれば4丁は最低でもあるということだ。
拾ったにしては不自然に数が多い。渡した上位の人物か組織がいる可能性が高いな。南の出入口は補修用瞬間硬化ジェルをレイスに使わせて封鎖だ。ラーシュ、やつらを眠らせることはできるよな」
「雅様、私めとローラに見張りどもはお任せいただけませんか? 私どもなら、左右二人ずつ程度であればたやすく仕留められますよ」
ハルロとローラは、暗器術に長けている暗殺のプロとも言える人物だ。
「頼めるか。やつらの持っている武器にこれと似たものがある。これと似たものが見張り台にあったら、根こそぎ持ってきてくれ」
二人に拳銃と、拳銃から抜いた弾倉を銃弾が見えるように見せた。
「おまかせを。ローラ行きますよ。私は左を。あなたは右を頼みますよ」
声だけを残して二人は姿を消し、暫くすると戻ってきた。
「左右の見張り台は無力化しました。奥の様子は確認しておりませんが、相当数いると思われる声を聞きました。それとこちらを」
ハルロからそう言われ渡されたものはアドロフ4丁と二つのマガジンの予備だった。
「レイスを2機侵入させ、リッヂを入口に3機配置」
入口はただの洞窟のように見えるが内部は坑道のように整備され左右非対称に10人程度で使用している部屋が5室ずつ等間隔で配置されていた。
最深部にはちょっとした広間があり、その奥に首級の二人がそれぞれが入っていった2つの部屋がある。
その隣に堅牢そうな扉のある部屋が2つあり、一つは金属反応、もう一つは5名の生体反応があった。
「予め眠らせてから侵入する。ドローンが待機しているから大丈夫だと思うが、ミーナやユキたちは坑道から入口を警戒してくれ。手前から順に無力化していく。左側の部屋はリアムと龍に。俺とラーシュは右側だ。最後に首級をやる」
「反応を見るとやつら、もう眠っているはずだよ。さっき睡眠魔術を放ったけど動かなくなったしねぇ」
「銃はやめておこう。死体の検分をされるとマズい。AI、これから先は、上官でも階級呼びせず名前を呼べ。敬語も不要とする。これは命令だ。いいな」
「「「「了解」」」」
左右の経屋で睡眠誘発魔術により眠らされた団員の首を次々と跳ねていった。
「クリア!」
「ルームクリア!」
各部屋にはおそらく小隊リーダー的存在だろう。
アドロフを持つ男が2、3名いた。首を跳ねたあと、当然拳銃とマガジンは回収していく。
最後の部屋でラーシュは、支配強制力が強いため禁呪となった隷属魔術と詠唱無効魔術を見せしめ用に一人だけ生かした男にかけ連れ出した。
その手首にはハイパーカーボン製の手錠がかけられている。
入口を警戒していたミーナたちを呼び、奥の広間に集まった。
それぞれの部屋で眠らされたオズ、ヤジスに生かした男と同様の処理をしたうえで睡眠魔術を解呪した。
「おはよう、雑魚へびのオズ君にくそむしのヤジス君」
「あん? 何だテメエら? いい女ども侍らせやがって。オレ様らを楽しませてくれんのか?」
「あのさぁ、君たち今の状況わかって言ってるぅ? 殺しちゃうぞコラァ!」
無理矢理、覚醒させられて状況がわからないのか調子に乗ったかのようにオズが軽口を叩いた瞬間にそれは起きた。
ラーシュ以外の3人がラーシュがキレて何をするかわからないと思った瞬間、ヤジスの左足が爆散した。
「ぎゃあぁぁぁ! 足が! オレの左足が!」
「足で我慢してやったんだよクソ野郎がよぉ! テメエ、さっさと知ってる事話せやぁ!」
ラーシュの豹変ぶりに驚きを隠せないミユキが龍に
「アンダーソン大佐・・・ラーシュって怒ると龍さ、龍より怖くなるのですか?」
「こいつ、キレっと何すっかわかんねぇから余計に怖えんだよ。暴力団の事務所、一つ半壊させてるしな」
「あの事務所のときは、みんなもう社会人だったからさ。逮捕されて家庭崩壊か、とかヒヤヒヤしたよ」
「それでこいつはどこで手に入れやがったんだよぉ? 言わねえと今度は脳みそ、ふっ飛ばしちゃうぞクソ野郎ぉ!」
ラーシュに凄まれてもオズとヤジスは沈黙を貫こうとした。
埒が明かないと感じた龍が、黙秘を続ける二人に見せしめで生かしておいた男に命令する。
「おい、チンピラ。お前、嘘ついてみろよ」
「は? 何言ってんだ?」
「お前、女だよな?」
「オ、オレは男だ! 馬鹿野郎!」
「嘘ついてみろっつったろうがこの野郎! 今度はちゃんと嘘吐けよ? お前、女だよな?」
龍は、手下の男に向かって女と言えと繰り返す。
「オレは…女…ぶはぁ! な…に…が」
手下の男はそう言った瞬間、目や口、鼻から血を出して倒れそして絶命した。
「君ら二人も嘘ついたらこうなるからね。安心して嘘ついていいよ」
絶命した手下を見て、オズは泣きながら小便を漏らし、ヤジスは痛みを堪え、脂汗をかいて震えている。
「もう一回だ。それでこいつはどこで手に入れやがったんだぁ? 言わねえと今度は、お前の脳みそがふっ飛んじゃうぞクソ野郎がぁ!」
「そ、そいつはそ、ソエジマって野郎だ。そ、そこにいる坊主頭をしてる黒目と、おんなじような風貌のヤサ男から預かったんだ。か、稼がせてやるから使えってよ。で、月に一度稼ぎを渡していたんだ! 本当だ! なあ、助けてくれんだよな?」
「で、ソエジマってのはどこにいる?」
「お、王都だ。王都にソエジマの野郎のアジトがある。ア、アジトっていうか大通りに堂々とた、建ってやがる。か、か、看板にわけのわからねえ、よ、よ、読めねえ字が書かれててよ。なんて書いてあんのか聞いたら、や、やつらソエジマビルって答えてた。本当だ!」
「コイツは他の部屋にもあんのか? 残り全部寄こせ。それと、ほかの二つの部屋はなんだ?」
雅が押収したアドロフをオズたちに見せて所在を吐かせようとすると、恐怖が勝ったのかすんなり吐いた。
「それはオレとヤジスが一つずつ。見張りが四つ。分隊のリーダーのやつが一つずつ持っていた。ぜ、全部で30だ。部屋は、ひ、一つは金庫代わりの部屋だ。オレとヤジスが一つずつ鍵を持っている! それで開けねえと入れねえようになってる! もう一つは売っ払うためのと身代金用に捕まえたやつらを集めておく部屋だ。今は身代金用の商人と運転手に女が一人。それに売りモンの女どもが二人いるだけだ! 手を付けると売りモンにならねえから手を付けてねえし! 御者も殺しちゃいねえ! 他には絶対にいねえ! なあ、助けてくれよ! なんでもするからよぉ!」
咄嗟に龍がミユキに指示を出した。
「ミユキ! ドアなんてぶち破っていい。お前らで捕らえられてる被害者を確保し保護! 必要なら応急処置!」
「はい!」
それに答えAIたちは行動を開始、鍵も使わずにドアを引きちぎり中へと入っていった。
「まあ、まだ死んでないし、ここまでは嘘は言ってないよねぇ。と言っても君たちは、僕達が首を持ち帰って賞金をもらうためにどの道死ぬのさぁ」
「ラーシュ、頭冷えたか? お前は、シラユキたちを連れて金庫を見てきてくれ」
冷静さを取り戻し始めたたラーシュに金庫代わりの部屋を確認するよう指示を出した。
「女性を売ると言っていたな? どこに売るんだ? それと身代金目当の女性は?」
「そ、もともと王都の組織が・・・【影狼】ってのがやってた娼館を組織ごとソエジマがぶんどってよ。オ、オレ様らが人攫いして金をもらっていたんだ。やつら、借金の方に嵌めて落としたりもしてるって笑いながら、い、言ってやがったぜ。さ、最近じゃ最大手のど、【毒蜘蛛】も傘下にしたって話をソエジマから聞いた。み、み、身代金目当の女は、この領地の娘だ。こっちは掻っ攫ってこいって命令を受けただけだ!」
「おお、証言データばっちり取れたよ。で、君らの首はどこに持っていけばいいの? 教えてよ。僕はドS級素人令嬢の様子を見てくるよ。雅、龍、聞いといて」
リアムは、捕らえられている女性のほうが気になるのか行ってしまった。
「街の入口に衛兵のいる詰所がある。そこに持って行けば換金してくれるはずだ。なぁ、あんたら冗談だよな? 本気で首をとろうなんて思ってないよな?」
嘘を言えば手下と同じ目にあうと確信したオズは追加の情報まで寄越し延命を乞うた。
「お前ら、命乞いしてきた奴らを散々、殺してきたんだろうが? 今更、生き残れると思ってんのか? 助かるなんて甘えこと思ってんじゃねぇぞ。お前の横にいるくそむしはもう虫の息だ。お、なかなか上手えと思わねえ、今のつながり?」
「駄洒落としてのレベルは壊滅的だな。今、首がつながっているのはお前たち二人だけだ。そういや、身分を証明するものをお前たちは持っているのか?」
「そんなもの持ってるわけねぇだろ! はぐれ者だぞ! お、お前らは
「
「そ、そうだ。ここ何年かヤケに多い。お、俺様たち
こんなところでいいかと王都のソエジマビルにドローンを派遣し捕らえられていた人達が起きる前に始末しようと考えた。
「雅、俺はアドロフ回収してくるわ。おい、お前らさっさと死んで金になれや」
龍は雅に告げるとヤジスの部屋へと向かっていく。
雅は、オズを歩かせ、今にも気を失いそうなヤジスを引きずりオズのいた部屋に連行する。
「お、おい! こ、こ、この部屋には何もねえ! な、何する気だ?!」
「まあそうだな。お前ら六道の辻に行け・・・いや地獄道だな。逝け」
首を跳ね、部屋をくまなく物色、隠し部屋があることがわかっていた雅は隠し部屋をこじ開け5千カラットはあろうかと思われるダイヤモンドの原石が二つも回収した。
「雅、こいつはいい金になりそうだな。アドロフは30だけ、弾薬はこの一箱だけ押収した以外なかったぞ。手下の持ち物はクソきたねぇガラクタばかりだったぜ。手が汚れちまったじゃねえか、クソが!」
拳銃をまだ隠し持っていないか確認に行った龍は、戻ってきてそのダイヤモンドの大きさに感心しつつも悪態をついた。
「龍、ソエジマビルってよ、お前の店が荒らされた時に四人で半壊させたビルだよな。どうせなら貰っちゃわね?」
「なんだよ雅、言葉遣いが学生ん時みてえに戻ってんじゃねえかよ。やんちゃしてえお年頃か?」
「うっせえな。元々こんなんじゃないか。中将なんてあんなもん運でなっただけだっつうの。俺だって肩の力抜いて楽したいんだよ。ったく、やりたくないのによ」
「か、雅、こちらの保護完了です。幸い傷病者はおりません。というかその話し方は?」
「ああ、ソフィアか。俺は元々はこんな話し方なんだ。今までは見栄張って偉そうに話してただけだっつう話なんだよ。で龍、ソエジマのビルぶんどってクランの拠点にしちまうってのはどうだ? 我ながらいい考えだろ。あいつ脅してうまく走り回らせれば、勝手に金稼いでくるだろうしな。ま、その前にゴースティンの街だな」
雅はそう言って部屋をでていき龍とソフィアが後を追った。
「金目のモンはたんまりあったかラーシュ? お前が、あんなにキレるとは思わなかったぞ」
「指輪や首飾りに魔道具もいろいろあったし、札束のシャワーができそうだよ。いいねぇ、億万長者だよぉ。通貨単位知らんけどぉ。ソエジマん時みたいにさぁ、なんかあいつの顔見てたらムカついてきてさぁ」
「ソエジマ、こっちでも阿漕な商売やってるらしいぜ。王都に行ったらあいつのビルぶんどるつもりだ」
「え、あいつこっちに来てんの?! そのついでにさぁ、アイツら全員に隷属魔術かけてパシりにしようよぉ。あ、それより今は会頭さんと商談だよぉ」
ラーシュの話では、捕まってた男はミルデ商会の会頭であるミルデ、運転手のスワッガと名乗ったらしい。
「ゴースティンの本店に戻る途中で捕まったんだってさぁ。ミルデさんが盗られたものは、返してあげていいよねぇ? あ、ついでに買い取ってもらう相談もできそうだよぉ」
「相当な量があるからな。ここで商談するのは、捕らえられていた女性陣やミルデさん達も気持ちの良いもんじゃないだろう。街についてからだな」
転移者である流人と呼ばれる雅たちの身分証はない。
会頭のミルデに、オズの言っていた流人の保護措置の事を確認すると、やはり本当の事だとわかった。
到着次第、手配をしてくれると言う。
また、首は腐っていたり検分不可能でなければどのような状態でも良いということがわかり、オズとヤジス以外の手下の首も凍結させて提出することにした。
ミルデの話では捕らえられていた女性達は、アンヴァルド辺境伯の令嬢と見られる一行だという。
その女性達は、ミーナによる精神安定と睡眠魔術をかけられ静かに眠っていた。
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