ゼウス ~Liam's P.O.V~


僕はリアム。

まだ未知の恥辱の探求中なのに転移に失敗してしまった敏腕マゾ艦長さ。

ああ、勘違いはしないでほしいんだけど浣腸には興味ないから。


「ここは・・・」

僕はこの空間が龍や雅の言っていた託宣を授かる間だと感づいたよ。

「主らの夢の中であるからして案ずる事なかれ」

「貴方がたは?」

「久しいな。人の子リアムよ、お前に加護を授けた時以来だな。とは言えお前は覚えておらんだろうがな。我の名はゼウス。人類の守護神・支配神などと思われておるが概ね間違ってはおらん」

概ねと聞いて僕はこう質問したんだ。

「概ね正解とは・・・? 仏教界や八百万の神々たちと協力関係にあると?」

「察しが良いな。オーディン殿達とも連なっておるというわけだ。大日如来殿と天之御中主殿は、予め、主の友に伝えておったようだがの」

「私に、御用で顕現されたのですか?」

きっと、お役目を言い渡されるのだろう。

あんまり、たいへんじゃないといいな、と思いながら聞いてみたのさ。

「左様。星の名はないが、主らのいた第七番太陽系第三惑星地球の下位惑星に転移させる。まずは、北極に近い隠された島へと、オーディン殿達から加護を授かった友とともに迎え。そこには、惑星に生きる者の根本を揺るがしかねぬ物の片方が眠っておる」

マジか・・・結構ヤバい感じがするなぁ。

でもさ、そこは僕だから、ついつい聞いてしまうんだよね。

「それは、大量破壊兵器とかそういう類の物、と思っていいんでしょうか?」

「使い道を違えたらそうなる物よ。それは、主の目で確かめるがいい」

「例えば・・・ビーム一発で星が壊滅するとか?」

「主が、今乗艦している艦も、そのような類であろう? 話を続けるぞ。それを見つけ出したら、大陸中央へ異界の者と協力者と移動せしめ、皆で、麒麟を解き放ってくれたまえ」

異界の者? 誰だろう・・・。

僕の知らない可愛い子だといいな、なんて思ってたら、大笑いされてしまった。

「ワハハハ。主は、本当におなごが好きよの。主もよく知っている者だ。さぞ懐かしく思うだろう」

「そうですか・・・それは、少し残念です」

マズい! これは失言だって僕思っちゃったんだよね。

そうしたらまた笑われたんだよ。

「ガッハハハハハ。主は、儂と変わらんのう。まあ、良い良い。その次にだ、人の子リアムよ。西の果てに、封印されている白虎を解き放ってほしいのだ。主を案内する聖獣も、遣わしておるからの安心したまえ」

大盤振る舞いだなって思ったよ。

だって、僕ごときの案内役なのに、聖獣様だよ?

「案内するために聖獣様を遣わすなどと、地球の方は大丈夫なんですか?」

「遣わしたといっても思念体のようなものよ。本体は、あくまでも地球の守護のためにあるのだよ」

なるほどね。

聖獣様本体や神々そのものは、やはり、あちらには行けないんだろうなって思ったね。

「さて、話の続きだ。主ら四人が、東西南北の四霊獣を解き放ったら、応龍と黃龍の封印を解き放つことができるだろう。結界を再び施せねば、地球からの転移被害者を抑えることができんのだ」

麒麟様や応龍様、黄龍様といい、白虎様といい、力は存分にあるのに、なんで封印なんかされているのって、思っちゃったんだよね。

つい、バカみたいに疑問を投げかけてしまったんだ。

「少々お待ちを! 何故、それを今この時に? それに霊獣様なんていう力のある存在が、封印されているなんて、おかしくないですか?!」

だってそうでしょ?

聖獣様や霊獣様たちのような上位存在を封印できるようなヤツは、下位世界ならばまず、いないはずなんたよ。

「そこなんだがの。最も警戒すべきと思われる相手の仔細は、ハデスから伝えてもらおう」

ハデス様と聞いて、僕はちょっと身構えてしまったよ。

だって、ハデス様って言えば、冥府を司る神様だからね。

そんでもって悪い想像してしまったよ。

「人の子リアムよ、我が名はハデス。お前の察する通りだ。転生した我らの父であるクロノス、そしてロキの落とし種である死の女神ヘルが、あちらの冥府に転生しておる。フェンリルやヨルムンガンドは、かなり力を落として転生したようだ。だがな、ヘルの力は然程劣ってはいないようだ」

うわぁ、終末戦争じゃんか。

ヤバいよ、この案件って思ったね。

もう心臓バクバクだし、つい素で言っちゃったよ。

「チョー最悪・・・。ガチでヤバい案件だよな・・これ。」

「四柱の女神でも、御しきれなかったのであろうな」

良かった!

スルーしてくれたって思ったけど、そのあとが壮絶だったよ。

「それでな、ヘルはガルムを。クロノスはテューポーンとエキドナの夫婦やヒュドラー、グライアイらを召喚し、それに加え地上にグリフォンやキマイラ、ミノタウロスを撒き散らした。度し難い事に、我が下僕であるケルベロスも従えている。どうやら、酒呑童子なる鬼の軍勢も、あちらの冥府に転生しているようだな。お前らが行く先で、対峙することになるやもしれん。もしケルベロスと相まみえることがあれば・・・厚かましい願いではあるが、どうかあやつを救ってやってほしい」

マジか!

いやもうヤバい人たちのオンパレードじゃないのさ!

どうすんだこれ。皆になんて言えばいいのだろうって考えちゃったよ。

そうしたら、ハデス様の横にゼウス様が並んで、僕に言ったんだ。

「済まなんだな。君や、君の友の四度にわたる転生での研鑽は知っておる。君らは、いつ転移してもおかしくないと予測しておったのだろう?」

「それは・・・そうですね。いつ巻き込まれてもいいように、仕事を選んできたのも、軍に入ったのも、知識だけではなく、身を持って経験を積むためでしたしね」

確かに4回も転生していて、これが5回目だ。

おまけに姓名も同じなんだよ。

あいつらにも必ず会ってるし。

それどころか、僕たち一人ひとり、スキルや記憶が蓄積されて残っているんだ。

この先、何かしらの目的が、絶対にあるに違いないって四人でずっと考えていた。

だからこそ、職業軍人としてだけではなく、色々な仕事をしてきたつもりだったのさ。

ま、たくさんの女の子にも会えていい思いもしたしね。

「だからこそだよ。人の子リアムよ、本当に済まない。君らに頼むのは、虫が良いのは分かっておる。だが、どうか同胞の力になり、彼らを救ってやってくれ。頼むぞ、人の子リアムよ」

そうか、僕たちは、この役目を果たすために、生き死にを繰り返したんだ。

僕らにできることをやっていこうと思いながら、遠くに消えてゆくオリンポス十二神とハデス神たちを見ていたんだ。


そしたら、聞き慣れた女王様の声がしたんだ。

「艦長! 艦長! 大佐! リアム! さっさと起きないと鞭打ちにしますよ! この雄豚が!」

アテナ女王様のそんな声を聞きながら、僕は目覚めたのさ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る