【雑談配信】昨日の配信について色々話そう【イケボ/マコトchannel】
王也さんとのコラボを終えた翌日、日曜日ということもあってゆったりとした雑談配信をしていた。
日本橋スキンヘッド:ケーキ屋なのにコーヒーが美味いのおかしくねwww
豚の餌:マコトくんがコーヒー飲んでる姿、絵になるだろうなぁ
「陰キャだから、なかなか会計に行けなくて、ずっとコーヒー飲んでるんだよね~。いや、ケーキとかパスタとかも頼むけどさぁ……」
スレイマンの星:あんなに配信してるのに、陰キャ拗らせてるんだwww
WELLFROG:面と向かって話すのは緊張するよね
「あ、やっぱりそうだよね? 配信上で話すのと、向かい合って話すのじゃ全然違うんだよね~。たぶん、一生店員さんに声掛けられる自信ないわ」
モネ:よく行くお店なのに、ダメなんだwww
アップルの人:向こうも、覚えてるんじゃない!?
「やっぱりそうかなぁ……?」
配信時間も1時間近くなっており、話題はいつの間にか、私がよく行くカフェの話になっていた。もちろん、私一人で行くわけでは無く、ほのかとデートするときに行くお店のことだ。
注文から会計まで、店員さんと話すことは全部ほのかにやってもらっているが、彼女と一緒に行っていることを話すわけにもいかないので、わずかに伝わり方がおかしくなっていた。
「あ、結構いい時間だし、配信終わろうかな」
カルボナーラ:えぇ~。もっと話したいな~
豚の餌:明日仕事だけどまだ起きれまっせwww
「今日は日曜日だし、ここまでだね。明日、実況動画出せると思うから見てくれると嬉しいな」
「今夜、君と夢で会えますように」
「SeeYouAgain」
マコくん最強卍:えぇ、本当に終わりなの? 寂しい~
スレイマンの星:おつマコ~!!
少し強引ながらも配信を終わらせる。スマホで自分のチャンネルを見て配信が止まっていることを確認してから、部屋の外にいるほのかを呼んだ。
実はまだ、明日出す予定の実況動画作りが終わってない。同時に、今日の雑談配信の取れ高を忘れないうちに編集しておきたい。さすがに私一人ではキャパオーバーなので、やりたがっていたほのかに手伝ってもらうことにしたのだ。
……正直、私のやりたいことに彼女を巻き込むのは、未だに悩んでいる。
ほのかは高校生であり――今は夏休み中なのでバイトか家にいるばかりだけど――まだまだ未来ある年齢で、大切な青春の時間を私の配信業の手伝いで奪っていいものなのかと。
幸か不幸か、
けれど、ほのかの意思を尊重したいし、私一人の動画編集に時間がかかるのも事実。
「真琴、こんな感じでどう?」
「え、字幕、いつもと違うじゃん。コレ、何で?」
ほのかが途中まで作ってくれた動画には、書体もカラーも、今までとは違うものになっていた。たしかに、コレはコレでいいとは思うのだが
すくなくとも、私の声と比較すると、可愛いピンク色の丸文字は似合ってない。
「可愛くて良くない? 他の人の動画見たけど、もっとカラフルだったよ?」
「えーあー、良いとは思う…けど…。うーん?」
「これダメ? じゃあ、マコトが話してる部分はいつもの黒字幕にして、こういう編集でツッコミ入れてる部分だけピンクにしていい?」
「ま、まぁ? それならいいかな?」
見慣れてないせいで違和感があるけれど、実際悪い動画になっているわけでは無い。むしろ、色合いが派手になっただけでもクオリティが上がってるように見える。
新しいゲーム実況のシリーズという動画だし、字幕や編集を変えるのはむしろアリか?
「そういえばさー、今日の配信、もう少しやればよかったのに~」
「……え、何で?」
2人背中合わせで動画編集をしていると、軽い調子でほのかが声を掛けてくる。
「今日の配信、ただの雑談だったじゃん? もう少しやれば、面白い話できたと思うんだよね~」
「そう? レウスさんとの話も出来たし、カフェの話も面白かったと思うけど」
「でもさー、マコトの自虐ってリスナーから見ると分かりにくいよね」
「……ほのかは何が言いたいの?」
「え、マコ怒ってる?」
「別に怒ってるわけじゃないよ。むしろ、ほのかの方がおかしいんじゃない?」
きっと、お互い編集作業が大変でイライラしているのだろう。珍しくほのかが遠回りな言い方をしていたということは、言いたいことがあるけれど言えないのだ。いまさら口ごもるような間柄でもないのに。
「ほのか、何か言いたいことがあるんでしょ? はっきり言いなよ」
「……今日の雑談配信、もっとやっても良かったんじゃない? カフェの話盛り上がってたし、スパチャが連続で流れてた。リスナーたちも名残惜しそうだったし」
「でも、ほのかに動画編集のやり方教えるって約束があったから……」
「またそうやって、私を理由にするの!? 真琴はいつもそうだよね。ズルいよ」
――は? ズルい?
私がどれだけほのかのことが好きでいるかも知らないくせに。
「私はリスナーよりほのかの方が大切だよ!!」
「それは分かってるけど!! でも、今の真琴はどっちつかずじゃん」
「違う!! 私は、ずっとほのか一筋!!」
思わず手を止めて叫んでしまう。私が声を荒げると、驚いたような顔をして振り返った。柔らかい目元は微かに潤んでいる。
――泣いてる? なんで!?
「ほのか? ご、ごめん。そういうつもりじゃなくて」
「あ、ううん。私も言い過ぎちゃったの。ちょっと焦りすぎちゃって……」
……焦りすぎた?
「ごめんね真琴。私、本当は分かってるんだよ。真琴が配信を
はぐらかすような意味深な視線を浮かべて、瞳を潤ませたまま私へと抱き着いた。ヒクヒクと喉を鳴らしながら泣く彼女を追求することは出来ず、かわずかに漏らした『焦り』の意味は聞けない。
「アレコレ言っちゃってごめんね真琴」
「ああ、いや、私の方こそ。おっきい声出してゴメンね。じゃ、続きやろうか」
微かに胸に残る違和感は……見ないフリをした。
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