【S&F配信】少しだけガチでゲームやる【レウスchannel/イケボ】

 あ、切り抜き用にスクショ撮るの忘れた……。

 もう一度Twitterを開いてみても、すでに他の話題に流されている。その勢いの早さが配信者業界の厳しさを暗示しているかのようだ。いや、少し考えすぎかもしれない。


『マコトはともかく、俺もか?』

『お2人のタイプは違えど、それぞれ声の良さがあると思いますよ』

「一瞬だけでもトレンド入り出来て嬉しいな~」


ビスケット:もっとツイートしたら、もう一回トレンド入りするかな?

トーマの母:ほかのVとかも配信始めたし、もう無理じゃない?


ほのか:Wイケボって、他の人のことじゃないよね?


「……!?」


 見覚えのある名前に思わず胸が跳ねる。コメント欄では初めて見る名前とはいえ、一般的に見ればありふれた名前。似たような名前のコメントはたくさんあるし、『穂香』や『穂乃果』というアニメキャラの名前もよく見ることを考えると、別人かもしれない。


 ……初期アイコンというのが、少し引っ掛かりポイントではあるけれど。


『では、マコト、声でトレンド入りしたのなら、次は試合に勝ってトレンド入りするぞ!!』

「……え、ああ。そ、そんな上手くいくかなぁ?」

『マコト様? 大丈夫でしょうか?』


「あ、大丈夫です。トレンド入りしたのが嬉しくて、めちゃくちゃTwitter見てました」

『セバスチャン、写真は押さえてあるか?』

『ええ、もちろんでございます。関係ありそうなツイートの類も記録残しております』


 突如コメント欄に現れた『ほのか』という名前に動揺してしまった。もう一度、確認しようと遡ってみても、見つけることは出来ない。もしかしたら、コメントを消したのかもしれない。


『さて、次に選ばれたステージは潜水艦の中か……』

「狭いので接敵しやすく、判断が重視されます。僕の読み合いがハマらないことが多くて、苦手なステージですね」

『なるほど、メタ読みが常に優位を取れるわけでは無いのか』


『だったら、メタ読みが出来るように戦場を操作すればいい!! 単純なエイム勝負では俺の負けは必須となるわけで。あえて下手なフェイントを入れることで、土俵を変える!!』

「……なかなか、無茶なこと言い出しますね。分かりました。付き合いますよ!!」


スレイマンの星:な、なんかめっちゃ通じ合ってる?

カルボナーラ:イケボ同士相性良かったり……

豚の餌:これは、グ腐腐な展開ですか!?

ステップステップ:レンマコはあります!!


『傲慢お坊ちゃまとダウナーショタボ……。アリですねぇ』


豚の餌:メイドさん分かってんねぇwww

ビスケット:めちゃくちゃ漏れてる!?

スレイマンの星:主人に対して、その感じで大丈夫そ?


『おい、セバスチャン? 変なことを口走るんじゃない。っていうか、その怪しい目つきはなんだ……!?』

『怪しいとは失礼ですね。新たな可能性に思いを馳せているだけですよ』


「あんまり僕とレウスさん的には良くない可能性だと思うんだけど!?」

『おい、俺たちにそういうイメージが付いたらどうするんだ!?』

『そういうとは、どういうイメージですか? 偏見の目で見てらっしゃるのはお2人の方ではないですか? コレは極めて文化的で新時代的発想であり……』


豚の餌:え、この人、私?

カルボナーラ:(オタク特有の早口)

ステップステップ:草


『お、おお? い、勢いが怖いぞ……? あ、やっば!!』


 隣からの圧に押されたのか、レウスが操作するゲームキャラクターが一瞬不安定な動きを見せる。当然、それを好機として相手は攻めてくるが、彼を囮にして一気にダブルキルを披露した。

 勝利メッセージが流れて、レウスから感嘆の声が聞こえた。


『こ、これも作戦の内だ!!』

『声が震えてらっしゃいますよ、お坊ちゃま』

「ま、まぁ、勝ちは勝ちってことで?』

『その通りだな。あと、お坊ちゃまと呼ぶな!!』


ステップステップ:今日、初勝利おめ~

カルボナーラ:この2人の絡みめっちゃおもろい!!

豚の餌:マコくんが2時間もゲームやるの初?

A~A~:あんまり無いよね


『さて、無事勝てたし、いい時間なので、これにて配信を終了とする。この配信は『あなたのための神天皇グループ』の提供でお送りした!!』

『レウス様は囮になっただけですが……?』


「まぁ、そこは目をつむる方向で……。じゃあ今夜、君と夢で会えますように。SeeYouAgain」


スレイマンの星:めっちゃよかった~!!

A~A~:このコラボ、また見たい!!


『……配信切りました?』

「あ、ハイ。切りました」


『マコト!! 今回はコラボしてくれて本当にありがとう!! 視聴者の反応もかなり良かったし、何よりトレンド入りという快挙を達成できた!! ゲームの上達も見込めるし、コラボの流れも掴めた。とても有意義な時間だった。ぜひ、また今度コラボしてほしい!!』


「あ、ありがとうございます……?」

『レウス様、勢いが強すぎてマコト様が混乱しております』

『あ、ああ。すまない。マコトchannelでは、自分で切り抜き動画をあげる予定だろう? あとでレウスの2次元イラストを送っておく』


「レウスさんの方では投稿しないんですか?」

『まだ勉強途中なのでな。それに俺もセバスチャンも、他に仕事を抱えていて動画作成にまで手が回らないんだ』


『レウス様、私は余裕がありますから、作れますが?』

『いや、そこで無理しなくていいんだよ……!! まぁ、それより、今日は本当にありがとう。また今度コラボできることを楽しみにしているぞ』


 最後まで溌剌としたまま、レウスが通話を切る。彼の声が聞こえなくなると、なにやら世界に一人に残されたような錯覚を感じた。たぶん、配信が楽しくて名残惜しいのだろう。


「ほのか~。お待たせ~。すっごい緊張した~!!」

「真琴お疲れ様!! 色々あったけど、面白かったね」

「うん。私もあんな風に人を引っ張っていきたい。もっと、もっと配信頑張って、いろんなことをしてみたい。今からゲーム実況撮ろうかな」


「もう夜中だよ!? 私寝るんだからやめてよ~」

「さすがに冗談。とりあえず、切り抜き動画作って……。あ、スクショ!!」


 ほのかに抱き着いたまま、耳元で叫んでしまった。目を丸くしながら細い指でデコピンされる。

 全然痛くないけれど、可愛らしく頬を膨らませる彼女を見てときめいてしまった。


「Twitterでトレンド入りしたのに、スクショ撮るの忘れたんだ……。レウスさん――っていうかセバスチャンが撮ってたりしないかな」

「あ、私あるよ? 送ろうか?」


「……え、何を?」

「だから、マコトがトレンド入りした時のスクショ。トレンド入りしてるところと、それっぽいツイート、いくつか撮ってあるの」


「……え、何で?」

「真琴、配信中で画面残しておけないだろうから、私が代わりにやっておこうと思って」


 彼女のニコニコとした笑顔からは『私も手伝わせて』という表情が見て取れる。拒むこともできるが、切り抜きを作るのに困るだけだし、そこまで神経質になる理由も無い。

 なにより、彼女が本気で手伝いたいといっているのを無下にできるわけも無かった。


「……分かったよ。編集ソフトの使い方、教えてあげる」

「いいの? ヤッター!! 私、マコトのために頑張るね!!」


 はしゃぐ彼女に対し、巻き込んでしまった罪悪感を抱きながら、独りぼっちの編集作業が少しは楽しくなるかもという期待に胸を膨らませた。

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