【仲直り】喧嘩した友達と仲直りする方法3選【関係修復】
優里ちゃんのおかげで、動揺していた心も落ち着いた。昼を食べ終えて教室に戻ると、美紀と翔太が私の顔を少しだけ見て、明らかに目を逸らす。
まだ少し状況が分かっていない健斗だけが気まずそうに俯いた。
……私の味方にはなってくれないらしい。
「……ほのか、美紀たちとなんかあったの?」
「あ、奈緒!! ちょっとね……」
事情を話すようにと言われたが、それよりも先にやるべきことがあると言って、美紀たちの方へと向かう。
「……翔太、美紀、ごめんね。私が良くないことしちゃった」
「謝られても、意味わかんねぇから。好きが分からないとか、中学生みたいなこと言って、人の告白踏みにじって楽しいかよ!!」
やっぱり、翔太がなぜ怒っているのか理解できない。私のことがスキなら、怒ったりしないはずだ。つまりは、私のことが嫌いで。……だったら怒る理由もないような?
「だって、翔太は友達じゃん? 付き合うとか、分かんないよ」
「結構前からさ、態度で分かるくない? LINEでそれらしいことも言ってたみたいだし、ほのかのこと特別扱いしてたの、気づかなかった?」
「……は? だって私、翔太に特別扱いしてほしいなんて言ってない。普通にしてほしかった」
やっとできた普通のお友達。私の事情を知らずに接してくれる大事な友人だと思っていた。恋人の真琴や、親友の奈緒とも違う。
それを勝手に覆したのは、翔太の方だ。
「普通って何だよ!! じゃあ何か!? お前を好きになったのが間違いだったとでもいうつもりか!!」
「それは、間違ってるよ。だって、友達を好きになるなんて変じゃん!!」
「何、人の心を変とか。どんだけワガママなのさ。ほのかの方が、よっぽど変だよ」
どうしてわかってくれないのだろう。
どうして理解できないのだろう。
「な、奈緒。私、間違ってないよね? 翔太たちの方がおかしいよね!?」
「……残念だけど、皆から見たら、ほのかの方がおかしいよ」
あ、独りぼっちになっちゃった。
また、か……。
放課後、1人きりの教室に夕日が差し込む。美紀や翔太に話しかけようとしたが、無視されたり睨まれたりして、結局話すことはかなわなかった。私の間違いとやらは分からないままだ。
「あ、ほのか!! よかった、まだ居た」
「奈緒? どうして?」
真琴に会いたい。その一心で帰り支度を始めると、慌てた様子で奈緒がやってくる。しかし、美紀や翔太の姿は見えない。……間違いなく、私を置いて帰ったのだろう。
「ほのか、私達1年の時から友達だったよね」
「そう、だね。席が近くて、話しかけてくれたんだった」
いまさら思い出話なんて、最悪の結末を迎える準備としか思えない。真琴さえいればいいと思ってたはずなのに、奈緒が離れていくことに息苦しさを感じる。
好きな人は、1人きりのハズなのに。
どうやら、私はまたおかしくなってしまったようだ。
「……翔太とか、美紀とか、健斗とか、皆から見たらさ、ほのかの言ってることは支離滅裂でおかしいよ。友達はずっと友達で、恋人はずっと恋人で、親友はずっと親友で。でも普通に考えたら、そんなはずがないんだよね」
「どうして……。嫌いな人は、ずっと嫌いな人のままでしょう? だったら、好きな人も、ずっと好きなままじゃないとおかしいよ」
そうじゃなかったら、お父さんとお母さんが私を嫌う理由が分からない。
そうじゃなかったら、真琴が私をスキな理由が分からない。
「違うよ、ほのか。それは間違ってるんだよ」
鋭いナイフを突きつけられたような一言。ずっと親友だと思っていたのに、奈緒は私を嫌いになったらしい。そして、私はその原因が分からない。
「間違ってるけどさ。
「……へ?」
「今日、ほのかの同居人って言う人に会ったよ。伝言を頼まれた」
真琴が? わざわざ学校に?
陽の光が苦手で、外に出るだけで目つきの悪さが増すのに? 夜中誰かとすれ違うたびに、心臓が止まるかのように飛び跳ねて逃げるのに?
私のような明るい人がタイプだと言いながら、目の前にすると挙動不審になって、何も言えなくなってしまう口下手なあの人が?
全部、私のために?
「君は間違ってない。悪いのは全部私だ。……最初に聞いた時、意味が分からなかったけれど、ほのかの言葉を聞いて、事情を知ってる私は、なんとなく察したよ」
悪いのは私じゃなくて、真琴?
「ほのかが感じてる気持ちは全部正しいんだよ。だって、そう教わっただけなんだから。つまりは、教えた誰かが悪いだけで、ほのかは何も悪くない。悪いのは、
教えてくれなかったお父さんとお母さん。
教えてくれた真琴。
……だったら、私はこれからどうすればいいのだろう。間違ったまま生きろとでもいうのだろうか。正解を教えてもらえないまま、普通になれないまま生きていけと?
なんて無責任なのだろう。なんてワガママなのだろう。
私よりもよほど極悪ではないか。
違う。教わろうとしなかった私も、疑おうとしなかった私も、全部悪いんだ。
「もう、どうすればいいのか分かんないよ」
「だったら、私に聞けばいいじゃん!! 親友なんでしょ!!」
親友? 嫌いになったはずなのに? まだ、親友でもいいのだろうか?
「私のスマホ見て!! 美紀たちのLINEもインスタも全部ブロックしてやった。皆から見れば、美紀の方が正しいかもしれないけど、私から見れば美紀の方が間違ってる!!」
「私は、私の正しい方を信じる。それは、ほのかと一緒に居る方が正しいって言ってる」
奈緒の操作する画面には、確かに彼女たちの表記がない。微かに残されたメッセージには、捨て台詞のような糾弾するメッセージだけ。
「ほのかが普通じゃないって知ってる。ほのかが間違ってるって知ってる。私はほのかの全部を知ってる。ほのかも、私の全部を知ってる。だからさ、私がほのかの普通を作ってあげる!!」
「私、普通になれるの? どうやって……?」
「親なんかいなくても、ほのかを大切にしてくれる大人と、ほのかを大切にする親友が居れば、人生どうにだってなるよ。普通過ぎて、物足りなくなるぐらいにさ」
ああ、やっぱり怖い。
親友だと言ってくれる奈緒が、酷く恐ろしく思えた。翔太の時と同じ、濁った愛情が感じられる。
一方的で、傲慢で、わがままで、貪り尽くすような、身勝手な感情。
それは、私も同じだけ相手に与えている。けれど、それを知覚することは出来ない。
「それと!! 同居人からもう一つ伝言。友達は大切に。だってよ!!」
私の顔に浮かんだのは、目の下に隈を浮かべた真琴が、引きつったようなヘタクソな笑顔で微笑んでいる顔だった。見慣れてしまって、一番安心できる顔。
「奈緒、信じてるね。あと、伝えてくれてありがとう」
「いいよ。親友だもん」
奈緒に抱いていた恐怖は、いつの間にかなくなっていた。それと同時に晴れ渡るようにすっきりとした風が胸を通り抜けていく。
私の普通を見つけるまで、もう少し頑張ろう。真琴の為にも。
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