【お悩み相談】美少女JKに、学校での様子とか悩みとかを聞いてみたwww【陽キャ/パリピ?】

 昨日の配信は、ちょっとしたアクシデントがあったおかげで、かなり盛り上がった。そのシーンの切り抜き動画を作り終えたところで、少しゲームがやりたくなって、動画を回し始める。


「ついでだし、実況も撮るか~」


 鬱陶しい長い髪をまとめて、可愛らしいタンブラーに水を注いだら、ゲームスタートだ。最近はソルファイの動画が続いていて、他のゲームをやってほしいという要望が届いていた。せっかくだし、キャラチェンする前にやってたストーリー主体のゲームの続きをやるろうかな。


 ゲームにあまり興味を示さないほのかも、私の実況を見てこの先の展開がどうなるのかを気にしていたので、あの娘のためにもなる。一応、私はクリア済みだが、実況などを始める前のことだ。


 飛ばし飛ばし見ていたから、ストーリーよく分かってなかったんだよなぁ。


「ああ、皆が、カッコいいって言ってたの、ここか~。確かにいいね」


 主人公がヒロインを守ると誓うセリフで、思わず感動してしまう。良いゲームだと思っていたが、改めてストーリーを見ると、奥深さが違う。

 ……私の為だけにゲームをしていた時は、クリアできればそれで終わりで、こんなに熱心に楽しもうなんて考えなかったな。ほのかが、私の実況を見たいと言ってくれるから……。


「あ、そういえば、前の動画のコメントに、このセリフ言ってほしいって言われてたね。主人公の後にセリフ読みするの恥ずかしいけど、やってみようかな」


 実況用の声で宙に向けて説明して、改めてセリフを読み返す。少しだけ喉のコンディションを整えたら、先ほどの主人公の情熱を思い起こしながら、セリフを読み上げた。


「俺は、必ずあの娘を救う!! 悪魔でも死神でもいいから、さっさと力を貸せ!!」


 いつもとは違う乱暴な口調。少しマコトとしての性格からは外れるが、それもこれも、この後のセリフを引き立たせるための演出だ。


「……リリシア、君を愛している」


「ふぅ~。こんなんでいいのかな? でもやっぱり、プロの声優さんの方が上手だよね。僕もそっちの方がいいと思っちゃったな」


 1人で何をしているんだろうという恥ずかしさに襲われて、ある程度キリの良いところで実況を終わらせてしまう。あとで編集するときに、もう一度悶え苦しむパターンだろう。


 いつもなら、すぐに編集を始めるところだが、顔が熱くて、とてもじゃないが動画編集をする気力が生まれなかった。気分転換に、アイスでも食べようとリビングに行くと、ちょうどいいタイミングで、ほのかがバイトから帰ってきたようだ。


「ほのか、おかえり~」

「わぁ、マコ~!! 出迎えに来てくれたの? そんなに私のこと好き?」


 ……本当に単なる偶然だが、とりあえず頷いておいた。


「はぁ、マコのバカ。どうせ、アイス食べようと思ったら、ちょうどいいタイミングで私が帰ってきただけでしょ。なーんで、そんなしょうもないカッコつけするのかな~?」


 私の考えを見通したようにため息を吐く。ジト目で睨みながら、私の長い髪を鞭のように振り回して、腹の辺りを叩いてくる。物理的な痛みはないが、まんまと見栄を張ったのを見透かされたので、心が痛かった。


「せっかくきれいに伸ばしてるし、編み込んでポニテとかにしようか?」

「まって、勘弁して!! あんな、おしゃれでキラキラした髪形にされたら、ハゲる!!」

「いや、ハゲないし。むしろ、ハゲの人に失礼だから」


 ほのかもたいがい失礼なツッコミをしていた。

 リビングに置かれたローテーブルに腰かけて、私の作った生姜焼きを食べ始める。なんとなくもう少しほのかと話したくて、向かい側に座ろうとしたら、隣に座るように呼び止められた。


「こっちじゃないとやだ。って言ったらどうする?」


 わがままな子供のように不満そうな声を上げる。とことんほのかに甘い私は、言われた通りに隣に座り直した。


「そういえば、ほのか。学校は楽しい? 勉強ついていける?」


 月曜日に担任の先生から嫌なことを言われたと言って不機嫌になっていたことを思い出して、お節介な母親のようなことを訪ねてしまう。ただの幼馴染というだけで、ある意味他人なのに、親のような顔をするのは迷惑だっただろうか。


 少し心配になって、ほのかの顔を覗き込むと、特段気にしている様子はなく、楽しそうに話し始めた。


「最近はね~、高野って担任がちょっとうざいけど、皆とお喋りするのは楽しいよ。奈緒って友達が居るんだけど、ちょっと真琴に似てるの」

「私に似てるの? ダメだよほのか、お友達にそういう悪口言っちゃ」

「自己否定がすごくない!? やっぱり、真琴に似てないかも!?」


 私と似ているということは、いい年してまともに人と喋れず、年下の女の子に手を出しながら、イケボ配信者を自称してファンに囲われている激やばレズ社会不適合者ということだ。……さすがに悪く言い過ぎか。


「そうじゃなくて、真琴みたいに優しくて頼りになるってこと」

「私が優しいのはほのかに対してだけだよ?」


 視聴者にも優しいが、アレは種類が違うわけだし。


「そう。奈緒も、私にだけ優しい。……いや、他の娘にも優しいけど、私のことを特別扱いしてくれてる気がするの。それに、ちょっとだけ事情を知ってるから」


 ……それは、とてもいいことだと感じた。

 私以外にも親との確執を相談できる相手はいた方がいい。ほのかの望む、普通に近づくという目標の為にも、その娘と仲を深めるのは好ましい状況である。願わくば、私が守れない時にほのかを助けてくれる存在であってくれればと思うだけだ。


 すっかり夕食を食べる雰囲気はなくなっており、食べかけのサラダとお肉を残したまま、授業が難しいという話や、ほのかの友達のギャグが滑った話を続ける。

 ……顔も知らない翔太くん、君のギャグセンスは私と似ているよ。仲良くなれそうだね。


「あ、そうだ。日曜日、友達と遊びに行くことになったんだ」

「へぇ、いいじゃない。いいよいいよ、いっぱい楽しんできて。お小遣い足りる?」


 高校の学費を除いて、スマホ代や定期代は彼女のバイト代からまかなっている。もちろん、私の収益からもお小遣いをあげているが、普通の娘よりは我慢させてしまっている。

 休みの日もほとんどバイトばかりなのだから、友達と遊ぶ時ぐらいは何も考えず楽しんでほしかった。


「お小遣いは大丈夫!! バイト代出てすぐだから」

「ならよかった。でも、足りなくなったら、遠慮しなくていいからね?」


「あ、そうだ、聞いてよ!! 美紀って言う友達がね。あ、今回遊びに行くって言いだした娘なんだけど、その娘が、私のこと誘うの忘れたんだよ。酷くな~い?」


 本当に怒って糾弾しているような口調ではなく、冗談半分という程度だった。陰キャの私としては、悪い方向で考えてしまうが、本人があっけらかんとしているので、考え過ぎなのかもしれない。

 まぁ、高校時代、友達いなかった私の想像なんて、当てにならないか。


「私、放課後ほとんどバイトで居ないのにさ~」


 その後も続く軽口と遊びに行く機体の言葉を聞き続けて、微かな違和感を抱く。話が進めば進むほど大きくなっていくが、きっと私の気のせいだろう。


 そうでなくては、こんなにも友達を信用して楽しそうに語るほのかが救われない――。

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