【コラボのお願い】懲りずにコラボ配信頼んでみたwww【リベンジ/脱陰キャ!?】
新しい配信形式を取り入れてからチャンネル登録者数はずっと上がっている。視聴者からの要望で、私のボケやイケボをまとめた切り抜き動画もたくさん上げた。当然、それらの再生回数もかなり高い。誰がどう見てもキャラチェン成功と言えるだろう。
しかし、私には心残りがあった。
「ほのか、私は、前のコラボ配信が失敗だったと思ってる」
「……まぁ、そうだろうね。真琴、全然喋ってなかったし、たまに相槌打つ時だって、声引きつってたし、イケボ配信者として呼ばれたにしては、声キョドりすぎててキモかったし」
「うん、言い過ぎ。言い過ぎだから。泣いちゃうよ!?」
ソファに並んで座ったまま、無表情のほのかに言葉のナイフで串刺しにされてしまった。いや、胸痛すぎるんだけど……。胃が重いっす。
「でもズバッという私が好きでしょ?」
まぁ、その通りでもある。変に隠されたり気を使われたりする方が苦手だ。ほのかは少し面倒な性格をしているが、こういう意味ではさっぱりしていて、一緒に居て気が楽だ。なにより、私にあれこれ言ってるほのかの表情がとても楽しそうで、めちゃくちゃ可愛い。
「で、失敗だったから何? いまの真琴は、いやマコトは、コラボなんてしなくても伸び始めてるし、配信者としてはそれでいいんじゃないの?」
「……うん、ユーチューバーとしてはそれでいいのかもしれない。けど、私は後悔してるんだ。レナさんやヴォイドさん、らんさんには迷惑を掛けた。それ以上に、楽しみにしてたリスナーを裏切った」
私という人間は後悔の連続だ。色々なことから逃げたことも、ほのかを守る手段を間違えたことも、全部後悔している。それでも立ち上がれるのは、隣に座る少女のおかげなのだ。
「ほのか、私に勇気を頂戴。私の全部をあげるから」
「やっぱり真琴はかっこつけだね。そういうところが好きなんだけどさ」
「はぁ、1回しか言わないからね?」
「マコトならもっと面白い配信が出来るでしょ!! レナちゃんともっと仲良くなってサイン貰ってきて。ヴォイドさんにゲーム教ったほうがいいよ。らんさんの配信をもっと勉強したら?」
息を切らせながら彼女は私を叱った。その温かい言葉だけが私を動かす原動力だ。
「ほのかの為に、もう1回コラボしますか~!!」
「うん、頑張って」
いつかと同じように。その時よりも熱を帯びて、彼女は私を送り出してくれた。
善は急げ。ということで、その日のうちにメッセージを送り、もう一度話したいとお願いした。ヴォイドさんとらんさんはいつでもいいと言ってくれた。レナさんとオタクさんも学校が終わった後なら大丈夫とのことだった。
はやる気持ちを抑えきれなくて、その日の夜にもう1度話すことになった。何を言うべきか分からないし、不安や緊張もある。コレは根が陰キャだからしょうがない。
通話に入る前におまじないのようにほのかの名前を呼びまくってたら、普通に用事があるのだと勘違いされて、彼女が部屋に入ってきてしまった。という話は置いておこう。
のかさん、マジサーセン(謝る気ない)
「皆さん、わざわざ集まってもらってすみません」
『いえいえ。それより、先週はコラボ配信ありがとうございました。その後の連絡とか、何もできずにすみません』
『それで? コラボが終わったのにもう1回話したいってのは、どんな用かな? プロゲーマーになりたいって言うなら、大歓迎だよ~』
ヴォイドさんが調子を崩すように言う。彼なりに私の感じている負い目を拭い去ろうとしているのだろう。しかしこの負い目は、私が負うべき責任だ。尻拭いをしてもらうわけにはいかない。
「前回のコラボ配信、盛り上げることが出来ずすみませんでした。皆さんにも迷惑を掛けましたし、視聴者の期待も裏切ってしまいました。各チャンネルで色々、お話があったということもわずかに知っています。それについても申し訳ないと思っています』
『え、なんかあった? 私分かってないんだけど、何の話!?』
オタクさんから何も聞かされていないであろうレナさんだけが蚊帳の外だったが、3人には心当たりがあるようで苦虫をかみつぶしたような声を漏らした。
『オタク、マコくん、なんかしたの?」
『うるせぇな。あとで教えてやるからとりあえず黙ってろ。シリアスが崩れる!!』
『そういうことを言っちゃうほうが崩れるんじゃないかなぁ~?』
らんさんのほんわかとしたツッコミを無視して、ヴォイドさんがため息を吐いた。マイクの向こうからギシギシという音が響いてきて、体勢を変えたことが窺える。
『ただ謝りたいって話じゃないんでしょ? 俺だったら知らんぷりして逃げ出すようなことなのに、マコトくんは、そうしなかった。それはどうしてかな?』
「僕は、もう一度、コラボ配信がしたいと思っています。僕の失敗をなかったことにしたいわけじゃない。ただ、皆さんに、視聴者に楽しいと思ってもらいたいんです」
『もう1回遊びたいって話? 私はいいと思う!! オタク、いいよね?』
『いいも悪いも無い。お前がやりたいって言うなら、俺は全力で応援するし、必要なことをするだけだ』
『私も、皆でゲームをやるのは楽しかったですし、マコトくんが頑張りたいって言うなら応援しますよ』
『……ま、俺も賛成かな。ゲームは楽しんでなんぼだし、配信も同じでしょ?』
『ただまぁ、レナの意思を尊重したいってのは一番ですけど、スケジュール的に厳しいなとは思っています。2回目の企画は練っていなかったし、折角のコラボでただゲームをやるって言うのも味気ない。かといって、新しい企画を練れる時間は無いです』
『そうだね。申し訳ないけど、俺は夏頃に開催されるゲームの大会に出場するからね。練習のことを考えたら今月、下手すれば今週までしか遊んでいられない』
ヴォイドさんは冷めた声で『それがプロってものだから』と言い放った。彼は私達とは違って配信が本業ではない。プロのゲーマーなのだ。
『私も、夏休みに向けて個人配信の企画考えたり、今度出すグッズのことも考えなきゃいけないし……』
らんさんも同じく、長らく配信者を続けているがゆえに忙しい、と言った。オタクも同じように声音は硬いままだ。学生であるため、配信業ばかりに目を向けるわけにはいかない。
「大丈夫です!! 企画なら、僕が考えてきました」
最初のコラボ配信で、他人事だと思って聞いていた話。今になって自分が企画を出す側になって苦労するだなんて考えなかった。ほのかの為と言いながら何もできなかった。そんな自分を恥じ入るように必死に考えてきた。
「私が考えてきた企画は……」
『なるほど。なかなか面白くなりそうな、いい企画ですね』
『……私よく分かってないんだけど、オタクの言う通りにすればいいの?』
『わぁ、楽しそうですね』
『へぇ、なかなか面白いこと考えるね。ゲーマーとしても腕がなるよ』
ほのかの為に、必ず成功させてやる!!
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