【コラボ配信】初!! イケボ陰キャがコラボしてみた【レナチャンネル/桃涼らん/Voidogames】

 ついに迎えた金曜日。緊張しすぎて意味も無く机を拭いてみたりしている。

 配信が始まる前にほのかとお喋りでもして心を落ち着かせたいが、あいにくあの娘はバイトに行ってしまっている。……せめて声が聞きたい。


 緊張したまま配信開始10分前になる。直前の打ち合わせをするので、レナさん達と通話を繋げた。配信に声が載っていないことを3回確認して、挨拶をする。


『コラボ配信ってことで、いつもと違うかもしれませんが、頑張ってください。オタクとしてめちゃくちゃ応援してます。それとマコトさん、あんまり気を張らなくていいので、もっと自由にしゃべってください』

『そうだよ!! せっかくイケボなんだから、もっと喋って~。声聞きたい~』


『無理しない範囲で頑張ってくださいね、マコトくん』

『失敗しても平気平気。俺だってただのゲーオタだしね。もっと楽しく行こうよ』


 4人からそれぞれ励まされて、気恥ずかしくなる。自分の積極性の無さとコミュ力の低さは自覚していたが、配信者になってからはほのかとリスナーぐらいとしか喋ってこなかったため、余計に悪化していた。

 だからこそ、今回のコラボ配信は、自分を変えるための一歩になるはずなのだ。


『が、頑張ります!!』


『マコトくんの行動心が見えたところで、配信始めよー!!』

『……向上心って言いたいのか? 微妙に使いどころ間違ってるし。前途多難だな』


 レナさんとオタクさんの軽快なやり取りを経て、わずかに空気が緩んだ。同時に配信がスタートして、コメント欄が一気に流れ始めた。


スレイマンの星:コラボ来た~

ステップステップ:こんマコ!!

豚の餌:始まった!! こん~


『こんちゃ!! 今日は初めましての人も多いかな? レナチャンネルのレナです。いつもはTikTokで活動してます。じゃ、今日いっしょに遊んでくれるメンバーを紹介するね』


『まずは、可愛い声のVtuber、桃涼らんちゃん!!』


『フルーツ大好き、暑いのは苦手なVtuber、桃涼らんです。コラボってことで緊張してるけど、皆に楽しんでもらえたら嬉しいです!!』


豚の餌:マジで声可愛いじゃん

超高層ビル:推しと推しのコラボとか神


『次!! 超絶イケボのマコトくん!!』


『あ、えと、こ、こんばんわ……。マコトです……』


ビスケット:あれ? マコくん挨拶終わり!?

スレイマンの星:陰キャ出てて草

カルボナーラ:マコトくん、頑張って~


『最後に、めちゃくちゃゲームが上手い人!! ヴォイドさん~!!』


『どうもめちゃくちゃゲームが上手いヴォイドでーす。コラボでも全力でゲームを楽しんでいくのでそのつもりで』


ステップステップ:本当にヴォイドさん居る!! めっちゃ好きなのにYouTubeやってるの知らなかった

ビスケット:この人、有名な人? プロゲーマーなん?

日本橋スキンヘッド:ソルファイの大会で優勝してた気がする


『今日はこの4人で、ソルジャー&ファイトっていうゲームをやっていきまーす。じゃ、せっかくプロゲーマーが居ることだし、ヴォイドさんに説明してもらおうかな~?』

『えぇ? 急に言うじゃん。えーなんだろ。ギャルにもわかるように言うなら、銃を撃ちあうゲームです。基本的には2VS2で戦うことになる……ぐらい?」


『めちゃくちゃ流行ってるゲームだし、説明とか要らないんじゃ……?』

『それはそう!! やったことないけど、配信で見たことあるよ~って人も多いんじゃない?』


『私の友達もやってるって言うから興味沸いた感じだしね』


ビスケット:マコトくんも配信でよくやってるよね

アップルの人:4人ってことは戦うん?


『で、さっそくなんだけど、ゲームやりたいからチーム分けしよっか』

『やっぱり、レナちゃんとヴォイドさんチームVS私とマコトくんチームって感じかな?』


『最初はそんな感じでいいんじゃないかな? 少し遊んだらチーム分けも考え直そうか』

『あ、1VS3とかも出来るらしいし、プロゲーマーVSうちらってのも良くない?』


『いいねぇ、全員叩きつぶしてやるよ』

『えー、プロゲーマー怖~い。初心者に優しくしてよ~』

『レナちゃん、オタクは手加減しないことが優しさだと思ってるんだよ。そして、私も全力で勝ちに行くからね』


豚の餌:可愛い声して、狂犬みたいなこと言ってるwww

超高層ビル:私の推し、尊いわ~


『じゃ、VC分けて、それぞれのチーム内だけで話せるようにしようか』


GAMESTART!!


『マコトさん、私が囮になるんで、ヴォイドさん先にやっちゃいましょう。レナちゃんはフェイントってことで』

「あ、わ、分かりました!!』

『敬語じゃなくていいよ。私も敬語やめるから』

「あ、はい。……あ、うん」


カルボナーラ:マコトくんキョドってる?

スレイマンの星:カワボとイケボとか胸キュンシチュなのに全然ドキドキしないwww


『レナちゃん見つけた!! ヴォイドさんどこに居る!?』

『あ、まだ見つかんない。そんなに離れてるとは思わないけど……』


YOUDEAD!!


『あ、ごめんなさい。めちゃくちゃ遠距離です!! スナイプされて頭抜かれました。……抜かれた!!』

『せめて、レナちゃんだけでも、は、グレネード……!?』


『いえーい、作戦勝ち~!!』

『やっぱりレナちゃんを狙ってるふりして、俺のこと探してたでしょ。レナちゃん、エイムはまだ駄目だけど、グレネードなら関係ないからね』


『えぇ~。そんなに分かりやすかったかな~!?』


ビスケット:よくわかんないけど、プロゲーマー凄くね

ステップステップ:作戦見破られてて笑う


『やっぱり、俺、1人の方がちょうどよく楽しめると思うんだよね。マコトくんはどう思う?』


「あ、いや、えっと、あ、の……」


カルボナーラ:いきなり声掛けられてびっくりしてるwww

豚の餌:動揺しているショタボは必須栄養素だと思う


「1VS3って構図、僕が中学生の時にクラスでハブられてたこと思い出します」


『……えっと?』

『あ、あはは~』

『え、マコトくん虐められてたん?』


 一泊遅れて、自分が失敗したことに気づいた。後悔は遅く、一瞬止まったコメント欄が大量の『w』や『草』というコメントであふれかえる。しかし3人の反応は芳しくない。

 他のチャンネルのコメント欄は見ていないが、私への失望や罵倒が流れているのだろう。


『えっと……。なんか、マコトくんのトラウマ刺激するみたいだし、1VS3はやめておこうか?』

『ああ、いや、えっと、そういう意味じゃなくて、あの……』


『え、別にいいんじゃない? コレ、ゲームだし、1人になるのヴォイドさんだし、別に仲間外れで1人にしてる訳じゃないし。むしろトラウマ払しょくできてお得じゃん? い、いっせき何とか」

『……一石二鳥のこと?』

『そうそれ、らんちゃん天才。カワボで天才とかいいなぁ』


 あっけらかんとしたレナさんが空気を変えてくれる。あっという間にコメントの反応はレナさんのボケやらんさんのカワボから繰り出されるツッコミへと話題転換した。


 まるで私の言葉が無かったかのようだが、今はそれが嬉しく感じる。

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