【コラボ動画】ギャル、プロゲーマーになります!?【ゲーム実況/コーチング企画】

 打ち合わせから2日後。コラボ動画の撮影日が来てしまった。

 あのあと、すぐに動画撮影の日程が決まり、そのままの流れでコラボ配信のスケジュールも決まった。次の金曜日の21時から配信が始まり、翌日18時にレナチャンネルで今回のメイン動画がアップロードされる予定だ。


 そこから30分間隔でヴォイドさんのコーチング動画を、らんさんのチャンネルで練習の様子をノーカットでアップロードする。さらに、金曜日の配信の切り抜きを、土曜の夜、日曜の昼と2回に分けて私のチャンネルで投稿。


 これらは全て、レナチャンネルの裏方、オタクさんが企画・考案してくれたものである。細部はヴォイドさんとらんさんが調整していたが、概ね最初から完成されていた。


『早速、コラボ動画の撮影を始めたいと思います。これ以降、俺は裏方として動画が上手く回るように指示出しをしていきますね。俺の声は動画に入らないので、なるべく気にせず、流れに任せてくれていいです』


『私は慣れてるから出来ると思うけど、らんちゃんとかヴォイドさんとか大丈夫? とくにマコトくんとか、緊張してるっぽいし、頑張ってね!!」


 レナさんに励まされながら、コラボ配信が始まる。


『じゃあ、撮影開始します。レナ、らんさん、マコトさん、ヴォイドさんの順番で挨拶お願いします。あとは打ち合わせの通りに……』


『こんちゃ!! レナチャンネルのレナです。今日はいつもと違って、ゲーム実況をやっていきたいと思います。でも、1人では不安だったので、助っ人を呼んでみました~!!』


『フルーツ大好き、暑いのは苦手!! Vtuberの桃涼らんです。ゲームの腕はそれなりだけど、楽しんでもらえたら嬉しいです!!」


『あ、えと、こんにちわ……? マコトです』


『……どうも、ヴォイドでーす。プロゲーマーの端くれやらせてもらってます。今日は、コーチング企画という初の試みで緊張してまーす。今日もゲームを全力で楽しんでいくのでそのつもりで』

『イエーイ!! コーチング頑張りまーす』


『レナちゃんは教わる側だけどね……。えと、告知とかで知っている人もいると思うけど、改めて今日の企画を説明したいと思います』

『今回は、ゲーム素人のギャルが、現在も活躍するプロゲーマーにマンツーマンで教わると、どこまで強くなれるのかという企画です』


『プ、プロゲーマーのコーチングを受けた後、僕たちと1VS1で戦ってもらいます。チャレンジ1の対戦相手はらんさん。チャレンジ2の対戦相手はマコトが務めさせていただきます。なお、僕は少しランクが高すぎるのでハンデを設けます。ハンデ内容はらんさんとの結果次第で決めようと思います』


『最後に、もし2人とも倒した場合の特別チャレンジとして、俺と戦ってもらいます。ハンデはあるけど、手加減はしません』

『えぇ、優しく教えてね~』

『ごめんね、オタクはゲームで手を抜けない人種だから』


『まぁ手加減されて勝っても嬉しくないし、望むところ!! みたいな?』

『レナちゃんもやる気十分だね。じゃあ、ヴォイドさん、さっそくコーチングお願いします』

『アハハ、サラッとらんさんも教わろうとしてる? あんまり強くなっちゃうとレナさんが大変だと思うから、ほどほどにね』


「あ、アハハ……」

『マコトさん、緊張してますか? もっと絡んじゃって大丈夫ですよ。レナなら多少滑っても上手く処理してくれるんで』


 通話の向こうでオタクさんがフォローを入れてくれる。ありがたいんだけど、私としては渡された台本の通り喋るだけで精一杯です!! アドリブなんてする余裕ないよ……。


 あと、私の話がよく滑っているのを知っている辺り、本当に雑談配信を見に来てくれてるんですね。

 ファンは嬉しいけど、今日ほど見てほしくないと願ったの初めて。


『じゃあ、さっそく練習入っていこうか』

『おけー。頑張る~。らんちゃん、カウントお願いね!!』

『は~い。ギャルは1時間でどこまでゲームが上手くなるのかチャレンジ!! 3、2、1、スタート!!」


『まず、このゲームの移動に慣れてもらいます。レナさんは僕に捕まらないように逃げながら、らんさんとマコトくんを捕まえてもらいます。パンチの出し方はわかるよね?』

『こうでしょ? マコトくんとらんちゃんにパンチ当てればいいの?』


『そうそう。俺から逃げながらね』


『じゃあ、私は、もう逃げまーす』

『マコトさんも逃げ始めていいですよ』


 私のキャラ操作がわずかに遅れたのを見逃さなかったようで、レナさんは楽し気な声を上げながら追いかけてきた。それらしいリアクションが出来ればよかったのだが、具体的に何を言えばいいのかがわからなくなって、無言で逃走を始めた。


『俺はハンデであと10秒経ったら動くからね~』


 私たちが遊んでいるのは、現実で行うサバイバルゲームのフィールドのようなステージ。土嚢や石の壁、木製のついたてなどが進路を邪魔していて、マップを覚えていなければ迷路のようである。


『よっしゃ、俺も行くよ~。マコトくんとらんさんは俺に捕まることはないから、安心して逃げてね~』


 レナさんのキャラクターは、曲がり角のたびに立ち止まって方向転換をするせいで、あっという間にヴォイドさんから殴られてダウンしてしまう。その度に起き上がっては、数秒タイムを貰って逃げ始める。しかし、私やらんさんの背中を追いかけることも出来ずに、5分が経過した。


『操作はだいぶ滑らかになってきたね。じゃあ、次行こうか』

『え、まだ2人のこと捕まえてないけど? それに、私ずっと殴られてたし』

『でも移動方法は覚えたでしょ? 壁を登る動作とか、しゃがみ動作とかも出来るようになってたし、十分十分』


『それに、ちょっと飽きて来ちゃったしね~』

『おけおけ、じゃあ次は何やるの? 銃撃つ?』

『やっぱり、撃ちたい? じゃあ、その練習からやろうか。結局、そっちの方が大切だしね』


 残りの時間はエイムの練習をするようで、あれこれ、銃器の説明やアイテムの説明などを始める。時たま、サービスなのかプロにしかできない芸当を見せてくれるが、実際に喰らってみると驚くことばかりだった。


 YouTubeなどで、そういうテクニックがあるのは知っていたが、自分がされる側になってみると、チートを疑いたくなるような次元の違う操作だ。


 人力チート呼ばわりされるのも納得である。


 それらを見ていたレナは、ただ感嘆の声を漏らすだけだが、頑張って着いてきているようだ。らんさんの方も実演練習で何度か殺されるたびに可愛らしいリアクションを上げている。

 私はと言えば、面白い場面を作り出すチャンスなのに、「あ……」とか「わぁ」とかしか言えない。


 感情が死んでるんか? ほのかの前なら素直に話せるんだけどね。

 内弁慶でスイマセン……。コレ、使い方あってる?

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