【まったり振り返り】コラボ前の打ち合わせと振り返りやります【打ち合わせ/ヤンデレ?】

『じゃあ、オタクくんの綺麗なツッコミが入ったところで、真面目に打ち合わせしますか~?』

『はーい』

『よろしくお願いします』

「よ、よろしくお願いします!!」


 明るい口調でヴォイドさんが打ち合わせを誘導してくれる。プロゲーマーと言っても、ゲーム以外にも気を使うことも多いのだろう。空気の流れを掴むのが上手い。


『今回のコラボは、配信だけじゃなくて、動画も撮りたいなと思ってます。企画内容は、プロゲーマーが初心者に1時間コーチングしたら、どれだけ上手くなるのかっていう企画でどうでしょうか?』


『私が、めっちゃゲームして、らんちゃんとマコトくんに勝てるのかってことでしょ?』

『あわよくば、ヴォイドさんとも勝負して、勝てないまでも善戦してくれれば取れ高になるんだけどな』


『あ、その練習の様子を、私のチャンネルで流してもいいかな?』

『もちろんです。撮影後にデータ送りますね』

『俺のチャンネルでもコーチング動画として出したいかな』

『ぜひ、どうぞ。素材とか、必要なものあれば送りますので、何でも言ってください!!』


『マコトくんのチャンネルはどうするの?』

「あ、ごめんなさい。何も考えて無くて……」


 レナさんからいきなり話を振られて、頭が真っ白になる。

 今さっき話を聞いたばかりなのに、色々チャンネルのことや動画のこととか考えられるの凄いなぁ。

 私も見習わなくてはいけない。


『そうですね……。マコトさんのチャンネルでは、配信の切り抜きをあげるのはどうでしょう? 自分たち3人とは投稿日がズレますが、新規視聴者を引き込むきっかけになると思います」


 配信の切り抜き動画は、何度か投稿したことがある。それなりに効果があるようで、再生回数も軒並み高いし、切り抜きから配信に来てくれる人も何人か居た。コラボ企画の動画を編集するよりは配信切り抜きの方が作りやすいだろう。


「わかりました。それで行きたいと思います」

『じゃあ、全員決まった系? 動画撮るのいつにする?』

『皆さんの都合もあると思うので、スケジュールは追って連絡します。すでに結構話し込んでしまいましたし、今回はコレで解散ということで』


『オタクくん、段取り上手いね? レナさんの裏方作業と掛け持ちでいいから、俺の所にも来てよ。一緒にゲームやりながら打ち合わせとかできれば、気が楽なんだけどなぁ』


『えぇ、引き抜き? ゴメンけど、オタクはダメだよ。めっちゃ頭いいし、スパダリだもん』

『……こう言ってるんで無理っす。正直、ヴォイドさんとゲームやりたいんすけどね』


『アタシのこと世界一のユーチューバーにしてくれるって言ったのに?』

『バカ、今その話はすんな!!』


 2人の軽快なやり取りにらんさんから綺麗な笑い声が漏れる。ヴォイドさんは少し残念そうにしているが、とても楽しそうだ。……私は緊張して渇いた笑いしかできないけど!!


『じゃあ、引き抜きは諦めるけど、今度ゲームやろうよ。あとで、ID教えてね』

『それは是非!! ありがとうございます』


『ハイ、これ以上はオタクが取られそうなんで解散でーす。撮影当日、よろしくね~』

『よろしくお願いしまーす』

『よろしくね。マコトくんも、あんまり緊張しなくていいからね』

「あ、ハイ。だ、大丈夫です……」


 最後にもう一度挨拶をして、全員が通話から抜けた。

 ……なんだか、終わったと思ったらどっと疲れが出てきた。緊張で吐きそうになっていたのを、ずっと堪えていたからなぁ。手汗もすごいし。


 コラボ、上手くいくといいなぁ。

 いや、上手くいくといいなぁ。じゃないんだよ。必ず成功させる。ほのかと約束したし、誘ってくれたのに、がっかりさせたくない。


 それに、コレが上手くいけば……。


 ピロン。という、私のスマホからはあまり鳴らない通知音が鳴る。オタクとレナから今後のスケジュールや配信用のグループを作ったという連絡だ。


「ほのか、コラボ相手、レナチャンネルだってよ。ほのか、好きだよね?」

「レナチャンネルって、TikTokの?」

「そう。今回はYouTubeでゲーム配信だけど」


 コスメの情報や服のブランド等を参考にしていると聞いたことがある。直接話すことはできないにしろ、気になるのではないだろうか。


「コラボって、2人きり?」

「いや、違うよ? Vtuberの人と、プロゲーマーの人も一緒」


「ならよかった。真琴って、レナちゃんみたいな明るい子、好きでしょ? だから不安になっちゃってさ」


 まさしく図星だった。ほのかといいレナと言い、自分とは正反対の明るくて可愛い娘が好きなのだ。憧れというのもあるが、自分とは違うからこそ惹かれるというか……。


 ……というか、そんな好みまで把握されてるんかい!!

 私、どれだけわかりやすいんだよ。


『マコトさん、告知用のバナー作りたいので、チャンネルアイコンの素材いただけませんか?』


 続いて鳴った通知音に、ほのかが目を光らせる。

 無言ではあるが「誰から?」と聞いてきているような視線。オタクからコラボ配信用の連絡だと言って、部屋に戻った。


 一緒に入ってきちゃったよ……。


『レナさん、マコトさん、ヴォイドさん、配信中に表示する立ち絵などありましたら、先に頂いてもいいですか?』


「女の子ばっかり。忙しいんだね~」

「ち、違うってば。大丈夫、ほのかが一番だから」


「アハハ、冗談だよ。どうせ、マコトのことだから、なんて返せばいいか分かんないとか言い出すんでしょ。手伝ってあげようか?」


 ……からかわれた。

 ほのかの場合、ガチで重苦しい嫉妬をしてそうで怖いんだよ。そういう小悪魔みたいなところも好きなんだけどさ。なんか毎回こんなことを言ってる気がする。どんだけ好きなんだよ。


「チャットも会話も難しく考えなくていいんだよ。だって、私と話すときは緊張しないでしょ?」

「そりゃほのかはずっと一緒に居るし、いまさら細かいことを気にするような間柄でもないでしょ」


 彼女が隣に引っ越してきたばかりのころから面倒を見てきている。どっちかって言うと面倒を見てもらっていることの方が多かった気もするけれど……。とにかく、よく知った関係で、何を言われたら怒って、何を言えば喜ぶのかは分かっている。


 それなりに喧嘩もしてきたから、謝り方も知っている。だから、信頼できるし大丈夫なのだ。


「……う、嬉しいけど。そういうこと他に言っちゃダメだよ。真琴はかっこつけだけど、本当にかっこいいんだから。私じゃなかったら惚れてたよ」

「えぇ~? ほのかも惚れてるんじゃないの~?」


「ウザ絡みすんなし!!」


 ほのかは気楽にコミュニケーションをとればいいと言ってくれたが、多分、私はどうやっても出来ない気がする。知らない人は怖いし、信用できない。

 どれだけ仲良くなったつもりでも、どれだけ知ったつもりでも。


「まぁ、そうも言ってられないかぁ。ほのかの為だしね」

「私のため? 何が?」


 弱音ばかり吐いていても何も変わらない。自分に出来ることを精一杯やろう。

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