第13話 美月

「ねぇ、ソウちゃん…若菜がね…」


「え?ちーちゃん、何かあったの?」


「うん…若菜がね、怖い若菜を随分説得してるよ…」


「どう言う事?」


「何かね、もう殺さない…感じ…かな?」


「それって、keepのトークルームを移動しないってこと?」


「そうじゃなくて…まだ、私達を探そうとしているみたいだけど…他の人には取り憑かない…って感じかな?良く判らないけど…」


「それって、若菜が…本当の若菜に戻ったって事?」


「いや、まだふたりだよ…いずれひとりに同化するって…でね、川瀬景子って人を調べられないかって…」


「カワセ…ケイコ…」


「その人がkeepの霊の本体だって…」


千晶と宗介は、自分達なりにkeepの噂やkeepに関係した事件を調べていた…。


もちろん、優しい若菜の協力で、怖い若菜が起こした殺人を含む未解決殺人事件の内容は、優しい若菜が教えてくれたから…。


「川瀬景子だね。また、兄ちゃんに頼んでみるよ…」


宗介が兄ちゃんと呼ぶ男は、母方の従兄弟であり、神奈川県警に勤めていた…。


宗介より随分と年齢は上だが、宗介が幼い頃には良く面倒をみてくれて、宗介は彼に懐いていた…。





上原美月(うえはらみづき)は女性の就職難を何とか乗り越えて、中堅企業ながらも、希望をしていた企画部へ配置され、仕事に打ち込もうと頑張っていた…。


父が亡くなり、身体の弱かった母と美月の二人暮らしである。


美月は高校と大学まで必死でアルバイトをし、自らの学費と僅かだが生活費まで母親に渡せるくらいに働いた…。


ますます病弱になった母親の仕事を辞めさせ、自分の稼ぎで暮らす様に意気込み、職場へ向かう…。



「持ち家があるから、贅沢は出来ないけど頑張って早く昇昇給出来る様にならなくっちゃ…」


念願の企画部へ入って、頑張りプランを作成する…。


しかし、不運な事に上司の部長が、所謂(いわゆる)男性優位主義の男だった…。


女性の能力を評価しない…。


女は雑用だけやれ、女は男の邪魔はするな…。


そんな考えがありありと判る…。


何度、プランを練っても部長が最後に握り潰した…。


課長は部長に服從で言いなりだった…。


課長の名は、石井和浩(いしいかずひろ)…最低な男だった…。


美月は当初、プランの件で、課長の石井に相談したが、企画を確認もせずに却下し、逆に雑務の残業を押し付けられた。


病弱の母を理由に断わると、解雇を口にし美月を脅す…。


仕方なく、残業を受けると、その後も何度も美月に残業をさせ、自分も残り、美月に触れて来るようになった…。


「上原…肩揉んでやるよ」


「いや、結構です!」


「そう言わずに…」


いきなり美月の胸を掴んだ…。


「止めてください!」


美月は石井を突き飛ばす。


「いいのか?お前の代わりなんかいくらでもいるんだぞ!」


石井は怒鳴る。


オフィスには石井と美月だけ…。


「解雇が嫌なら、言うことをきけ!」


美月は諦め、俯いた…。


俯く美月の髪を掴み、顔を上げさせ石井は美月の口に自分のイチモツを押し込んだ…。


「グェ…」


「俺を逝かせてたら、プランを部長へ届けてやる…俺の推薦なら、部長も考えるさ」


美月は初めてのフェラに涙を流しながら、石井をしゃぶった…。


そして、口の中にたっぷりと生臭い物を吐き出され嘔吐した…。


翌日、企画書を課長に渡すと、そのままディスクにしまわれた。


「約束ですよ、部長に見せてくれるんですよね?」

 

「あぁ…夕べのは気持ち良くなかったからダメだな…」


「そんな…」


「まぁ、今日も残業しろ。判ってるよな…

美月…」


石井和浩は爬虫類のような目で薄ら笑い、美月を恫喝した…。


その日から、美月は何度も石井に犯された。


残業のオフィスだけではなく、昼間の応援室でも犯された…。


企画書は部長に届いても、石井の推薦は無く、部長が読まずに全部却下した…。



思い余って、退職を申し出る…。


「辞めるなら、懲戒解雇にしてやるぞ!退職金も手当も出ないぞ!そして、お前の保証人の母親に違約金を請求するからな!お前は俺から逃げられないんだ!」


課長の石井和浩を美月は怨んだ…。


石井和浩を美月は呪った…。


しかし、どうすることも出来ない…。


誰にも相談出来ない…。


せめて噂で聞いた、keepに書き込み、憂さを晴らそうと、スマホを手に持ち、keepのトークルームを開いてみた…。


「石井!石井和浩!お前はクズだ!卑怯者の最低な男だ!」


「石井和浩!お前は死ね!死ね!死ね!」


「腐ったちんぽをお前の口にぶち込んでやろうか?お前を二つ折りにして咥えさせてやろうか?」


「その目だ!その忌々しい目玉をくり抜いて潰してやるよ!」


「耳を引きちぎり、鼻を潰し、舌を引き抜いてやる!」


美月はいくら怨みを書いても気が治まらなかった…。


肩で息をし、次はどんな事を呪ってやろうか…。


すると、画面が暗転し、文字が浮かび上がる…。


カワセ ケイコさんがあなたを招待しました。

覗いてみますか?


はい…いいえ


「来た…本当に来てくれた…」


美月は、はい…をクリックした…。


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