第14話 石井和浩

「岐阜山中の雑木林…死体があります…」


山へ入った猟師の通報で、岐阜県警が遺体を回収した。


持ち物は無かったが、歯型からの照会で、横浜在住の川瀬景子と判明した…。


景子の家族からはすでに行方不明の届けが出ていて、一人暮らしだった景子の持ち物は家族が保管してあった…。


死体遺棄及び殺人事件として、遺体は神奈川県警へ移され、岐阜県警との合同捜査となった…。


犯行現場は横浜市内までは捜査が進んだが、犯人の目星もつかず、捜査は難航し、神奈川県警の単独捜査に移された…。



美月はkeepのトークルームに現れた、異様な女を凝視していた。


薄暗い部屋の中央には手術台が血痕で汚れ置いてある…。


床には生首が転がり、壁には眼球が数個打ち付けられていた…。


その眼球をポカリと空いた自分の眼窩に、ひとつ摘むと押し込んだ…。


顔を見ると、耳まで裂けた赤い口をカパっと広げ、長い舌を垂らす…。


鋭く小さな歯が幾重にも並んで生えていて…瞳は無く、白目に血管が浮き斑模様になった目を見開いた…。


「イシイ…カズヒロ…」


女は石井和浩の名を呟いた…。


すると、画面にまた、文字が浮かんでくる…。



お前は私を覗いたね…私の部屋を覗いたね…だから、お前は連れてくる…私の部屋に連れてくる…逃げられないよお前はね…だけどそれは今日じゃない…今日はお前をkeepするだけ…。


画面は暗くなり、スマホはスリープになった…。


美月は半信半疑だが、石井和浩を殺してくれるのを願って、部屋の灯りを暗くした…。



石井は自宅近所の居酒屋で、のんびり飯と酒を喰らって自宅へ戻った…。


妻は石井に嫌気がさして、子供を連れて実家へ帰り、とうに離婚は成立している。


ローンが残った自宅へ帰っても、石井以外は誰もいない…。


石井はスーツを脱ぎ捨て、敷きっぱなしの布団に寝転がる…。


石井のスマホの画面が光った…。


着信 上原美月


「美月?今夜は家まで呼び出すか…」


ニヤリと下卑て、横たわったまま、美月の着信に出た。


すると、画面の中から、異様な姿の女が抜け出して来た…。


石井は驚き、叫ぶ前に、女は石井の首を掴む…。


首を圧迫され、声が出せない…。


石井は藻掻くが、見開く右目に女は鋭く長い爪の指を差し込んだ…。


そして、グルリと指を回すと石井の目玉をくり抜いた…。


痛みの余り、横を向く石井の耳を摘み、一気に裂き千切る…。


首を、掴んた指先に少し力を加えると、息が詰まり舌を出した…。


女は舌を引っ張り伸ばし、そのまま舌も引き千切る…。


そして、千切った舌を放り投げ、その手で石井の鼻の穴から鋭い爪で石井の脳まで貫いた…。


ぽっかり空いた口のまま、鼻から脳まで潰されて、石井はそのまま、意識を無くす…。


女は石井の頭を掴み、腹を踏んづけ手前に引いた…背骨がボキリと折れ曲ると、空いた石井の口の中へ、縮こまった石井の男根を押し込み咥えさせると、石井和浩はそこで絶命した…。



女は裂けた口を開き、歪んだ笑いを浮かべるとスマホの画面に戻って行った…。



石井のスマホから、keepの女が抜け出した時、美月のスマホも怪しく光り、石井を殺す映像がkeepの女の目線で、美月のスマホ画面に映し出されていた…。


美月はkeepの女と同じ目線でずっと石井和浩が死んで行く姿を見ていた…。


目をそむけることは出来なかった…。


憎い石井和浩を美月自身が殺して行くような錯覚に陥る…。


石井和浩が自分の性器を咥えた時、美月の心もザクリと切れて、頭の中から全てが消えた…。


そして翌日、美月は美月のスマホの中にいた…。


美月はkeepのトークルームの中で、何も考えられずに座っていた…。


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