第4話 みなみ
「ねぇねぇ、知ってる?keepの噂…」
「あれ?あれは噂じゃなくてホントに人が殺されるんだってよー」
「マジ?怖い怖い」
「何言ってんの?あんなのただの噂話に決まってるよ。あたし、keepはしょっちゅう使うよー、メモ代わりにちょー便利だし…」
「だって、なんか死んだ女子高生が開いてるkeepのトークルームを見つけると勝手に入って来て、呪われるって…」
「え?あたしが聞いたのは、大人の女の霊だって言ってたよ?」
「噂よ!ラインでそんなのあるはずないじゃん?」
女子高生、女子中学生の間では、かなり噂が広まった…。
山村みなみはいつもの4人とカラオケに行き、帰宅した。
本当はあの4人とは遊びたくない。
しかし、つき合わないとまた、イジメを受ける。
もうイジメは嫌だ。
今は冬花がイジメを受けている。
このまま、ずっと冬花だけがイジメられていればいいと思っている…。
ラインを開く。
クラスメートのラインへ返事を返す。
すぐに返事をしなければまたイジメられるから…。
だから、みなみはスマホを手放すことが出来なかった。
ラインのトーク画面のまま、みなみはスマホから、目を離す。
すると、また、ラインの着信が来る。
慌ててスマホを見ると、keepのトーク画面だった…。
keepのトーク画面に文字が浮かぶ。
サワダ トウカさんがあなたを招待しました。
覗いてみますか?
はい…いいえ
「冬花?」
みなみは、はい…をクリックした…。
画面が暗転し、薄暗い部屋の中が見える…。
真ん中には手術台のようなものがあり、床には生首が転がっていた…。
「何?何これ?」
すると、画面の端しより髪を乱した女が現れる…。
女は瞳が無く、白目部分が赤く血走りった斑模様…。
耳まで口が裂けたと思えば、スマホの中より声が聞こえてきた…。
「みな…み…み…なみ…」
名前を呼ばれた…。
すると、いきなり画面より女の上半身が現れ、裂けた口を更に大きく開き、みなみの頭からすっぽり首まで咥え込んだ…。
咥えられる瞬間にみなみは女の口の中が見えた…。
魚のような小さく鋭い歯が幾重にも並んでいた…。
そして、暗闇の中、女は口を閉じ、みなみの首を齧り取った…。
女はまた、裂けた口を開き、みなみの頭部を吐き出すと、みなみの首は、床に転がり床に立った…。
まるでそれはみなみの首から上が床に生えているように見え、みなみは虚ろな目で女を見ていた…。
女は画面に消え、みなみのスマホは電源が落ち、画面が黒く変わった…。
翌日、みなみは猟奇殺人事件として、捜査の為、世間にはまだ伏せられていた。
ただ、学校へは、殺人事件だと報告されたが、警察の意向をふまえ、学校側は生徒には、事故死と伝えていた。
みなみが死んだと聞き、冬花は少しだけ気分が晴れた気がした。
しかし、あの4人も許さない…。
夕べのラインのkeepでの、おぞましい女の事が頭によぎったが、未だ、あれは4人の誰かの嫌がらせだと思いさほど気にしなかった…。
クラスメートから無視をされていた冬花はkeepの噂など知りもしなかったのだから…。
家に着き、シャワーを浴び、着替えて自部屋のベッドへ横たわる。
毎日イジメにより、どこかしら、身体の部分が汚されるからだ。
ベッドの上で、今日はkeepへあの4人を呪ってやろうと冬花はスマホを開いた…。
アユミ、死ね!
マサヨ、死ね!
イクコ、死ね!
オトハ、死ね!
皆…死ね!!
アユミ、お前は私に水をかけた。だから、溺れて死んでしまえ!
マサヨ、お前は私の服を脱がせ、窓から捨てた。だから、窓から飛び降りて死んでしまえ!
イクコ、お前は私を殴り蹴った。だから、お前は車に跳ねられ死んでしまえ!
オトハ、お前は4人のボスだから、身体をバラバラに裂かれて死んでしまえ!!
4人へ恨み辛み、呪いの言葉を繰り返しkeepに書き込んだ…。
もう、すっかり日は落ちて、辺りは暗くなっていた。
冬花は起き上がり、スマホをベッドに放り投げ、キッチンへ行き、作り置きのアイスティーを飲む。
共働きの両親はまだ帰って来ない。
自部屋へ戻り、またkeepに書き込もうとベッドの上のスマホを持ち上げると、スマホが震え、着信音がした。
着信、カワセケイコ
「え?これって昨日のkeepの人?」
冬花は電話に出た…。
「もしもし…」
「ガガ…ガガガガ…」
割れるような雑音しか聞こえない…。
「もしもし…もしもし…冬花ですけど…」
壁に掛けた鏡の中に、昨日の夜の女の姿が見えた…。
冬花は慌てて振り返る…。
両手をダラリと下ろして、俯く昨日のkeepの中の女が立っていた…。
冬花が振り向くと女は顔を上げる…。
乱れた髪の隙間から、瞳の無い白目だけの女が立っていた…。
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