@unagi277

目が覚めた。

ここが何処か全くわからない、わかることはここが洞窟のように冷え、墨のような真黒の世界だと言う事だけ。

男すぐにこれは夢だと思ったが男はその己の意見に賛成できなかった、なぜならある違和感を感じたからだ、それは現実感のある気味の悪さだった。

そして、男がここが夢か現実か思案していると遠くの方で音が聞こえた。

それはヒタヒタと何かが近づいてくる音だった、男は少しの好奇心で暗闇で己の手さえ見えない中でその音の正体をこの目で見ようと思い待とうとしたが、男は数秒ののち己の選択が人生最大の間違いと思うほど後悔した。

なぜなら先の得体の知れぬものが初期の位置より我が身に近づいたであろう頃、男の脳内はそこ知れぬ深淵の如き恐怖に支配されたからだ。

その恐怖は言葉や文字を使い他者に伝えることが到底でき得ぬほどのもだった。だが男は大声を出し泣くことも、恐怖のあまり発狂することもしなかった。そしてその得体の知れぬものが己の鼻先にほどに近づいた時、男は目が覚め、己の床の上にいた。

そして即座に今までの自分が感じたことは瞼の上の出来事と悟った。

それから男は起き上がり台所へ向かい、水を一杯飲み、とうの昔に枯れ果てた古い井戸に己の身を投じた。

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