失敗は成功の母か
A:H3ロケットの発射が失敗したね。
B:あれは失敗ではありません。中止です!
A:今回は中止というには無理があるだろ!
B:打ち上げの途中でミッションを達成する見込みがないから中止!爆破!爆破は成功しました。総じて成功です!みたいな感じか。
A:言葉遊びがすぎるだろ!
B:一回目の中止、失敗議論の時も言葉遊びがすぎたよな。
A:それはもういいだろ!一回目は引き返すことが出来たから中止ってことでよ。今度は爆破して何も残らなかったんだから、文字通り失敗だよ。
B:中止は大失敗の母だったな。
A:辛辣すぎるだろ!
B:でも驚いたよな。最初はちゃんと打ちあがったように見えたから成功したようにみえたのにな。
A:二段目のエンジンがうまく点火しなかったんだよね。
B:ロケットも一発出し切って賢者タイムになってたのかもね。
A:ロケットの賢者タイムってなんだよ!
B:一発目の勢いはすごかったよな。天にも昇るとはあのことだよな。
A:ロケットの話をしているってことでいいんだよな!
B:モロチン。
A:そこはもちろんって言ってくれよ!言葉遊びがすぎるよ!
B:まぁ失敗でも大失敗でもいいんだけどさ。なぜH3型ロケットに最新の光学衛星を積んだのか謎だよな。
A:だいち3号のことだね。
B:まぁ、ダイチ君は大したことはできなかったはずだけどな、何せだいち君だし。
A:どれだけだいち君に対して嫌な思い出があるんだよ!全国のだいち君に謝れよ。
B:だいち!俺はお前を許さない!
A:だから誰なんだよ!
B:それで光学衛星だいち君は何ができるやつだったのかね?
A:知らずにガタガタ言っていたのかよ!だいち3号は地殻変動の観測も行える光学衛星ということ注目されていたんだよ。たとえば 地震の前後の地殻変動をだいち3号を使って観測することによって地震の予知ができるようになるかもしれないなんて言われていたみたいだね。
B:すごいですねぇー。お高いんだしょ?
A:テレビショッピングかよ!だいち3号には約500億円が投じられたと言われているな。
B:500億円!こんなに高性能で500億円は安いですねぇ。
A:だからなんでテレビショッピングのノリなんだよ!
B:今回はこちらのH3型ロケットもつけます!
A:そのH3型ロケットのせいでだいち3号は破壊されたんだけどな!でも、あの一瞬で500億円が鉄くずになったと思うとすごい話だよな。
B:結局海に落ちたんだろ?ちゃんと産業廃棄物処理の手続きはしたのかな?不法投棄はいけないよな!
A:そんなレベルの話じゃないだろ!
B:そもそもなんでH3型ロケットに乗せたんだろうな。H3型ロケットって試作機だったんだろ?
A:やっぱりコストの面で有利だからじゃないかな。試作機に乗せて打ち上げることができれば安く済むだろうし。
B:節約しすぎて身を滅ぼすパターンか。
A:その通りだから笑えないよ!
B:でもたった1回失敗しただけだし大丈夫でしょ。失敗は成功の母って言うしな。
A:次に打ち上げるときは、今回ダメだったところを改善して成功してほしいよね。でも、肝心要のロケットが破壊されてしまったから、失敗の原因を探るのは難しそうだよね。
B:その点は大丈夫。
A:そうなの?
B:どこかの国みたいに失敗を気にせずドンドン打てばいいんだよ!
A:いいわけないだろ!それはミサイルだろ!ロケットとミサイルを一緒にするなよ!
B:じゃあお前はロケットとミサイルの違いが分かるのかよ。
A:ミサイルは所定の場所へ弾頭を落とすことが目的として打ち上げるものだろ。ロケットは重力を振り切って地球周回軌道まで打ち上げて、地球の周りを周回させるものって感じかな。
B:そう考えると今回のロケットは地球へ落ちてきたからロケットとしては失敗だけど、ミサイルとしては成功だな。
A:言葉遊びがすぎるよ!いい加減にしろ!
2023年3月7日、種子島宇宙センターからH3型ロケットは光学衛星だいち3号を搭載し発射された。一時は打ち上げ成功かと思われたが、第2エンジンが点火せず、予定の軌道まで飛行できないと判断。指令破壊信号を送信し、ロケットを破壊、打ち上げは失敗となった。当該のH3型ロケットは2023年2月17日に発射する際に、第1エンジンに異常が発生したことから打ち上げを中止した。この時の記者会見で、一部の記者から失敗ではないかと問われ、中止なのか失敗なのかで一時メディアを賑わせた。結果として打ち上げは失敗してしまったが、この失敗が次につながることを祈るばかりである。
時事の種 双葉葵 @Kitazawa_Aoi
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