第12話 「落とし前」という名の戦争の終結

組織犯罪対策課、別名マルボウによる蛟龍会本部のガサ入れは、事前逃亡した会長とその家族の逮捕に至らないものの、幹部の検挙及び重要証拠の押収でかなりの成果を上げた。


後日、高利貸付金の証文の一部が、持ち出された事が判明するが、無かったものとして処理される事となった。




日本海海上を大陸に向け巡行する、200ft級超豪華メガヨットが日本領海外に差し掛かろうとした時、一機の黒塗りのヘリコプターの強襲を受けた。


ヘリコプターから発射されたヘルファイアⅡはメガヨットを航行不能とした後、特殊部隊の強行突入により占拠され、蛟龍会会長とその家族、乗員は海上保安庁に引き渡された。


捕獲の際、第一から第三婦人達の青竜偃月刀、蛇矛、青紅剣による武装抵抗があったが、伊勢、日向、扶桑によりなんなく鎮圧される。

なお武具は不思議な事に、自ら意志を持ったかのように海に没したと報告された。


9月に入り、国会で少年法改正が異例のスピード可決される。

改正により、12歳以上からの実刑判決が可能となった。


10月から、高校生男子4人及び中学生男子15名による中学生女児への集団暴行事件の刑事裁判が開始される。

結果、高校生男子の実刑判決懲役10年及に中学生男子15名、保護処分(保護観察5名、児童養護施設送致8名,少年院送致3名)の判決が下される。


別件で、同中学生男子母親達の婦人警官、中学生女児への暴行で10名が執行猶予付き懲役刑及び、蛟龍会の組織売春への加担で5名の母親が実刑判決を受ける。

なお、住所不明の男性老人については一切触れられなかった。


その後、民事裁判で被害者女児ひとりに付き、300万円の賠償金支払いの判決が下された。


桔梗の健司への暴行について、日常的な性的虐待と正当防衛が認

められ桔梗は無罪、健司は懲役10年の実刑判決がされた。




「よお、新入り。お前子供をレイプしたんだってな。」

健司は収監された共同室の屈強な5名に取り囲まれた。


「俺達にはな、それは可愛い可愛い娘が出所を待ってくれてるんだよ。まだ生まれたばかりだけどな。」

「オレの所は2歳だ」「うちは1歳だ」「オレの娘は3歳だ」

「俺んとこは幼稚園入園した」

「お前の刑期は10年だってな。俺ら最低でも15年は出られねえんだよ。」

「レイプ野郎は再犯を繰り返すんだってな。」

「俺らの娘が、お前に犯されるのを黙って見過ごすなんて無理だ。」

男達が健司を押さえつけ、パンツを脱がすと口に押し込んだ。


「だからよ、お前が女に興味が無くなるように、矯正してやるよ。

まずはレイプされた娘の痛みをお前に分からせる。

その後、竿と玉を切り取って、穴を開けてやる。

女になれば、女をレイプしようと思わなくなるよな。」

そう言うと、健司の尻に巨大な一物をねじり込んだ。




依然、蛟龍会会長の裁判は継続中だが、子供達の安全が確保されたとの判断で、入間基地から解放されたのは11月になってからであった。


おおよそ2ケ月の間、入間基地で過ごした子供たちの体と精神は健康を取り戻し、基地の隊員とも打ち解け、食事を共にし格闘技の練習にも参加していた。


「そうよ萌葱。突きに対してそうやって躱す。」

女性レンジャー隊員が木のナイフを使い、萌葱に体捌きの練習を行っていた。


「貴女、本当に筋がいいわね。自衛隊に入らない?

すぐにレンジャーになれるわよ。」

素早く突き出されたナイフを持つ腕を払うと、二の腕を抱え込み足を払う。

そのまま体重をかけて押し倒し、関節を決めた。


「参ったー!ギブギブ!」

地面を三回叩くの確認してから解放した。


「曹長、訓練ありがとうございました!」

「萌葱、入隊のこと真剣に考えてね。待ってるよ!」

ペコリと挨拶をして病院に駆けて行く萌葱に手を振って叫んだ。


「本当にあれで中学生かね、先が楽しみな連中だ。」

「金的は躊躇無しで狙ってくるし、全く油断できん。」

他のレンジャー隊員の評価も概ね高かった。


「ねえ、あんた達、やたらと蒼の相手したがるけどなんで?」

「えっ?それは、あーなんだ、あれだ、うん。」

「なによ、歯切れが悪いわね。」

「曹長、蒼の戦闘スタイルのせいです。」

同僚の新人女性レンジャーが割って入る。


「何?戦闘スタイル?」

「はい、その、はいてません!」

「何が?」

「パンツです!蒼はノーパンで訓練を受けております!」

「はっ?!」

曹長は若い男子レンジャーを見る。

皆一斉に目を逸らす。

曹長のこめかみに青筋が浮いた。


「お前ら全員、場内駆け足30周!」

「レンジャー!」

身に覚えのある男子は全員走り出した。


子供たちは病院に戻ると、午後の通信教育を受け、夕食の後は組手を行う。

夜花子は最近、三節棍を使い始めた。


「商品にこれ以上傷が付くと価値が下がる。」

夜花子の理由を子供たちにはさっぱり理解できなかった。


桔梗はレンジャー隊員に貰った、ナックル付きの皮手袋を愛用している。


「いっぱい殴っても、手が痛くならないの!」

単純明快な理由に皆が納得した。


そして、蒼のノーパンである。

皆が反対したが、男に対して高い有効性がある事を強調し、

「見られても減るものではないし。」

で、今後このスタイルを極めると宣言した。


萌葱はナイフの捌き方を。

珊瑚は寝技、関節技を学習している。

茜は小さな体を生かし、素早い動きに絡ませた急所狙いを訓練した。

子供たちはこの2ケ月で、更に大きく成長したのだった。




「夜花子見て!」

帰宅早々に母親が借金の証文を持って飛び付いてきた。


「あなたはもう自由なのよ!良かったわね!」

他人事のような言い方に少しカチンときたが、取り上げた証文を確認してホッと息を漏らした。


「今日は外に食事に行きましょう!何でも好きなもの食べていいのよ!」

賠償金が振り込まれたなと感づくと、通帳を見せるように低い声でドスを効かせて要求する。

母親は娘の迫力に気圧され通帳を渋々見せる。

振り込まれた300万円が既に100万円に減っているの見て、更に詰め寄り、使い道をしゃべらせた。


「借金も無くなったし、すごく気持ちが楽になってね。

その、久しぶりに拓くんのお店に行ったの。

そしたら、凄く優しくしてくれて、嬉しくなって売上に貢献したの。

あとね、この間の事件の事お話したらね、一緒に遊びにおいでよってお誘いされたのよ。

あなたも行くわよね!」

(こいつはダメだ。もっと賢いかと思っていたけど、ただの雌猿だ。)

夜花子は決心すると、三節棍を手にして母親の喉元に押し付けた。


「今後、わっちがこの家を管理する。お前もだ雌猿。」

「あなた!母親に向かって雌猿ですって!」

平手打ちをしてきた母親の手を掴み、三節棍でみぞおちを突く。

ゴエッとえずいて跪いた母親を足蹴にすると、顔に足を乗せる。


「これからお前の主人が誰かということを教え込む。

わっちに逆らう事を考えられなくなる迄調教する。」

三節棍を1本にまとめると、子宮辺りに振り落とす。

足の裏でかき消された絶叫の振動に心地よさを感じ、何度もを振り下ろすうちに、もう片方の足が生ぬるい液体に浸される。

母親は白目を剥き、体を痙攣させ失神した。




再び中学生としての生活が始まる。

彼女らの学校内での環境が大きく変化した。


彼女達は専用の教室「Z組」へ隔離され、通信機材を通して授業を受ける。

他の生徒はおろか教師さえも隔離教室へと近づかない。

彼女らは広々とした教室でこれ幸いと武術の練習に励んだ。


ネットを通じて、多種多様の武術に触れる。

時にビデオチャットを通じて、武道家と交流を行い指導を受けた。


冬休みに入っても彼女達はZ組に入り浸る日が続いた。


「キラリーン!」

珊瑚のスマホが着信音を告げると、練習を中断して教室の外へ走っていく。


「蒼、珊瑚の様子がおかしいと思わん?」

「スマホ中毒は元々だけど、着信音が鳴るたび練習を中断してトイレに篭るよね。」

茜と組手をしている蒼の動きが止まる。

珊瑚の相手をしていた萌葱が近寄ってくる。

3人の動きが気になる、夜花子と桔梗も集まってきた。


「実はさ、みんなに言ってなかったけど、珊瑚パパ活をしてたんだ。」

「! 夜花子!それいつの話?!」

茜が思わず夜花子に詰め寄った。


「中2の夏休みから春休み位かな。」

「それであいつ付き合い悪かったのか。」

蒼の口がへの字になり、はあと息を漏らした。


「で、まだパパ活を続けてるの?」

「もう別れたって聞いたけど、あの様子だとまた始めたのかな。」

萌葱の雰囲気がピリピリとし始めた。


「みんな、珊瑚ちゃんのパパ活辞めさせよう!珊瑚ちゃん補導されるのあたちイヤだよ!」

桔梗の一言でみんなに決意が固まった。


「珊瑚!スマホ見せな!」

戻ってきた珊瑚を全員で囲むと萌葱が一喝した。


「な、なんでよ、イヤだよ!プライバシー侵害!

親しき仲にも礼儀あり!」

「あんた、パパ活してるでしょう?!」

茜がズバッと切り込むと、珊瑚は目を丸くして冷や汗をかき始める。


「…してないよ。」

「私の目を見てもう一度行ってごらん。」

夜花子が頬を掴み、顔を近づけるが目を合わそうとしない。


「あんたが中2の時、パパ活してたの夜花子に聞いた。

もう過ぎた事だし、とやかく言わない。

でも、また始めたとなれば話は別。

あたし達は全力でヤメさせるよ、友達だからね。」

「そうだよ!珊瑚ちゃん!あたちたち大親友だよね。」

蒼がスマホを持った手を握り、桔梗が抱き着いた。


「わかったよ、みんなゴメン。」

珊瑚はスマホのホーム画面をみんなに見せると、マッチングアプリを削除してみせた。かのように思わせた。

実際はアイコンを削除しただけだった。


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珊瑚の貞操観念は既に半壊していた。

パパを探す為に始めた出会いアプリであったが、探す事を諦めると複数のパパと似た雰囲気の男とやり取りを始めた。


写真は母親のものなので、実際出会うと条例を恐れて逃げ出す男ばかりであったが、中には喜んで付き合いをしたがる男もいた。


一度身についてしまった贅沢や派手な遊びを捨てるには、珊瑚は若すぎた。

週末の夜に遊びに出かけ、翌日の早朝に帰宅する。

決して親友達に気取られないように慎重に行動した。


男達も珊瑚が未成年である事を承知の上で、珊瑚の条件に従う。

複数の男達と、毎週末に週替わりでデートを続ける。

珊瑚は予定調整に四苦八苦していた。


「ばれなきゃ大丈夫。」

「私が好きなのはお金。」

「アナルは排泄機構。男のオナニーに使わせているだけ。」

そう思ってパパ活を続けていたが、実際に処女喪失の危ない時は何度もあり、その都度武術で解決しては、大金を巻き上げていた。

パパ活が、自分の貯金通帳の金額を増やすことが、目的になっていた。


あるパパに投資の話を聞かされ時、こんな事をしなくてもお金を稼げるとわかった時、唐突に冷めた。

今迄貯めたお金を元に投資で稼ぐ事を覚え、パパから得た知識や情報で着実に通帳の金額を増やしていた。


そして、高校の入学式の日、みんなの前で全てのパパのアカウントとアプリを本当に削除した。


珊瑚はみんなの中でいち早く、大人の女に変貌した。

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